年間約5000名の新患者が発生するという脊髄損傷。
ここでは、その受傷直後から患者およびその家族がどのような思いを抱きながら治療に臨むのかを、時系列に沿ってご紹介します(執筆:丸山柾子さん)。
それに呼応する形で、医療関係者によるアプローチ、そして当事者の障害受容はどのような経緯をたどるのか、事例の展開に応じて、専門家が詳細な解説を示していきます(執筆:松尾清美先生)。
ここでは、その受傷直後から患者およびその家族がどのような思いを抱きながら治療に臨むのかを、時系列に沿ってご紹介します(執筆:丸山柾子さん)。
それに呼応する形で、医療関係者によるアプローチ、そして当事者の障害受容はどのような経緯をたどるのか、事例の展開に応じて、専門家が詳細な解説を示していきます(執筆:松尾清美先生)。
第28回 「第26回 奇跡とも思える再会」「第27回 僕たちには、ゴールはないんですよね」の解説
出張先での交通事故によって高位脊髄損傷を受傷し、全身の運動機能を奪われてしまった丸山さんが、100日目にして復職の意思を固めました。そこに至るまでの心の揺れや気持ちの変化について、彼の言葉の中からもう少し探ってみましょう。
急性期である受傷後3か月〜4か月までは、整形外科や泌尿器科の主治医によって、検査科や放射線科から提出された検査結果や計測情報を駆使し、損傷した脊椎の固定や手足の骨折や傷の治療、そして慢性期以降を考慮した泌尿器科的治療、関節可動域や筋力の低下を防ぐためのリハビリテーションスタッフによるベッドサイド訓練、そしてリハビリテーション科での訓練が行われてきました。また、平行してソーシャルワーカーによる事故後の保険などの対応や労働災害の事務的処理、今後の社会的資源の活用方法の検討、ナースのこれらを踏まえた看護と、多くの専門職による意志の疎通を通した精神的支援など、さまざまな専門職によって進められてきたのです。
この急性期の治療やリハビリテーション訓練の中で、脊髄損傷は現在の医学では完治させることのできない障害であることや、車いすを使った生活となり、高位脊髄損傷では下肢に加え、上肢機能も障害が残る四肢麻痺のため、排泄や入浴、衣服の脱着など上肢で行う生活動作や行為は、介助者の手助けが必ず必要となることがわかってきます。また、第4頸髄より高位の損傷では、呼吸器にも障害が現れるため、呼吸器管理も必要なのです。丸山さんも、急性期には呼吸器管理されていることが文章でもわかります。急性期を過ぎて、損傷部位の炎症がなくなっていくと、自発呼吸ができるようになってきます。
このように、四肢麻痺という重篤な身体状況になったのですが、四肢が自由に動かなくても、移動に電動車いすを使えば、自立して移動することができるので、好きなところへ行くことができるようになるのです。また、排尿は尿道口から出る尿を漏らさずに集めることができるように収尿器などを工夫すれば、安全で衛生的な管理が可能となります。排便や入浴は、介助者の腰への負担を軽減する方法、例えば吊り上げリフトで吊り上げて移乗介助することなど、生活方法の工夫や省力化、そして自立方法などについて、主治医から先を見据えた配慮で医用工学研究部へつなぎ、具体的な生活行動支援が始まりました。
具体的には、本人の、障害をもった自分に関する精神面の置きどころ、そして生き方をはじめ、退院後の生活イメージ、復職する場合の移動方法や講義の準備と講義方法、排泄方法、食事方法などを整理している状況がわかります。
慢性期病棟へ転棟する受傷後3〜4か月の時期は、ご夫婦にとって、まだまだ不明の部分が多く、将来が見えず、不安も多い時期なのですが、慢性期病棟へ転棟するこの時期をスタッフは社会復帰への第一歩と言っています。
新たな病棟で、どういう生活になるのか、そしてその先の生活に不安を抱いているお二人に対して、担当だったNナースが「また、人の輪が広がるよ」という声かけで不安を解消し、「いよいよ腰を据えて頑張ろうね」と前向きな気持ちに誘導し、「二人で気持ちを確認し合った」と書かれています。プロのナースの配慮がよくわかります。
慢性期病棟へ移動した後のリハ科でのリハビリテーション訓練は、一段と退院後や将来の生活方法を見据えた具体的なものとなっていき、自宅での生活方法や手段獲得とQOLの向上、復職の準備、社会参加の方法と障害の捉え方などの段階へ進んでいきます。
急性期である受傷後3か月〜4か月までは、整形外科や泌尿器科の主治医によって、検査科や放射線科から提出された検査結果や計測情報を駆使し、損傷した脊椎の固定や手足の骨折や傷の治療、そして慢性期以降を考慮した泌尿器科的治療、関節可動域や筋力の低下を防ぐためのリハビリテーションスタッフによるベッドサイド訓練、そしてリハビリテーション科での訓練が行われてきました。また、平行してソーシャルワーカーによる事故後の保険などの対応や労働災害の事務的処理、今後の社会的資源の活用方法の検討、ナースのこれらを踏まえた看護と、多くの専門職による意志の疎通を通した精神的支援など、さまざまな専門職によって進められてきたのです。
この急性期の治療やリハビリテーション訓練の中で、脊髄損傷は現在の医学では完治させることのできない障害であることや、車いすを使った生活となり、高位脊髄損傷では下肢に加え、上肢機能も障害が残る四肢麻痺のため、排泄や入浴、衣服の脱着など上肢で行う生活動作や行為は、介助者の手助けが必ず必要となることがわかってきます。また、第4頸髄より高位の損傷では、呼吸器にも障害が現れるため、呼吸器管理も必要なのです。丸山さんも、急性期には呼吸器管理されていることが文章でもわかります。急性期を過ぎて、損傷部位の炎症がなくなっていくと、自発呼吸ができるようになってきます。
このように、四肢麻痺という重篤な身体状況になったのですが、四肢が自由に動かなくても、移動に電動車いすを使えば、自立して移動することができるので、好きなところへ行くことができるようになるのです。また、排尿は尿道口から出る尿を漏らさずに集めることができるように収尿器などを工夫すれば、安全で衛生的な管理が可能となります。排便や入浴は、介助者の腰への負担を軽減する方法、例えば吊り上げリフトで吊り上げて移乗介助することなど、生活方法の工夫や省力化、そして自立方法などについて、主治医から先を見据えた配慮で医用工学研究部へつなぎ、具体的な生活行動支援が始まりました。
具体的には、本人の、障害をもった自分に関する精神面の置きどころ、そして生き方をはじめ、退院後の生活イメージ、復職する場合の移動方法や講義の準備と講義方法、排泄方法、食事方法などを整理している状況がわかります。
慢性期病棟へ転棟する受傷後3〜4か月の時期は、ご夫婦にとって、まだまだ不明の部分が多く、将来が見えず、不安も多い時期なのですが、慢性期病棟へ転棟するこの時期をスタッフは社会復帰への第一歩と言っています。
新たな病棟で、どういう生活になるのか、そしてその先の生活に不安を抱いているお二人に対して、担当だったNナースが「また、人の輪が広がるよ」という声かけで不安を解消し、「いよいよ腰を据えて頑張ろうね」と前向きな気持ちに誘導し、「二人で気持ちを確認し合った」と書かれています。プロのナースの配慮がよくわかります。
慢性期病棟へ移動した後のリハ科でのリハビリテーション訓練は、一段と退院後や将来の生活方法を見据えた具体的なものとなっていき、自宅での生活方法や手段獲得とQOLの向上、復職の準備、社会参加の方法と障害の捉え方などの段階へ進んでいきます。