第24回 薩埵峠(4)
スイセン、旧跡、サクラエビ…
峠道を下り切り、由比宿の入り口にたたずむ一里塚の反対側に、旅籠か茶店のような古めかしい建物がありますが、これが「望嶽(ぼうがく)亭」です。江戸時代、「藤屋」という茶店の離れ座敷だった所で、ここから富士山の眺めが素晴らしかったため、この名が付けられたそうです。
実はこの建物は、幕臣の山岡鉄舟が「望嶽亭」に滞在中、官軍に追われ、主(あるじ)に部屋から地下に抜け、海岸を通じて避難させてもらった所でもあります。今でも、そのときのお礼にと、鉄舟から贈られた拳銃が展示されています。
ところで、由比宿も興津宿と同様、薩埵峠を控えていたため、32軒の旅籠がありましたが、その後、海岸線に沿って国道1号線や東名高速道路が開通して以来、街道を行き交う人々はすっかり途絶えました。しかし、そのおかげで倉沢や寺尾地区には旧名主の館の「小池邸」や脇本陣など、古い家並みが今も残っています。
また、1997(平成17)年には、本陣のあった一帯を「由比本陣公園」として整備され、「東海道広重美術館」も併設されたため、江戸の情緒満点です。
時間に余裕のある人は、JR蒲原(かんばら)駅寄りにある由比正雪(しょうせつ)の生家を訪ねるのもいいでしょう。
次回は滋賀県の近江富士をご紹介しましょう。