今月の特集 市販のレトルト介護食をじょうずに利用!
第1回 広がる、レトルト介護食の世界
噛む・飲み込むが難しくなると…
たとえば、おとしよりが、食べ物によっては飲み込みづらそうにしていたり、固いものや大きいものが食べづらそうにしていたりすることはありませんか?
歳を取るにつれ、大きい食べ物を噛んだり、サラサラの飲み物を飲み込んだりが難しくなるのは、ごくふつうの出来事です。
ですが、噛んだり飲み込んだりする力(摂食・嚥下機能といいます)がさらに低下すると、食事をすること自体が苦痛になるため、だんだん食べる量が減ってしまいます。最悪の場合、低栄養状態(からだを維持するのに必要な栄養が足りてない状態)を招きます。低栄養状態になると褥瘡ができやすくなったり、からだの抵抗力が落ちて思わぬ疾病を引き起こします。
また、誤嚥(「家庭でできる!お口のケア」をご参照ください)が増えることから、誤嚥性肺炎の危険性も高まります。誤嚥性肺炎は、からだの抵抗力が落ちたおとしよりには、とても怖い病気です。
それを防ぐためにも、「口腔ケア」と「食べること」双方のアプローチがとても大切だと言えます。
今回の特集では、「食べること」を心地よく続けてもらうための一つの手段として、「レトルト介護食」を紹介します。
おとしよりはもちろん、介護するみなさんにとっても、日々の介護が少し楽になる提案です。
レトルト介護食の特徴
介護食と言えば、おとしよりの摂食・嚥下機能に合わせて食材を軟らかく煮たり蒸したり、細かく刻んだりと、ひと手間かかるのが常識でした。しかし、レトルト介護食の登場によって、一般のご家庭でも手軽に介護食の一品を追加できるようになりました。
レトルト介護食の大きな特徴は以下の三つです。
レトルト介護食の大きな特徴は以下の三つです。
実は、保存料フリーの保存食
レトルト介護食は、文字どおり介護食をレトルトで殺菌調理・保存したものです。レトルトとは殺菌に使用する高圧釜の総称で、新鮮な食材を袋に詰め、熱で密封し、高圧・高温で殺菌調理します。簡単に言えば圧力鍋での調理の原理と同じです。
また、空気や光、水分などを遮断する包装なので、料理の品質が長く保たれます。そのため、保存料などを加えていないのがレトルト介護食の特徴の一つです。
また、空気や光、水分などを遮断する包装なので、料理の品質が長く保たれます。そのため、保存料などを加えていないのがレトルト介護食の特徴の一つです。
衛生面の優等生
ミキサー食やきざみ食などを作る場合は、時期によっては衛生的に不安なこともあります。レトルト介護食はその点、密封されたうえで柔らかく調理されているため、雑菌などに触れる機会が少なく済みます。衛生的に優れた食品です。
摂食・嚥下状態に合わせて選べる
ご家庭では、軟らかく煮たり小さく切ったりするなど、試行錯誤してつくる介護食。おとしよりの状態に合った食品形態に合わせるのは、ほんとうに難しいことです。
レトルト介護食は、日本介護食品協議会がつくっている「ユニバーサルデザインフード」(以下、「UDF」)の区分に準拠してつくられているため、どれがどのような方のための食品かが、ひと目でわかります。
【ユニバーサルデザインフード(UDF)】
レトルト介護食は、日本介護食品協議会がつくっている「ユニバーサルデザインフード」(以下、「UDF」)の区分に準拠してつくられているため、どれがどのような方のための食品かが、ひと目でわかります。
【ユニバーサルデザインフード(UDF)】
出典:日本介護食品協議会
このUDFでは、食品形態の目安を以下の4つの区分に分けています。
★区分1:容易にかめる
固いものや大きいものはやや食べづらいが、ふつうに飲み込める方向け。
★区分2:歯ぐきでつぶせる
固いものや大きいものは食べづらく、ものによっては飲み込みづらいことがある方向け。
★区分3:舌でつぶせる
細かくまたは柔らかければ食べられるが、水やお茶が飲みづらいことがある方向け。
★区分4:かまなくてよい
固形物は小さくても食べづらく、水やお茶が飲みづらい方向け。
おとしよりがどの区分に当てはまるかをチェックしたい場合は、日本介護食品協議会の「ユニバーサルデザインフード区分の目安」を参考にしてみてください。
レトルト介護食の選び方
レトルト介護食は、メーカーによっても力を入れている区分やラインナップが違います。商品の詳細については、次回以降の「わが社のイチ押し! 介護食」をご覧ください。
ここでは、レトルト介護食を買うときのポイントを紹介します。
ここでは、レトルト介護食を買うときのポイントを紹介します。
試しに介護者のあなたが食べてみる
イメージ的にあまりおいしそうでない、と思う方も多いと思います。実際、かつてはとろみ剤一つとっても、デンプン臭さがあったりして、敬遠されがちでした。ですが、多くの企業努力もあり、見た目も味もかなり追究されています。
まずは、試しに介護者のあなたが食べてみてください。おとしよりの状態に合うか、味付けは好みに近いかなど、UDFだけでなく、あなたの五感を駆使して選んでください。
まずは、試しに介護者のあなたが食べてみてください。おとしよりの状態に合うか、味付けは好みに近いかなど、UDFだけでなく、あなたの五感を駆使して選んでください。
ふだんの食事に何が欠けているかを考える
たとえば、固いものを残すことが多くなったおとしよりは、食物繊維が不足している可能性もあります。基本的に日常生活のなかでは、高カロリー食をめざすというよりはたんぱく質や鉄分、ビタミン類や食物繊維など、不足しがちな栄養素を補うことが大切です。市販のレトルト介護食には、こうした栄養素が強化されているものもありますので、普段のメニューと照らし合わせて何が欠けているかを考えて選んでみましょう。
手軽に使える&アレンジ可能が決め手
手軽さが信条のレトルト介護食。手間がかかったら意味がありません。しかし、いつもそのまま電子レンジでチン!だけでは正直、味気ないものです。そこで、短時間でスピードアレンジできるかどうかも、購入の決め手になります。
広がる、レトルト介護食の世界
次週以降、レトルト介護食の大手メーカーの3社(キユーピー株式会社、ホリカフーズ株式会社、和光堂株式会社(五十音順))の方々にお話を伺い、それぞれイチ押し介護食を紹介します。どこで買えるか、どう利用したらいいか、どんなアレンジの仕方があるかなど、すぐに使える情報満載でお届けします。
12月最後の週では、レトルト介護食を使ったレシピも掲載しますので、お楽しみに!
12月最後の週では、レトルト介護食を使ったレシピも掲載しますので、お楽しみに!
第2回 わが社のイチ押し!介護食(1) キユーピー株式会社