年間約5000名の新患者が発生するという脊髄損傷。
ここでは、その受傷直後から患者およびその家族がどのような思いを抱きながら治療に臨むのかを、時系列に沿ってご紹介します(執筆:丸山柾子さん)。
それに呼応する形で、医療関係者によるアプローチ、そして当事者の障害受容はどのような経緯をたどるのか、事例の展開に応じて、専門家が詳細な解説を示していきます(執筆:松尾清美先生)。
ここでは、その受傷直後から患者およびその家族がどのような思いを抱きながら治療に臨むのかを、時系列に沿ってご紹介します(執筆:丸山柾子さん)。
それに呼応する形で、医療関係者によるアプローチ、そして当事者の障害受容はどのような経緯をたどるのか、事例の展開に応じて、専門家が詳細な解説を示していきます(執筆:松尾清美先生)。
第3回 「第1回 突然の電話」「第2回 病院に駆けつけて」の解説
脊髄損傷の治療や受傷後の生活などについて記述します。
脊髄損傷は、毎年約5000名が、交通事故や転倒、高所からの落下などの事故で受傷するのです。日本脊髄障害医学会によると、この発生率は毎年変わらないと発表しています。
脊髄は、頸髄・胸髄・腰髄に分かれており、完全損傷の場合は損傷部位以下の麻痺が生じます。したがって、頸髄を損傷した筆者の夫は、上肢も含む首から下が麻痺してしまったのです。首から足までの知覚がなくなり、運動機能も失ってしまった状態なのです。
受傷直後から反射が戻るまでの期間を「急性期」と呼び、その後を「回復期」、そして身体機能の変化があまりない「慢性期」というような言い方で、受傷後の身体状況をいうこともあります。排尿や排便機能は脊髄より下位にある仙髄領域の支配神経でコントロールされていますから、脊髄を損傷すると何らかの障害(神経因性膀胱障害)が現れます。ほとんどの場合、急性期ではバルーンカテーテルを尿道口から挿入されて尿が体外へ排出されます。これを「留置カテーテル」と呼び、膀胱や身体に負担がないように尿を体外へ出す安全な処置がされます。また、大便も同様に排泄する括約筋のコントロールをすることができなくなるので、定期的な排泄介助が看護師によって行われます。
急性期では、損傷部位より高位の脊髄まで炎症を起こしているので、麻痺部位はより高位まで麻痺していますが、ダメージを受けていない髄節レベルまで徐々に戻ってきます。この間、看護師は医師の指示の下で、損傷部位の回復助長や2次障害を防ぐための看護と患者や家族の精神的支援などが行われます。また、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)というリハビリテーションスタッフによって、関節が固まらないように、全身の関節可動域の維持や残存筋の筋力維持のためのベッドサイド訓練が受傷直後から開始されます。
脊髄損傷は、毎年約5000名が、交通事故や転倒、高所からの落下などの事故で受傷するのです。日本脊髄障害医学会によると、この発生率は毎年変わらないと発表しています。
脊髄は、頸髄・胸髄・腰髄に分かれており、完全損傷の場合は損傷部位以下の麻痺が生じます。したがって、頸髄を損傷した筆者の夫は、上肢も含む首から下が麻痺してしまったのです。首から足までの知覚がなくなり、運動機能も失ってしまった状態なのです。
受傷直後から反射が戻るまでの期間を「急性期」と呼び、その後を「回復期」、そして身体機能の変化があまりない「慢性期」というような言い方で、受傷後の身体状況をいうこともあります。排尿や排便機能は脊髄より下位にある仙髄領域の支配神経でコントロールされていますから、脊髄を損傷すると何らかの障害(神経因性膀胱障害)が現れます。ほとんどの場合、急性期ではバルーンカテーテルを尿道口から挿入されて尿が体外へ排出されます。これを「留置カテーテル」と呼び、膀胱や身体に負担がないように尿を体外へ出す安全な処置がされます。また、大便も同様に排泄する括約筋のコントロールをすることができなくなるので、定期的な排泄介助が看護師によって行われます。
急性期では、損傷部位より高位の脊髄まで炎症を起こしているので、麻痺部位はより高位まで麻痺していますが、ダメージを受けていない髄節レベルまで徐々に戻ってきます。この間、看護師は医師の指示の下で、損傷部位の回復助長や2次障害を防ぐための看護と患者や家族の精神的支援などが行われます。また、理学療法士(PT)、作業療法士(OT)というリハビリテーションスタッフによって、関節が固まらないように、全身の関節可動域の維持や残存筋の筋力維持のためのベッドサイド訓練が受傷直後から開始されます。
回復期では、受傷直後から喪失していた反射が戻ってきます。また、主治医や看護師、そしてPTやOT、ソーシャルワーカーなどのリハビリテーションスタッフのチームによる支援が順調に行けば、受けた障害の受容過程として、できなくなったことを考えることからくる失望感や喪失感から脱しはじめ、障害を受け入れて何とかこの身体で生活していこうという気持ちが現れ始めるころです。本人や家族は、リハビリテーション訓練を受けながら、心の中では退院後の生活や仕事、家庭での生活方法や職場での仕事の方法など、さまざまな解決すべき問題が現れてきます。以前の状況ではなく、頚髄損傷は現在の医学では完治させることのできない障害であり、四肢と体幹が麻痺している状況ですから、解決すべき問題が多いのは当然です。したがって、さまざまな専門職のチームによる支援が大切なのです。
果たして、丸山さんの支援チームはどうだったのでしょうか?
慢性期には、身体的な麻痺の部位や自分が動かせる部分と動かせない部位も明確になり、できることとできないことも明確になってきます。ただし、できないことは家族の支援を受けたり、福祉機器や住環境の改善などを行えば、できないことをできるように変化させることができるのです。全く歩けない方でも、身体機能に合った適切な車椅子や電動車椅子を使えば、できることが少しずつ増えていくのです。できることが増えていけば自信を持って生活していけるようになっていきます。
「何とかなる」という考え、これが大切なのです。しかし、さまざまな問題を解決しても、どうしても解決できない問題を抱えている場合も多くあります。退院を果たした丸山さんは、家族やリハビリテーションスタッフにどのような支援を受けたのでしょうか。
医療関係者によるアプローチ、そして当事者の障害受容はどのような経緯をたどるのか、事例の展開に応じて、今後、解説を示していく予定です。
果たして、丸山さんの支援チームはどうだったのでしょうか?
慢性期には、身体的な麻痺の部位や自分が動かせる部分と動かせない部位も明確になり、できることとできないことも明確になってきます。ただし、できないことは家族の支援を受けたり、福祉機器や住環境の改善などを行えば、できないことをできるように変化させることができるのです。全く歩けない方でも、身体機能に合った適切な車椅子や電動車椅子を使えば、できることが少しずつ増えていくのです。できることが増えていけば自信を持って生活していけるようになっていきます。
「何とかなる」という考え、これが大切なのです。しかし、さまざまな問題を解決しても、どうしても解決できない問題を抱えている場合も多くあります。退院を果たした丸山さんは、家族やリハビリテーションスタッフにどのような支援を受けたのでしょうか。
医療関係者によるアプローチ、そして当事者の障害受容はどのような経緯をたどるのか、事例の展開に応じて、今後、解説を示していく予定です。