介護をもうやめたいと思うあなたへ。
第3回 須田さんのお母さんのこと
いっぱい問題のあった母親
須田木綿子さん(東洋大学)も、昔からの親子の葛藤が大きかった人でした。
父親は母親よりひと回り若い人で、須田さんは一人っ子。
母親とはことごとくぶつかってきました。
母のめんどうは父がみる、自分はやらない・やりたくないと思っていた須田さんでしたが、父親はがんで他界してしまいました。
須田さんは、おもわず病床の父親にこうぶつけてしまったそうです。
「ここで死ぬってないんじゃない!?」
「なんでここで逃げるかなぁ」
にっちもさっちもいかない気持ちを、止められませんでした。
父親は母親よりひと回り若い人で、須田さんは一人っ子。
母親とはことごとくぶつかってきました。
母のめんどうは父がみる、自分はやらない・やりたくないと思っていた須田さんでしたが、父親はがんで他界してしまいました。
須田さんは、おもわず病床の父親にこうぶつけてしまったそうです。
「ここで死ぬってないんじゃない!?」
「なんでここで逃げるかなぁ」
にっちもさっちもいかない気持ちを、止められませんでした。
振り込み一つでも負担だった
結局、須田さんが母親をみることになりました。
しかし、一緒にいればいるほど、過去のありとあらゆる思いがズルズルと出てきたそうです。
母親のために銀行の振り込み一つしてあげるのも、ひどく負担に感じました。
もう無理。これ以上手に負えない。
考え抜いたすえ、母親には有料老人ホームに入ってもらうことにしたそうです。
それで大騒動・大騒ぎしてやっと入った有料老人ホームでしたが、入った後の1か月は、母親に会いたくありませんでした。
入所に至るまでの恨みつらみがくすぶっているときに会えば、またその思いが沸騰しそうだったからです。
1か月が過ぎて、自分を引きずるようにして会いに行ったところ、母親の様子がとても穏やかで、それをみて自分も解放されたのがわかりました。
しかし、一緒にいればいるほど、過去のありとあらゆる思いがズルズルと出てきたそうです。
母親のために銀行の振り込み一つしてあげるのも、ひどく負担に感じました。
もう無理。これ以上手に負えない。
考え抜いたすえ、母親には有料老人ホームに入ってもらうことにしたそうです。
それで大騒動・大騒ぎしてやっと入った有料老人ホームでしたが、入った後の1か月は、母親に会いたくありませんでした。
入所に至るまでの恨みつらみがくすぶっているときに会えば、またその思いが沸騰しそうだったからです。
1か月が過ぎて、自分を引きずるようにして会いに行ったところ、母親の様子がとても穏やかで、それをみて自分も解放されたのがわかりました。
自分の居場所をみつけた
有料老人ホームで、職員の人が、折につけ母親のことをほめてくれたり、力づけてくれることで、母親はいきいきとしていました。
その様子を見て、これでよかったのだと思ったそうです。
1月1日は母親の誕生日でもあり、須田さんは自分の娘を連れて「初詣に行こう」と誘いました。
すると、母親はこう返してきたと言います。
「お正月だから、職員の人と心穏やかに過ごしたい」
思わずカーッと来たけれど、あぁ、母は本当に幸せになったんだと思い直したそうです。
その様子を見て、これでよかったのだと思ったそうです。
1月1日は母親の誕生日でもあり、須田さんは自分の娘を連れて「初詣に行こう」と誘いました。
すると、母親はこう返してきたと言います。
「お正月だから、職員の人と心穏やかに過ごしたい」
思わずカーッと来たけれど、あぁ、母は本当に幸せになったんだと思い直したそうです。
どんな結果でもいい
須田さんは、話をこう結びました。
本来なら、自分でも手に入るはずだったものを逃した、という気持ちもあります。
「親の介護を通して、とても大切な思い出を得ることができた」と語る、介護をやり抜いた人のインタビューを聞くと、そういう思いがよぎります。
半分あきらめもあります。
なんで自分の人生には、そういうものが手に入らなかったのだろうという感情もあります。
でも、それをいつまで言っていてもしかたないですよね。
一生懸命選択して、間違えると言うこともある。それはしょうがないです。
一生懸命考えて、そのうえで「できない」ということだってアリなのです。
一生懸命考えるということが大切。
家族の問題は根が深く、「なぜ私がこんな人を介護しなければならないの」という気持ちになるのもわかってほしい。
須田さん自身がそうだったからです。
そういう人がいてもいい。
須田さんはそういう声なき声に耳を傾けていきたいと言います。
本来なら、自分でも手に入るはずだったものを逃した、という気持ちもあります。
「親の介護を通して、とても大切な思い出を得ることができた」と語る、介護をやり抜いた人のインタビューを聞くと、そういう思いがよぎります。
半分あきらめもあります。
なんで自分の人生には、そういうものが手に入らなかったのだろうという感情もあります。
でも、それをいつまで言っていてもしかたないですよね。
一生懸命選択して、間違えると言うこともある。それはしょうがないです。
一生懸命考えて、そのうえで「できない」ということだってアリなのです。
一生懸命考えるということが大切。
家族の問題は根が深く、「なぜ私がこんな人を介護しなければならないの」という気持ちになるのもわかってほしい。
須田さん自身がそうだったからです。
そういう人がいてもいい。
須田さんはそういう声なき声に耳を傾けていきたいと言います。
取材にご協力いただいた方
須田 木綿子(すだ・ゆうこ)さん
1960年、東京生まれ。明治学院大学社会福祉学科卒業。東京大学医学系研究科保健学専攻。保健学博士。現在、東洋大学社会学部社会福祉学科教授。
日米介護保険研究会のメンバー(写真)とともに、東京都葛飾区と秋田県大館市における家庭介護者と要介護高齢者へのパネル調査研究を行い、研究結果を近く上梓予定。
1960年、東京生まれ。明治学院大学社会福祉学科卒業。東京大学医学系研究科保健学専攻。保健学博士。現在、東洋大学社会学部社会福祉学科教授。
日米介護保険研究会のメンバー(写真)とともに、東京都葛飾区と秋田県大館市における家庭介護者と要介護高齢者へのパネル調査研究を行い、研究結果を近く上梓予定。
須田先生のお話をもっとくわしく知りたい人のために
<新・MINERVA福祉ライブラリー5>
●日米LTCI研究会=編
●高橋龍太郎・須田木綿子=編集代表
●A5判、約292頁、2010年2月刊行予定
●定価 3,500円(税別)