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転倒防止の工夫は身体拘束?
軽度の認知症がある人が、自分の意思でベッドから降り、立ち上がろうとすると転倒してしまいます。転落防止のため、ベッドを撤去し、床にマットレスと布団を敷いて寝てもらうのは、身体拘束に該当しないのでしょうか。安全確保としても不十分な利用者の権利侵害
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私の考えでは、この利用者は自分の意思で車いすに移乗したり行動する権利があるため、布団から立ち上がれない状況をつくるのは、権利侵害だと感じます。
まず「自分の意思でベッドから降り、立ち上がろうとすると転倒してしまう」というのが、『ベッドからいったん床上に降りてしまい、床上から立ち上がろうとして転倒する』という意味であれば、「最初から床上の布団に寝てもらう」という対応にしても、結局そこから立ち上がろうとして転倒するのではないでしょうか。つまり、安全確保には不十分な気がします。 転倒予防のため、床上にマットや布団を敷く処遇は抑制ではないのかという疑問ですが、「限りなく抑制に近い」といえます。「床上での処遇を“起立動作の抑制のために”と発想している」のですから、これは抑制と考えられます。
抑制か否かは、形では決めきれず、あくまでその目的を問うべきです。安全確保のためとはいえ、その実現のために動作しにくい環境に処遇するのですから。実際、そのような処遇を行うと、さらに身体機能を低下させることが多いのではないでしょうか。
もちろん、「ほかに安全を確保するための手段・方法がない」ということで、かつ「緊急避難的に短期に」そのような処遇を行うことまで、絶対にダメということではありません。
しかし、質問のような状況にある本人の身体機能を補う環境に整えてみることは、可能ではないでしょうか。つまり、できる限り安全に起立移乗しやすい環境に整えてみることが必要でしょう。例えば、
やむを得ず「床上マット」での処遇を行う場合は「転倒が防止できてよかった」で終わらずに、そのような抑制的な処遇をしなくて済む他の方法を絶えず検討すると同時に、本人の心身機能が低下しないよう、ケア全体を考えることが最低条件です。
(回答者:大渕哲也)
まず「自分の意思でベッドから降り、立ち上がろうとすると転倒してしまう」というのが、『ベッドからいったん床上に降りてしまい、床上から立ち上がろうとして転倒する』という意味であれば、「最初から床上の布団に寝てもらう」という対応にしても、結局そこから立ち上がろうとして転倒するのではないでしょうか。つまり、安全確保には不十分な気がします。 転倒予防のため、床上にマットや布団を敷く処遇は抑制ではないのかという疑問ですが、「限りなく抑制に近い」といえます。「床上での処遇を“起立動作の抑制のために”と発想している」のですから、これは抑制と考えられます。
抑制か否かは、形では決めきれず、あくまでその目的を問うべきです。安全確保のためとはいえ、その実現のために動作しにくい環境に処遇するのですから。実際、そのような処遇を行うと、さらに身体機能を低下させることが多いのではないでしょうか。
もちろん、「ほかに安全を確保するための手段・方法がない」ということで、かつ「緊急避難的に短期に」そのような処遇を行うことまで、絶対にダメということではありません。
しかし、質問のような状況にある本人の身体機能を補う環境に整えてみることは、可能ではないでしょうか。つまり、できる限り安全に起立移乗しやすい環境に整えてみることが必要でしょう。例えば、
のような一般的な「ベッドとベッド用手すり」ではなく、
やむを得ず「床上マット」での処遇を行う場合は「転倒が防止できてよかった」で終わらずに、そのような抑制的な処遇をしなくて済む他の方法を絶えず検討すると同時に、本人の心身機能が低下しないよう、ケア全体を考えることが最低条件です。
(回答者:大渕哲也)