年間約5000名の新患者が発生するという脊髄損傷。
ここでは、その受傷直後から患者およびその家族がどのような思いを抱きながら治療に臨むのかを、時系列に沿ってご紹介します(執筆:丸山柾子さん)。
それに呼応する形で、医療関係者によるアプローチ、そして当事者の障害受容はどのような経緯をたどるのか、事例の展開に応じて、専門家が詳細な解説を示していきます(執筆:松尾清美先生)。
ここでは、その受傷直後から患者およびその家族がどのような思いを抱きながら治療に臨むのかを、時系列に沿ってご紹介します(執筆:丸山柾子さん)。
それに呼応する形で、医療関係者によるアプローチ、そして当事者の障害受容はどのような経緯をたどるのか、事例の展開に応じて、専門家が詳細な解説を示していきます(執筆:松尾清美先生)。
第14回 あー、生きててよかったなー
翌日のOTでは、リクライニング式車いすのバックサポートを45度ぐらいに傾けて、それに乗って外を見ました。テニスコートを見渡せて、車いすテニスをしている人が見えました。当時、夫はテニスが大好きで、職場の同好会や夫婦で楽しんだり、時には試合に出てカップを持ち帰ってきたりするほどだったので、「お父さん、テニスだってできるね」などと話しかけながら見ているだけで二人して涙ぐんでいました。車いすテニスがあるなら、また一緒にプレイできるかもしれないと、私は本気で思っていました。
ベッド上で90度近くの姿勢でほぼ1時間座位がとれるようになったので、車いすに乗って病院内を散歩してみました。夫にとっては初めてみる病院の様子でしたが、ナースたちに会うと少し嬉しそうにしていました。そんな様子にさえ私はホッとしていましたが、夫は「初めて自分の姿を見た」と複雑な表情を見せました。ずっと本人にはその姿を見せたくないと当初の私は思っていたのですが、エレベーターの中には大きな鏡があったのでした。私のそのような考えでは何ごとも始まらなかったのでした。
術後2週間目の回診は、リハビリテーション科の先生でした。「目まいはしませんでしたか? もう、車いすに45分も乗っているんですか。これからきついでしょうが、何といってもリハビリです」と言われました。
幸いにも、車いすに乗っても目まいはほとんど起きなかったので、それはとても良いことだと主治医にも言われました。天気の良いある日、中庭に出て日光浴をしながらセラピストとの雑談の中で「あー、生きててよかったなー」と、夫が言ってくれました。実感のこもった言葉だったので、私はどれほど嬉しかったかわかりません。これも受傷後2週間目のことでした。
ベッド上で90度近くの姿勢でほぼ1時間座位がとれるようになったので、車いすに乗って病院内を散歩してみました。夫にとっては初めてみる病院の様子でしたが、ナースたちに会うと少し嬉しそうにしていました。そんな様子にさえ私はホッとしていましたが、夫は「初めて自分の姿を見た」と複雑な表情を見せました。ずっと本人にはその姿を見せたくないと当初の私は思っていたのですが、エレベーターの中には大きな鏡があったのでした。私のそのような考えでは何ごとも始まらなかったのでした。
術後2週間目の回診は、リハビリテーション科の先生でした。「目まいはしませんでしたか? もう、車いすに45分も乗っているんですか。これからきついでしょうが、何といってもリハビリです」と言われました。
幸いにも、車いすに乗っても目まいはほとんど起きなかったので、それはとても良いことだと主治医にも言われました。天気の良いある日、中庭に出て日光浴をしながらセラピストとの雑談の中で「あー、生きててよかったなー」と、夫が言ってくれました。実感のこもった言葉だったので、私はどれほど嬉しかったかわかりません。これも受傷後2週間目のことでした。