今月の特集 「がんばらない介護」でゆとりある生活を
第1回 介護者のかかえる現状
介護は誰にとっても身近な問題となってきました。多くの人が日々家族の介護にあたっているのではないでしょうか。長期的・継続的なかかわりが求められる介護では、介護者自身が心身とも健康で、ゆとりをもつことが大切です。強いストレスがあると、虐待や殺人といった悲しい結末を引き起こしかねません。
今月の特集では、介護者の健康を守るためにさまざまな提案を行っている「がんばらない介護生活を考える会」にご協力いただき、どうすれば介護を受ける方にも自分にもやさしい介護ができるのかを考えていきます。
介護者のかかえる現状
「がんばらない介護生活を考える会」では、2002年、2006年の2回にわたって、介護者の現状を把握するため、「在宅介護に関する意識と実態調査」を実施しています。2006年の調査結果の一部をご紹介します。はたして何が見えてくるでしょうか。
表1からわかるように、在宅介護者は「とても負担」「少し負担」を合わせると、7割以上の人が介護に対して負担を感じています。にもかかわらず、表2のように、「自分ががんばらなければ」と感じている人もやはり7割以上にのぼります(「よくある」28%、「時々ある」44%)。その結果、半数以上の人が体に負担を感じ(表3)、約7割が心の健康状態も悪化しています(表4)。
つまり多くの人が、心身の健康が悪化しながらも、強い使命感をもって「がんばる」介護を続けているのです。はたしてこれは介護者にとって好ましい状態といえるのでしょうか。
この現状について、「がんばらない介護生活を考える会」の委員で、ご自身も30年以上にわたって、義父・父・母と3人の介護を続けている、品川介護福祉専門学校の別府明子先生にお話を伺いました。
――多くの人が介護への負担を感じています。最も大きな原因は何でしょうか?
別府先生 調査結果を見てわかるように、体よりも心の負担が大きいのです。楽しく介護ができていれば、決してこれほど負担を感じることはないでしょう。しかし、なかなか楽しく介護するのは難しいのが現実です。これは介護を受ける方の性格や、周囲に協力者がいるかどうか等によっても左右されます。
また、自分が責任をもって介護すると決めたときから、強い責任感が生まれます。この責任感が大きいんですね。介護は「いやになったから」と簡単にやめられるものではありません。
――家族や親戚などからの協力があれば、負担は軽くなるのではないでしょうか?
別府先生 「ありがとう」「いつも苦労をかけているね」といったねぎらいの言葉をかけてもらうだけで、気持ちは全然違ってきます。もちろん介護者は感謝されようと思って介護しているわけではありませんが、そうした言葉の力は非常に大きいものです。
しかし、ねぎらったり介護を手伝うどころか、非難だけする家族・親戚すらいるのも現実。一緒に住んでいないと、その苦労はなかなか理解できないんですね。一緒に住んでいる配偶者(夫)がいても、決して協力しないわけではありませんが、「手伝ってあげている」という意識の男性が多いのです。仕事をしていれば自分は役割を果たしていると考えているのでしょうね。
いずれにしても、介護している人とそうでない人では感じ方に大きな温度差があるのです。それを埋めるのは難しいですね。
――先生ご自身の介護生活を振り返って、一番つらかったことは何ですか?
別府先生 子育てと時期が重なったことがあり、子どものために十分な時間を費やせなかったことです。これはいまだに罪悪感として残っています。大切にする優先順位を間違えたのではないかと。「いいお嫁さんにならなければ」という意識が強かったんですね。
その当時は「できることはすべてやるべきと考えていた」という別府先生。しかし、徐々にそれはよくないと考えるようになったと言います。
「自分や子どもたちを犠牲にしたという気持ちばかりがずっと残ってしまいますから」
では、どのように“がんばらない介護”を実践していけばよいのでしょうか?
次回、あなたの健康状態をチェックするところから始めてみましょう。
つまり多くの人が、心身の健康が悪化しながらも、強い使命感をもって「がんばる」介護を続けているのです。はたしてこれは介護者にとって好ましい状態といえるのでしょうか。
この現状について、「がんばらない介護生活を考える会」の委員で、ご自身も30年以上にわたって、義父・父・母と3人の介護を続けている、品川介護福祉専門学校の別府明子先生にお話を伺いました。
――多くの人が介護への負担を感じています。最も大きな原因は何でしょうか?
別府先生 調査結果を見てわかるように、体よりも心の負担が大きいのです。楽しく介護ができていれば、決してこれほど負担を感じることはないでしょう。しかし、なかなか楽しく介護するのは難しいのが現実です。これは介護を受ける方の性格や、周囲に協力者がいるかどうか等によっても左右されます。
また、自分が責任をもって介護すると決めたときから、強い責任感が生まれます。この責任感が大きいんですね。介護は「いやになったから」と簡単にやめられるものではありません。
――家族や親戚などからの協力があれば、負担は軽くなるのではないでしょうか?
別府先生 「ありがとう」「いつも苦労をかけているね」といったねぎらいの言葉をかけてもらうだけで、気持ちは全然違ってきます。もちろん介護者は感謝されようと思って介護しているわけではありませんが、そうした言葉の力は非常に大きいものです。
しかし、ねぎらったり介護を手伝うどころか、非難だけする家族・親戚すらいるのも現実。一緒に住んでいないと、その苦労はなかなか理解できないんですね。一緒に住んでいる配偶者(夫)がいても、決して協力しないわけではありませんが、「手伝ってあげている」という意識の男性が多いのです。仕事をしていれば自分は役割を果たしていると考えているのでしょうね。
いずれにしても、介護している人とそうでない人では感じ方に大きな温度差があるのです。それを埋めるのは難しいですね。
――先生ご自身の介護生活を振り返って、一番つらかったことは何ですか?
別府先生 子育てと時期が重なったことがあり、子どものために十分な時間を費やせなかったことです。これはいまだに罪悪感として残っています。大切にする優先順位を間違えたのではないかと。「いいお嫁さんにならなければ」という意識が強かったんですね。
その当時は「できることはすべてやるべきと考えていた」という別府先生。しかし、徐々にそれはよくないと考えるようになったと言います。
「自分や子どもたちを犠牲にしたという気持ちばかりがずっと残ってしまいますから」
では、どのように“がんばらない介護”を実践していけばよいのでしょうか?
次回、あなたの健康状態をチェックするところから始めてみましょう。
第2回 ココロとカラダの状態をチェックしよう!
【別府明子(べっぷ・あきこ)】
- 「がんばらない介護生活を考える会」をもっと知りたい方は、こちらまで
-
ホームページ:http://www.gambaranaikaigo.com/
※9月25日は、介護の日。イベントも開催されますので、詳細はホームページをご覧ください。