第32回 気の巡りをよくして“震災疲れ”を乗り切る
3.11後に不調な人が増加
東日本大震災により、多くの方々の尊い命が失われたことに、深い哀悼の意をささげます。同時に被災された方々へ、心からお見舞い申し上げます。
今回の未曾有の災害は、実際に被害を受けた方はもとより、テレビなどの報道で、その悲惨な現実を見聞きし、体調を崩している方々が少なくありません。
私の勤めるクリニックにも、「眠りが浅い」「夜も緊張して寝られない」「血圧が急に高くなった」「なんとなく不安で仕方がない」「外出する気になれない」――といった不調を訴えて来院される方が、例年に比べて多いです。
「例年と比べて」と書いたのには、実は理由があります。もともと4月に入ってからの時期は例年、そうした不調を覚える方々が多いのです。それは、季節的なことが原因なのですが、今年は、この時期に震災も加わったので、いままで不調がなかった方でさえも不調を感じたり、例年不調を覚える方は、いっそう不調が強くなっていると思われます。
今回の未曾有の災害は、実際に被害を受けた方はもとより、テレビなどの報道で、その悲惨な現実を見聞きし、体調を崩している方々が少なくありません。
私の勤めるクリニックにも、「眠りが浅い」「夜も緊張して寝られない」「血圧が急に高くなった」「なんとなく不安で仕方がない」「外出する気になれない」――といった不調を訴えて来院される方が、例年に比べて多いです。
「例年と比べて」と書いたのには、実は理由があります。もともと4月に入ってからの時期は例年、そうした不調を覚える方々が多いのです。それは、季節的なことが原因なのですが、今年は、この時期に震災も加わったので、いままで不調がなかった方でさえも不調を感じたり、例年不調を覚える方は、いっそう不調が強くなっていると思われます。
自律神経が乱れやすい春
漢方では、季節の変化も「不調の原因」としてとらえます。春の場合は、草木が芽吹き、動物も冬眠からあけて活発に動くエネルギーが満ち溢れている季節であることがかえって、そのエネルギーの強さについていけない人間にとっては、不調につながると考えられています。
春は、五臓でいえば、自律神経の働きをコントロールする「肝」(西洋医学の「肝臓」とは違います)と関係があり、その結果、自律神経の働きの乱れからくる不調を訴える人が多くなります。
たとえば、「よく眠れない」というのは、自律神経のうちの活動神経である交感神経と、リラックス神経の副交感神経の切り替えがうまくいかないことで起きる症状です。頭痛や肩こり、高血圧も「肝」の働きが乱れていることで生じます。
また、「肝」は「情緒活動をつかさどる」と言われ、メンタルなことにも影響します。そのため、「なんとなくやる気がおきない」とか「不安感が強い」といった不調も、「肝」に関係することがあります。
春は、五臓でいえば、自律神経の働きをコントロールする「肝」(西洋医学の「肝臓」とは違います)と関係があり、その結果、自律神経の働きの乱れからくる不調を訴える人が多くなります。
たとえば、「よく眠れない」というのは、自律神経のうちの活動神経である交感神経と、リラックス神経の副交感神経の切り替えがうまくいかないことで起きる症状です。頭痛や肩こり、高血圧も「肝」の働きが乱れていることで生じます。
また、「肝」は「情緒活動をつかさどる」と言われ、メンタルなことにも影響します。そのため、「なんとなくやる気がおきない」とか「不安感が強い」といった不調も、「肝」に関係することがあります。
震災報道の見すぎは「肝」を傷つける
震災に関して言えば、日々、テレビのニュースで取り上げられる映像をみたり、ネットや新聞などのいろいろな媒体で情報を得る行為は、常にカラダを緊張させていることになります。たとえば放射性物質の拡散といった情報自体が、ストレスになっているのです。
それはまさしく「肝」の働きを乱している行為で、いわば“震災疲れ”といえます。
特に、「肝」の働きが発達していない子どもさんにとっては、津波が町を飲みこんでいるといった、大人が見ても悲惨な映像は、「恐怖映画」を常時見ていることと同じといえ、強いストレスがかかることになります。実際、子どもさんが「急に乱暴になった」とか「夜泣きがひどくなった」といった変化を訴えるお母さんもいます。
子どもさんには、ショックを与えるようなテレビを見させないようにすべきです。震災後、それまでと比べて不調を感じている大人の場合も同様です。
それはまさしく「肝」の働きを乱している行為で、いわば“震災疲れ”といえます。
特に、「肝」の働きが発達していない子どもさんにとっては、津波が町を飲みこんでいるといった、大人が見ても悲惨な映像は、「恐怖映画」を常時見ていることと同じといえ、強いストレスがかかることになります。実際、子どもさんが「急に乱暴になった」とか「夜泣きがひどくなった」といった変化を訴えるお母さんもいます。
子どもさんには、ショックを与えるようなテレビを見させないようにすべきです。震災後、それまでと比べて不調を感じている大人の場合も同様です。
全身運動・汗・酸味の食材
今回のような悲惨な状況を目の当たりにして、被災者に強く共感したり、ショックを受けてしまうことは、人間としては当然のことであり、自然なことです。ですから、ご自分が不調になってしまったことは、実は健康なココロを持っていたからの結果であると、ご自分を肯定してあげてください。
“震災疲れ”の対処法としては、基本的には、春という季節からくる、「気・血・水」の「気」(エネルギー)の巡りが悪くなっていることによる不調と同様なので、「気の巡り」をよくするように意識します。
テレビやパソコンの前に座りっきりの場合は、ストレッチやラジオ体操でいいですから、カラダを動かしてみましょう。さらに活発に動くスポーツや入浴などで汗をかくことも効果的です。
食事では、柑橘類や香菜といった、香りのある食材を積極的に取り入れるといいでしょう。また、酸味は「肝」の働きを補うといわれています。梅干しや酢、かぼす、レモン、すももなどが酸味の代表的な食材です。まずはご自分自身をいたわり、“いつも通り”の日常生活を送るように心がけてみてください。
“震災疲れ”の対処法としては、基本的には、春という季節からくる、「気・血・水」の「気」(エネルギー)の巡りが悪くなっていることによる不調と同様なので、「気の巡り」をよくするように意識します。
テレビやパソコンの前に座りっきりの場合は、ストレッチやラジオ体操でいいですから、カラダを動かしてみましょう。さらに活発に動くスポーツや入浴などで汗をかくことも効果的です。
食事では、柑橘類や香菜といった、香りのある食材を積極的に取り入れるといいでしょう。また、酸味は「肝」の働きを補うといわれています。梅干しや酢、かぼす、レモン、すももなどが酸味の代表的な食材です。まずはご自分自身をいたわり、“いつも通り”の日常生活を送るように心がけてみてください。
(2011年4月21日)
- 木村容子先生のお勤め先
-
東京女子医科大学 東洋医学研究所
〒114-0014
東京都北区田端1-21-8 NSKビル3階
TEL:03(6864)0821(代表) TEL:03(6864)0825(予約)
http://www.twmu.ac.jp/IOM/
【木村先生の書籍が刊行されました】
タイトル:『女35歳からの「キレイ」と「元気」の漢方医学』(三笠書房)
定価:¥630(税込)