第33回 “震災疲れ”からも生じる「体重増加」
外出の機会が減り運動不足に
東日本大震災により、多くの方々の尊い命が失われたことに、深い哀悼の意をささげます。同時に被災された方々へ、心からお見舞い申し上げます。
前回、直接地震や津波、原子力発電所の事故の被害を受けていなくても、テレビなどの報道を通して体調を崩している方々が少なくないことを取り上げました。震災が起きてから約2カ月半が経ち、いろいろなことが平常な状態へと戻りつつあるなかで、私の勤めるクリニックでは最近「太ってきた」ことを訴える方が目立ちます。
患者さんの中には、震災直後の「外出する気になれない」とか「なんとなく不安で仕方がない」といった不調に比べれば、「太ってきた」ことは、そんなに大したことではないように思う方もいらっしゃるかもしれまえせんが、実は、この「太ってきた」という症状は、“震災疲れ”の一環としてとらえることができるのです。
「太ってきた」ことの原因には、2つのことが考えられます。
1つには、「外出する気になれない」ことから、家にいることが多くなり、運動不足になっていることが挙げられます。これまで通りの食事量を保ちながら消費するカロリーが少なくなれば、カロリーオーバーとなってしまいます。
前回、直接地震や津波、原子力発電所の事故の被害を受けていなくても、テレビなどの報道を通して体調を崩している方々が少なくないことを取り上げました。震災が起きてから約2カ月半が経ち、いろいろなことが平常な状態へと戻りつつあるなかで、私の勤めるクリニックでは最近「太ってきた」ことを訴える方が目立ちます。
患者さんの中には、震災直後の「外出する気になれない」とか「なんとなく不安で仕方がない」といった不調に比べれば、「太ってきた」ことは、そんなに大したことではないように思う方もいらっしゃるかもしれまえせんが、実は、この「太ってきた」という症状は、“震災疲れ”の一環としてとらえることができるのです。
「太ってきた」ことの原因には、2つのことが考えられます。
1つには、「外出する気になれない」ことから、家にいることが多くなり、運動不足になっていることが挙げられます。これまで通りの食事量を保ちながら消費するカロリーが少なくなれば、カロリーオーバーとなってしまいます。
甘いものは不安感を取り除く
もう1つの原因は、「なんとなく不安で仕方がない」という状態のなかで、「不安」を解消するために、自然と「甘いもの」に手がのびている可能性が高いことです。漢方では、「甘味は急迫を制す」といい、甘い食べ物は気分を落ち着かせる効果があると考えています。そのため、被災者の方々に強く共感したり、「放射能物質が怖い」などと不安に思っている場合、甘いものを食べると、一時的ではありますが、気持ちが安定することでしょう。
この2つの原因は、別のいい方をすれば、運動を通じて体内の不必要なものを排出する(OUT)ことが少ない状態であるとともに、体内に取り入れること(IN)自体も過剰になっているのだといえます。つまり「INが多すぎて、OUTが少なすぎる」状態です。
「太ってきた」という状態を放置していては、「不安」が解消されないまま、「太りすぎる」状態になりかねないので、「ちょっと洋服がきつくなった」という段階での養生が必要になります。
養生にあたっては、まず“震災疲れ”の一環であることを前提に、自律神経の働きをコントロールすることが大切です。
自律神経のうちの活動神経である交感神経と、リラックス神経の副交感神経の切り替えがうまくいかない状態にあるので、いつも通りの生活に戻れたなら、次の段階として、意識的にカラダを動かし汗をかくようにするといいでしょう。カロリーを消費することにもつながります。
この2つの原因は、別のいい方をすれば、運動を通じて体内の不必要なものを排出する(OUT)ことが少ない状態であるとともに、体内に取り入れること(IN)自体も過剰になっているのだといえます。つまり「INが多すぎて、OUTが少なすぎる」状態です。
「太ってきた」という状態を放置していては、「不安」が解消されないまま、「太りすぎる」状態になりかねないので、「ちょっと洋服がきつくなった」という段階での養生が必要になります。
養生にあたっては、まず“震災疲れ”の一環であることを前提に、自律神経の働きをコントロールすることが大切です。
自律神経のうちの活動神経である交感神経と、リラックス神経の副交感神経の切り替えがうまくいかない状態にあるので、いつも通りの生活に戻れたなら、次の段階として、意識的にカラダを動かし汗をかくようにするといいでしょう。カロリーを消費することにもつながります。
老化を早めないために
また漢方でいえば、自律神経の働きは、五臓の「肝」に関わっています。「肝」は西洋医学の肝臓という意味ではなく、血液を貯蔵して全身に栄養を与える役割や、自律神経や情緒のコントロールをしています。この「肝」が傷つくと、同じく五臓の「脾」に負担がかかります。「脾」は胃腸の調子を整え、栄養を吸収して体力を維持する役割を担っています。この「脾」を補うのが「甘味」の食材であることからも、“震災疲れ”の不安なときに甘いものを食べるという行為は理にかなっていることがわかります。
ただ、「過ぎたるは及ばざるがごとし」というように、「甘味」をとりすぎると、今度は五臓の「腎」が傷つきます。「腎」は、ホルモンバランスを整えたり、老化に関係しているので、甘いものを食べすぎると老化を早めることにもなります。
甘いもので一時的に気持ちが楽になって落ち着いたら、自律神経の働きをスムーズにするために、「肝」にいい食材――梅干しや酢、かぼす、レモン、すももなどが酸味のもの――を積極的にとるようにしてみてください。
次回は、6月16日(木)更新予定です。
甘いもので一時的に気持ちが楽になって落ち着いたら、自律神経の働きをスムーズにするために、「肝」にいい食材――梅干しや酢、かぼす、レモン、すももなどが酸味のもの――を積極的にとるようにしてみてください。
次回は、6月16日(木)更新予定です。
(2011年5月26日)
- 木村容子先生のお勤め先
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東京女子医科大学 東洋医学研究所
〒114-0014
東京都北区田端1-21-8 NSKビル3階
TEL:03(6864)0821(代表) TEL:03(6864)0825(予約)
http://www.twmu.ac.jp/IOM/
【木村先生の書籍が刊行されました】
タイトル:『女35歳からの「キレイ」と「元気」の漢方医学』(三笠書房)
定価:¥630(税込)