センサーマットは「抑制」ですか?
特養で介護士をしています。今度、センサーマットを導入することになり、職員に抑制について勉強会を開くことになりました。そこで、新人スタッフからベテランスタッフまで、分かりやすくうまく伝えるにはどんな点に注意をすればよいでしょうか。「抑制かどうか」、絶えず自問自答する姿勢を忘れずに!
●状況によって「抑制」かどうかを考える
そもそも「抑制」とは何でしょう? 厚生労働省は「身体拘束ゼロの手引き」の中で、具体的な抑制の例として「股ベルトや紐による縛りつけ」「ベッドサクの多用」「車いすテーブル装用による起立抑制」「安定剤等の過剰な投与」などを挙げていますが、『センサーマット』は入っていません。しかし、挙げられていないから抑制ではない、とは言い切れません。
抑制とは何か?という基本的な考え方として一番大切なのは、「その機器使用や状況設定の『目的』は何か」です。加えて、機器使用や状況設定により、利用者がどう感じるか?ストレスに感じていないか?です。この2点を考えて、自分たちの行っているケアが「抑制」とみなされるかどうかを絶えず自問自答していく姿勢が大切です。
どのような機器や状況であれ、利用者の行動を抑制しようという意図のもとで使われ、同時に利用者がそれを苦痛・ストレスに感じているのならば、それらはすべて「抑制」といえます。
ですから、同じ機器を使用していても、抑制になることもならないこともあり得ます。
●生活改善に役立てるプランの上で使用する
それでは次に、センサーマットについて考えてみましょう。センサーマットは確かに、危険回避に役立つ機器といえます。しかし「センサーが感知した」と、いつでもすぐに利用者を押さえつけ、問答無用にベッドに臥床するよう強いていれば、転倒・転落の危険は回避されるかもしれませんが、同じことが繰り返されるだけで、状況の改善にはつながりません。また、利用者本人のストレスも大きなものとなるでしょう。これはやはり『抑制』ではないでしょうか?
24時間のケア全体を通して、睡眠時はぐっすりと休息してもらえるようなケアを徹底している上で、それでも起こり得る「危険な離床企図」に対して、その頻度や時間帯の把握(アセスメント)のためにセンサーマットを使用し、さらに、センサーが感知した際には無条件に押さえつけるのではなく、利用者の行動欲求を満たすケアが立てられている……そのような状況の中でセンサーマットが使用されているのならば、今後の生活改善に結びつくものであると考えられ、「抑制ではない」と言ってもよいのではないでしょうか。
このように、「抑制」とは「形」の問題ではなく、あくまでも「認識と目的」の問題であり、「利用者にとってどうか?」という視点が大切です。同じ道具を使っていても、その運用方法や目的、使用条件によっては、「抑制」にも「自立支援」にもなり得ます。このような考え方を、スタッフの皆さんに理解してもらうことが大切ではないでしょうか。
こうした認識を共有できれば、「形式的に形を守る」ことが大切ではなく、「抑制廃止の取り組み」とは、自分たちが行う「ケア行為全般の技術・質の向上」そのものであることに気づくでしょう。(「身体拘束ゼロへの手引き」を読み込み、理解しておくことは、進行役として『必須』ですよ)。
(回答者:大渕哲也)
そもそも「抑制」とは何でしょう? 厚生労働省は「身体拘束ゼロの手引き」の中で、具体的な抑制の例として「股ベルトや紐による縛りつけ」「ベッドサクの多用」「車いすテーブル装用による起立抑制」「安定剤等の過剰な投与」などを挙げていますが、『センサーマット』は入っていません。しかし、挙げられていないから抑制ではない、とは言い切れません。
抑制とは何か?という基本的な考え方として一番大切なのは、「その機器使用や状況設定の『目的』は何か」です。加えて、機器使用や状況設定により、利用者がどう感じるか?ストレスに感じていないか?です。この2点を考えて、自分たちの行っているケアが「抑制」とみなされるかどうかを絶えず自問自答していく姿勢が大切です。
どのような機器や状況であれ、利用者の行動を抑制しようという意図のもとで使われ、同時に利用者がそれを苦痛・ストレスに感じているのならば、それらはすべて「抑制」といえます。
ですから、同じ機器を使用していても、抑制になることもならないこともあり得ます。
●生活改善に役立てるプランの上で使用する
それでは次に、センサーマットについて考えてみましょう。センサーマットは確かに、危険回避に役立つ機器といえます。しかし「センサーが感知した」と、いつでもすぐに利用者を押さえつけ、問答無用にベッドに臥床するよう強いていれば、転倒・転落の危険は回避されるかもしれませんが、同じことが繰り返されるだけで、状況の改善にはつながりません。また、利用者本人のストレスも大きなものとなるでしょう。これはやはり『抑制』ではないでしょうか?
24時間のケア全体を通して、睡眠時はぐっすりと休息してもらえるようなケアを徹底している上で、それでも起こり得る「危険な離床企図」に対して、その頻度や時間帯の把握(アセスメント)のためにセンサーマットを使用し、さらに、センサーが感知した際には無条件に押さえつけるのではなく、利用者の行動欲求を満たすケアが立てられている……そのような状況の中でセンサーマットが使用されているのならば、今後の生活改善に結びつくものであると考えられ、「抑制ではない」と言ってもよいのではないでしょうか。
このように、「抑制」とは「形」の問題ではなく、あくまでも「認識と目的」の問題であり、「利用者にとってどうか?」という視点が大切です。同じ道具を使っていても、その運用方法や目的、使用条件によっては、「抑制」にも「自立支援」にもなり得ます。このような考え方を、スタッフの皆さんに理解してもらうことが大切ではないでしょうか。
こうした認識を共有できれば、「形式的に形を守る」ことが大切ではなく、「抑制廃止の取り組み」とは、自分たちが行う「ケア行為全般の技術・質の向上」そのものであることに気づくでしょう。(「身体拘束ゼロへの手引き」を読み込み、理解しておくことは、進行役として『必須』ですよ)。
(回答者:大渕哲也)