今月の特集 上手に使おう! 成年後見制度
最終回 成年後見制度を上手に使うポイント
お年寄りや障がいのある方が、安心して生活するためのとても大切な制度である成年後見制度。最終回の今回は、制度のメリットとデメリットを知った上で、上手に利用するためのポイントを事例なども挙げながら説明します。
任意後見と法定後見のメリット・デメリットとポイント
どちらの制度を利用できるのか、また、法定後見制度の場合、補助・保佐・後見のどれを申請したらいいのか迷ってしまうと思います。そこで、ここではそれぞれのメリットとデメリットをあげます。
法定後見
メリット |
・金銭管理や契約が滞りなくできる。 ・補助・保佐は本人の同意した事柄を援助者が代わりに行うので、本人のできることはそのまま保てる。 ・消費者被害を防げたり、もし、被害に遭っても正当な手段で取り消せる。 |
デメリット |
・後見人は家庭裁判所が決めるので、本人の元気なときの意思は無関係になる。 ・成年被後見人になると、選挙権がなくなったり今まで登録していた実印は登録が抹消される。 ・本人が死亡したら後見人も業務終了となるので、身寄りがいない人の場合は、葬儀などの手続きに困ることがある。 |
【ポイント】
・申立から審判まで2〜3か月かかることが多いので、早めの準備が必要。
・類型は申立て時の成年後見用の診断書が、目安となる。
・補助には「鑑定」はないが、保佐と後見は「鑑定」を行う場合がある。医師による鑑定書の作成には数万〜10万円かかり、時間も数週間程度必要になる。
・最初は「補助」で始めても、途中で本人の状態が悪化したら、「保佐」や「後見」へ移って、保佐人・成年後見人が行える範囲を増やすことができる。
・補助・保佐は本人の同意していないことはできないので、被害妄想がある方やコミュニケーションがとりにくい方は利用しにくい。
・第3者が援助者になった場合、原則報酬費用がかかる。
・毎年、財産目録等の書類を家庭裁判所に提出しなければならない。
・申立から審判まで2〜3か月かかることが多いので、早めの準備が必要。
・類型は申立て時の成年後見用の診断書が、目安となる。
・補助には「鑑定」はないが、保佐と後見は「鑑定」を行う場合がある。医師による鑑定書の作成には数万〜10万円かかり、時間も数週間程度必要になる。
・最初は「補助」で始めても、途中で本人の状態が悪化したら、「保佐」や「後見」へ移って、保佐人・成年後見人が行える範囲を増やすことができる。
・補助・保佐は本人の同意していないことはできないので、被害妄想がある方やコミュニケーションがとりにくい方は利用しにくい。
・第3者が援助者になった場合、原則報酬費用がかかる。
・毎年、財産目録等の書類を家庭裁判所に提出しなければならない。
任意後見
メリット |
・元気なときに自分で頼みたい人や事柄を決められるので安心。 ・特約として、死後事務や葬儀のことも依頼できる。 |
デメリット |
・受任者とうまくいかなくなったら、あるいは先に受任者が具合が悪くなってしまったら、解約して別の人と改めて公正証書を結ぶ必要がある。 |
【ポイント】
・第3者に依頼する場合は「見守り契約(月に1回の電話と3か月に1回の面会など)」や「委任代理契約(足腰が不自由になったので、銀行に定期的に行ってほしいなど)」もセットにするとよい。
・最近ではNPO法人など、さまざまな団体がPRしているので、信頼できる団体か、費用は明確か、慎重に調べたり、関係者に相談することが必要。
・家庭裁判所に登録している団体(弁護士会・司法書士会・社会福祉士会などがそれぞれ作っている)なら安心。
・第3者に依頼する場合は「見守り契約(月に1回の電話と3か月に1回の面会など)」や「委任代理契約(足腰が不自由になったので、銀行に定期的に行ってほしいなど)」もセットにするとよい。
・最近ではNPO法人など、さまざまな団体がPRしているので、信頼できる団体か、費用は明確か、慎重に調べたり、関係者に相談することが必要。
・家庭裁判所に登録している団体(弁護士会・司法書士会・社会福祉士会などがそれぞれ作っている)なら安心。
任意後見と法定後見の事例
最後に、制度を上手に使った事例をご紹介します。制度利用の参考にしてください。
法定後見
・同居の家族が、本人のキャッシュカードを使って介護費用を下ろしていたが、普通預金が底をついたために、定期を解約しようとしたところ、銀行から後見人でないとできないと言われた。そこで、成年後見人になり、本人に代わって財産の管理をできるようにした。
・障がい者施設の入所契約を親ではなく、第3者の後見人に締結してもらった。高齢の親の場合、本人よりも先に具合が悪くなったり、死亡する可能性もあり不安だった。そこで、これまでは親だけが後見人だったが、第3者と複数後見人になり、親が辞任したら第3者の後見人に引き継いでもらうことにした。
・住宅リフォームの詐欺被害に何度も遭っていた。後見人が付いたことを相手の会社に伝えて、費用を返還させることができた。
・障がい者施設の入所契約を親ではなく、第3者の後見人に締結してもらった。高齢の親の場合、本人よりも先に具合が悪くなったり、死亡する可能性もあり不安だった。そこで、これまでは親だけが後見人だったが、第3者と複数後見人になり、親が辞任したら第3者の後見人に引き継いでもらうことにした。
・住宅リフォームの詐欺被害に何度も遭っていた。後見人が付いたことを相手の会社に伝えて、費用を返還させることができた。
任意後見
・子どもが複数いるが、自分が認知症になったら、みんなでもめるかもしれないことから、同居している長男に全面的に任せることにしたいという意思を任意後見契約の公正証書に記した。
・いざというときに頼める親族がいないので、第3者に今のうちに自分の意思を伝えて、葬儀まで含めて依頼した。
・自分のことは最後まで自分で決めておきたいし、親族との関係も良好に保ちたい。そのため、お金や契約など面倒なことは第3者の任意後見人に依頼しておいた。
・将来、認知症なったときのライフプランを自分で決めておきたい。
・同居する親の意思を尊重したい。そのために、元気なうちから子どもが任意後見人になり、親の意思を明確に示してもらった。
今月の特集では、4回にわたって成年後見制度を説明してきました。
法定後見は、すでに意思・判断能力が不十分な方が財産管理や契約の補助を代理することによって、安心して生活が出来るように支援し、権利と暮らしを守るための制度です。一方、任意後見は、元気なうちにあらかじめ後見人を決めておくことで、いざというときに役立つ保険のような仕組みです。
このように、成年後見制度はすべての人にとって、自分の権利と暮らしを守るための制度といえます。ぜひ、転ばぬ先の杖の意味でも、成年後見制度を早い段階から活用して、安心できる生活に役立てましょう。
・いざというときに頼める親族がいないので、第3者に今のうちに自分の意思を伝えて、葬儀まで含めて依頼した。
・自分のことは最後まで自分で決めておきたいし、親族との関係も良好に保ちたい。そのため、お金や契約など面倒なことは第3者の任意後見人に依頼しておいた。
・将来、認知症なったときのライフプランを自分で決めておきたい。
・同居する親の意思を尊重したい。そのために、元気なうちから子どもが任意後見人になり、親の意思を明確に示してもらった。
今月の特集では、4回にわたって成年後見制度を説明してきました。
法定後見は、すでに意思・判断能力が不十分な方が財産管理や契約の補助を代理することによって、安心して生活が出来るように支援し、権利と暮らしを守るための制度です。一方、任意後見は、元気なうちにあらかじめ後見人を決めておくことで、いざというときに役立つ保険のような仕組みです。
このように、成年後見制度はすべての人にとって、自分の権利と暮らしを守るための制度といえます。ぜひ、転ばぬ先の杖の意味でも、成年後見制度を早い段階から活用して、安心できる生活に役立てましょう。
お話をうかがった方
町田市役所地域福祉部福祉総務課
社会福祉士
【参考図書】
町田市社会福祉協議会「福祉サポートまちだ」