第６回　無理せず、規則正しい生活を

　今回は、もう１つの老化の流れの「実から虚」、十分に充ちた状態から枯渇した状態への変化に対する養生について説明します。

　50歳の半ばを過ぎると、食が細くなり、すぐに横になりたくなるといった、「気」（エネルギー）が「虚」の状態（気虚）になるとともに、肌のかさつきや性交痛がひどいといった、「血」（血液）も「虚」の状態（血虚）になっていきます。
　老化によって胃腸機能が衰えると、胃がもたれたり、食べる量が減ったり、消化が悪くなっていき、エネルギーを生み出すことができなくなります。これが、「気」が体内で不足している「虚」の状態です。
　また、エネルギーが枯渇してくると、カラダ全体の熱量が不足してきますから、体温も低くなります。つまり、もう１つの老化の流れである「陰」の状態が引き起こされるわけで、老化の２つの流れは、それぞれに関係しているのです。
　また、「血」が体内で不足すると、貧血のような状態となり、血液が全身に回りません。その結果、顔色が悪く、肌のツヤもなくなり、カラダ全体が乾燥してきます。膣についても例外ではありません。

　疲れやすい、すぐに眠くなるなど、「気虚」の場合については、まずは「腹八分目」を守り、普段から規則正しい生活習慣を身に付けることです。特に夜更かしは、それだけで血が消耗されてしまいます。なるべく夜12時までに寝るようにし、また寝不足も避けてください。

　50歳を過ぎると、たまに会合で夜更かしをしたり、逆にゴルフで早朝に起きることがあったとしても、エネルギーの補給や寝不足の状態の解消がなかなかスムーズにいきません。いったんペースが乱れて体調を崩すと、その悪い状態が長引きやすくなります。

　自分のカラダの声に耳を傾けて、くれぐれも無理をしないように心がけます。また、「血虚」によるカラダ全体の乾燥を、漢方では、潤いのある状態「潤」から、乾燥した状態「乾」になる、老化の特徴的な流れとしてとらえています。例えば、顔の皮膚についても、自ら脂分を出すことが難しい状態なので、食事で潤い補給をするとともに、化粧品の力を借りることも効果的なのが、この年代です。

　気虚および血虚のいずれにも効果があるといわれている食材としては、カボチャ、ニンジン、キクラゲ、ナツメ、松の実、カツオ、サバ、ニシン、ハモ、ブリ、ウナギ、ホタテ、卵などが挙げられます。

　また、特に気虚については、「胃腸にやさしく精のつくもの」が基本です。食材では、豆類（インゲンや枝豆など）、湯葉、豆腐、ブロッコリー、芋類（サツマイモ、里芋、ジャガイモ）、生姜、山芋、シイタケ、鯛、タラ、ヒラメ、白魚、ドジョウ、杏など。
　また、量自体が不足している血液を補うにあたっては、ブドウやプルーン、黒米、黒ゴマや黒豆などといった色が黒い食品や、キャベツ、ホウレンソウ、マツタケ、マグロなどがおすすめです。特に潤い不足には、コラーゲンが豊富に含まれている、フカヒレや牛スジのスープなどもいいでしょう。

　胃腸の働きが弱っているな、と感じた時は、「足三里」を押してみます。松尾芭蕉が全国行脚をした際に、このツボにお灸をすえていたと言われている、有名なツボです。

　次回は、12月10日（木）更新予定です。