年間約5000名の新患者が発生するという脊髄損傷。
ここでは、その受傷直後から患者およびその家族がどのような思いを抱きながら治療に臨むのかを、時系列に沿ってご紹介します(執筆:丸山柾子さん)。
それに呼応する形で、医療関係者によるアプローチ、そして当事者の障害受容はどのような経緯をたどるのか、事例の展開に応じて、専門家が詳細な解説を示していきます(執筆:松尾清美先生)。
ここでは、その受傷直後から患者およびその家族がどのような思いを抱きながら治療に臨むのかを、時系列に沿ってご紹介します(執筆:丸山柾子さん)。
それに呼応する形で、医療関係者によるアプローチ、そして当事者の障害受容はどのような経緯をたどるのか、事例の展開に応じて、専門家が詳細な解説を示していきます(執筆:松尾清美先生)。
第30回 介助者がついていなくても安心して過ごすことができる
手術は計画通りに行われました。「前立腺がだいぶ腫れていたので、ついでに削っておいた」と後で聞きました。その手術の様子を映すモニター画面を夫はずっと見ていたようで、「すごい手術だった。出血もすごい。ちょっと切るだけと言ったけど、大手術だった」と、グッタリ疲れて病室へ戻ってきました。医学的には順調にいった手術でしたが、素人目の夫には大変に映ったのでしょう。「あれを順調と言わずして……」と、後で若いドクターに笑われるほどでした。
1週間後にカテーテルが抜かれ、尿が順調に出て来ました。尿器に流れる自分の尿の音を半年ぶりに聞いたことになります。「音がするんだよ」と嬉しそうだったので、「感動ものでしょ」と、私も余裕で言えるようになっていました。
日中は収尿器を装着することになりました。収尿袋を片方の足に止めるように工夫しました。その留め具の作り方も、OTの先生が教えてくれました。最初は市販の収尿器を使っていましたが、病棟のナースが教えてくれた、コンドームで手作りしたものが最も肌になじむし、使いやすいとわかってからは、ずっとそれを作って使いました。
手術後1か月の検査と説明がありました。
「膀胱については、括約筋切開術により無理がかからなくなって変形もない。括約筋はなるべく残すように切ったので、圧がまだだいぶかかっている。丸山さんの場合、その上自律神経が戻ってきている。自律神経が戻ること自体は非常にいいことなんだが、そのバランスが問題で、過緊張が起きて尿意を催している状態と言える。過緊張がひどいものでないように経過していけばよいのだが……、膀胱のリハビリをしながら様子を見ましょう。自律神経は最悪の場合ないと困るのだが、コントロールがあり過ぎても機能がないと困るし……」
といわれ、「最悪の場合、もう一度手術が必要になるかもしれない」とも付け加えられました。自律神経と過緊張の関係については、説明されてもよくわからなかったというのが本音です。
退院後、再び過緊張が頻繁に起きるようになったので、2年後に再度手術が必要になりました。それ以降は、全く順調でした。
この泌尿器科の治療のありがたさは、退院後にあらためて感じることになりました。まず、収尿器は片方の足元に装着するだけなので、ズボンに隠れて人目には付きません。スーツで出かけても普段と何も変わらないから、どこへでも堂々と出かけることができました。また、何よりも介助者がついていなくても安心して過ごすことができるので、仕事に専念できました。授業や会議などが長引いても、少しも心配しませんでした。
そして、その間は、介助者である私にも貴重な自由時間が確保されたのです。「奥さんが付いているんだから、導尿してあげなさいよ」などという医師もいましたが、私たちにとっては最良で最高の治療をしていただいたと思っています。
1週間後にカテーテルが抜かれ、尿が順調に出て来ました。尿器に流れる自分の尿の音を半年ぶりに聞いたことになります。「音がするんだよ」と嬉しそうだったので、「感動ものでしょ」と、私も余裕で言えるようになっていました。
日中は収尿器を装着することになりました。収尿袋を片方の足に止めるように工夫しました。その留め具の作り方も、OTの先生が教えてくれました。最初は市販の収尿器を使っていましたが、病棟のナースが教えてくれた、コンドームで手作りしたものが最も肌になじむし、使いやすいとわかってからは、ずっとそれを作って使いました。
手術後1か月の検査と説明がありました。
「膀胱については、括約筋切開術により無理がかからなくなって変形もない。括約筋はなるべく残すように切ったので、圧がまだだいぶかかっている。丸山さんの場合、その上自律神経が戻ってきている。自律神経が戻ること自体は非常にいいことなんだが、そのバランスが問題で、過緊張が起きて尿意を催している状態と言える。過緊張がひどいものでないように経過していけばよいのだが……、膀胱のリハビリをしながら様子を見ましょう。自律神経は最悪の場合ないと困るのだが、コントロールがあり過ぎても機能がないと困るし……」
といわれ、「最悪の場合、もう一度手術が必要になるかもしれない」とも付け加えられました。自律神経と過緊張の関係については、説明されてもよくわからなかったというのが本音です。
退院後、再び過緊張が頻繁に起きるようになったので、2年後に再度手術が必要になりました。それ以降は、全く順調でした。
この泌尿器科の治療のありがたさは、退院後にあらためて感じることになりました。まず、収尿器は片方の足元に装着するだけなので、ズボンに隠れて人目には付きません。スーツで出かけても普段と何も変わらないから、どこへでも堂々と出かけることができました。また、何よりも介助者がついていなくても安心して過ごすことができるので、仕事に専念できました。授業や会議などが長引いても、少しも心配しませんでした。
そして、その間は、介助者である私にも貴重な自由時間が確保されたのです。「奥さんが付いているんだから、導尿してあげなさいよ」などという医師もいましたが、私たちにとっては最良で最高の治療をしていただいたと思っています。