年間約5000名の新患者が発生するという脊髄損傷。
ここでは、その受傷直後から患者およびその家族がどのような思いを抱きながら治療に臨むのかを、時系列に沿ってご紹介します(執筆:丸山柾子さん)。
それに呼応する形で、医療関係者によるアプローチ、そして当事者の障害受容はどのような経緯をたどるのか、事例の展開に応じて、専門家が詳細な解説を示していきます(執筆:松尾清美先生)。
ここでは、その受傷直後から患者およびその家族がどのような思いを抱きながら治療に臨むのかを、時系列に沿ってご紹介します(執筆:丸山柾子さん)。
それに呼応する形で、医療関係者によるアプローチ、そして当事者の障害受容はどのような経緯をたどるのか、事例の展開に応じて、専門家が詳細な解説を示していきます(執筆:松尾清美先生)。
第31回「第29回 神経因性膀胱・直腸障害」「第30回 介助者がついていなくても安心して過ごすことができる」の解説
慢性期病棟へ転棟したところです。転棟後のリハ科でのリハビリテーション訓練は、一段と退院や将来の生活方法を見据えた具体的なものとなっていきます。
ここでは、急性期の中で最も大変だったことの一つである神経因性膀胱・直腸障害のことを回想しているところから始まっています。丸山さんは、「あらゆる後遺障害のうち、最も精神的なダメージを受けた障害でした。大袈裟ではなく、人間の尊厳に関わると思われるほどの精神的な打撃を受けました」、また、「『排泄は食事をとるのと同等の、大事なことと考えることにしよう』と、心に決めるまでにはずいぶん時間と覚悟が必要でした」と記されています。脊髄損傷者には、この気持ちの切り替えができるまでに、排尿と排便の管理方法を学びながら、少なからず時間が必要です。
大便に関しては、食べ合わせや講演前の精神的な緊張、車いすや自動車などでの移動での揺れなども、便が出やすくなったりする要因になることがあるのです。そのために、丸山さんは、出かける前には摘便(直腸に降りてきている便を肛門から指を入れることで摘出すること)することにしたと書かれています。便失禁すると、周りにも匂いなどで迷惑をかけるだけでなく、本人の外出する勇気や希望、人間としての尊厳を消失させる可能性を含んでいるのです。その失敗の確率を少なくするため、このような習慣を作られたものと思います。
小便の管理については、「丸山さんには、これからまだまだ活躍してもらわねばならないので、膀胱漏とかカテーテルという管で取るというのは不便です。収尿器をつけるという方法を採ることになるでしょう」という医師の説明を聞いて、括約筋の切開術を受けることにされたようです。これは、「膀胱内の圧を高めたり、炎症を起こさないために内視鏡で括約筋を少し切開する。膀胱に圧を加えると出る程度に切開し、その後は念のために収尿器で対応する」という治療です。また、研修医の「今回の治療は括約筋を切開して膀胱に溜まったら出てくるという治療で、これから膀胱のリハビリが始まる。軽く叩いたり、または押して出したりできれば、膀胱が空っぽになって、その間は出ないということになる。それでも、失禁ということに備えて収尿器を装着する。留置カテーテルや膀胱漏では、尿道や膀胱の炎症、潰瘍や褥瘡の発生、膀胱萎縮等の可能性が大であるのと同時に、カテーテル装着によって、身体的、社会的に束縛される不利益がある」という的確な説明で、手術を受け入れられたのです。
その結果、日中は収尿器を装着することになり、収尿袋を片方の足に止めるように工夫しました。その留め具の作り方も、OTが工夫したのです。最初は市販の収尿器を使っていましたが、病棟のナースが教えてくれた、コンドームで手作りしたものが最も肌になじむし、使いやすいとわかってからは、ずっとそれを作って使い続けています。
現在では、実用に耐える既製品の収尿器が市販されていますが、手作り収尿器も伝承されており、いまでも多くの脊髄損傷者が手作り収尿器を使っています。
ここでは、収尿器を使うことで「介助者がついていなくても安心して過ごすことができる」理由について、大変わかりやすく書かれています。
ここでは、急性期の中で最も大変だったことの一つである神経因性膀胱・直腸障害のことを回想しているところから始まっています。丸山さんは、「あらゆる後遺障害のうち、最も精神的なダメージを受けた障害でした。大袈裟ではなく、人間の尊厳に関わると思われるほどの精神的な打撃を受けました」、また、「『排泄は食事をとるのと同等の、大事なことと考えることにしよう』と、心に決めるまでにはずいぶん時間と覚悟が必要でした」と記されています。脊髄損傷者には、この気持ちの切り替えができるまでに、排尿と排便の管理方法を学びながら、少なからず時間が必要です。
大便に関しては、食べ合わせや講演前の精神的な緊張、車いすや自動車などでの移動での揺れなども、便が出やすくなったりする要因になることがあるのです。そのために、丸山さんは、出かける前には摘便(直腸に降りてきている便を肛門から指を入れることで摘出すること)することにしたと書かれています。便失禁すると、周りにも匂いなどで迷惑をかけるだけでなく、本人の外出する勇気や希望、人間としての尊厳を消失させる可能性を含んでいるのです。その失敗の確率を少なくするため、このような習慣を作られたものと思います。
小便の管理については、「丸山さんには、これからまだまだ活躍してもらわねばならないので、膀胱漏とかカテーテルという管で取るというのは不便です。収尿器をつけるという方法を採ることになるでしょう」という医師の説明を聞いて、括約筋の切開術を受けることにされたようです。これは、「膀胱内の圧を高めたり、炎症を起こさないために内視鏡で括約筋を少し切開する。膀胱に圧を加えると出る程度に切開し、その後は念のために収尿器で対応する」という治療です。また、研修医の「今回の治療は括約筋を切開して膀胱に溜まったら出てくるという治療で、これから膀胱のリハビリが始まる。軽く叩いたり、または押して出したりできれば、膀胱が空っぽになって、その間は出ないということになる。それでも、失禁ということに備えて収尿器を装着する。留置カテーテルや膀胱漏では、尿道や膀胱の炎症、潰瘍や褥瘡の発生、膀胱萎縮等の可能性が大であるのと同時に、カテーテル装着によって、身体的、社会的に束縛される不利益がある」という的確な説明で、手術を受け入れられたのです。
その結果、日中は収尿器を装着することになり、収尿袋を片方の足に止めるように工夫しました。その留め具の作り方も、OTが工夫したのです。最初は市販の収尿器を使っていましたが、病棟のナースが教えてくれた、コンドームで手作りしたものが最も肌になじむし、使いやすいとわかってからは、ずっとそれを作って使い続けています。
現在では、実用に耐える既製品の収尿器が市販されていますが、手作り収尿器も伝承されており、いまでも多くの脊髄損傷者が手作り収尿器を使っています。
ここでは、収尿器を使うことで「介助者がついていなくても安心して過ごすことができる」理由について、大変わかりやすく書かれています。