年間約5000名の新患者が発生するという脊髄損傷。
ここでは、その受傷直後から患者およびその家族がどのような思いを抱きながら治療に臨むのかを、時系列に沿ってご紹介します(執筆:丸山柾子さん)。
それに呼応する形で、医療関係者によるアプローチ、そして当事者の障害受容はどのような経緯をたどるのか、事例の展開に応じて、専門家が詳細な解説を示していきます(執筆:松尾清美先生)。
ここでは、その受傷直後から患者およびその家族がどのような思いを抱きながら治療に臨むのかを、時系列に沿ってご紹介します(執筆:丸山柾子さん)。
それに呼応する形で、医療関係者によるアプローチ、そして当事者の障害受容はどのような経緯をたどるのか、事例の展開に応じて、専門家が詳細な解説を示していきます(執筆:松尾清美先生)。
第33回 大切なことは、本人がどうしたいかということです
「脊髄損傷なら市販品じゃだめだろう」などという考え方は、その後もいろんな場面で多く出会うことになりました。道具を本人のところへ運んであげるというのは必ずしも優しいことではないと強く感じたものです。それをわかってもらうために、根気強く話を重ねながら、松尾先生からは「大切なことは、本人がどうしたいかということです。向こうのやり方に押し切られないためにも、本人や家族がどんなふうにしたいかをはっきり持っていることが大事です」と励まされました。
浴室の設計は、利用するリフトやシャワーチェアのサイズと合わせて細かくセンチメートル単位まで医用工学研究部で設計してもらったので、そのまま設計士に依頼できました。主治医が言われた“きめ細かさ”とはこのことかなと感心もしましたが、使う身になってみれば、これほど大事でかつありがたいことはなかったと思います。
一方、入浴の手順や使用するリフト、シャワーチェア、吊り具等については、病院のOT の生活訓練室(ADL室)に設備されていた訓練用の浴室で、娘が来てくれるたびに夫と三人で何度も何度もいろいろな用具をメーカーごとに試してみました。ベッドから浴槽までの移動をどうするか、どうやって洗うか、浴槽からベッドまでどうやって戻るかと、シミュレーションしながら試してみました。夫の身体が大きいので、安定したシャワーチェアが見つかったときは「これでいける」という自信も湧いてきました。時間をかけて、多くの機器の中から、いろいろ試しながら、自分たちに合うものを選ぶことができたので、大変よかったです。
浴室の設計は、利用するリフトやシャワーチェアのサイズと合わせて細かくセンチメートル単位まで医用工学研究部で設計してもらったので、そのまま設計士に依頼できました。主治医が言われた“きめ細かさ”とはこのことかなと感心もしましたが、使う身になってみれば、これほど大事でかつありがたいことはなかったと思います。
一方、入浴の手順や使用するリフト、シャワーチェア、吊り具等については、病院のOT の生活訓練室(ADL室)に設備されていた訓練用の浴室で、娘が来てくれるたびに夫と三人で何度も何度もいろいろな用具をメーカーごとに試してみました。ベッドから浴槽までの移動をどうするか、どうやって洗うか、浴槽からベッドまでどうやって戻るかと、シミュレーションしながら試してみました。夫の身体が大きいので、安定したシャワーチェアが見つかったときは「これでいける」という自信も湧いてきました。時間をかけて、多くの機器の中から、いろいろ試しながら、自分たちに合うものを選ぶことができたので、大変よかったです。
それからは、退院までの間に、私一人でできるようになるまでADL室で練習を重ねました。時々リハの研修生が手伝ってくれました。ですから、帰宅直後から入浴が可能でした。
おかげで、退院後は毎日、気負わずに気持ちよく入浴させることができました。夫も自宅での入浴は格別だったようで、気持ちも爽やかになるといって、その時間を楽しみにしていました。また、便失禁があったときなど、どんな時刻であれ、気軽にきれいにしてあげることができ、それもよかったことの一つです。何よりも毎日の入浴は、心身の清潔を保つ上でどれほどの効果があったかしれません。
午前中に入浴してから身支度を整え、1日が始まりました。普通に暮らすならば毎日の入浴は当たり前なのに、「障害者が毎日入浴するなんてぜいたくだ」などという声がまだまだ聞こえてくる中で、夫は気持ちのよい毎日を送ることができました。入浴は「血行がよくなるので、褥瘡の予防にも非常に効果があった」と、多くの人に言ってもらいました。
おかげで、退院後は毎日、気負わずに気持ちよく入浴させることができました。夫も自宅での入浴は格別だったようで、気持ちも爽やかになるといって、その時間を楽しみにしていました。また、便失禁があったときなど、どんな時刻であれ、気軽にきれいにしてあげることができ、それもよかったことの一つです。何よりも毎日の入浴は、心身の清潔を保つ上でどれほどの効果があったかしれません。
午前中に入浴してから身支度を整え、1日が始まりました。普通に暮らすならば毎日の入浴は当たり前なのに、「障害者が毎日入浴するなんてぜいたくだ」などという声がまだまだ聞こえてくる中で、夫は気持ちのよい毎日を送ることができました。入浴は「血行がよくなるので、褥瘡の予防にも非常に効果があった」と、多くの人に言ってもらいました。
後日談ですが、退院後のこの入浴方法を伝え聞いた地元の看護大学の「快適住まい研究会」の教師と学生が見学に来て、「こんな方法もあるのか」と、びっくりして帰って行きました。いわば専門職の人たちだっただけに、私たちは複雑な想いで対応しました。
トイレに関しては考える必要がなかったのが、残念と言えば残念なことでした。
トイレに関しては考える必要がなかったのが、残念と言えば残念なことでした。