移乗のときに靴は必要?
移乗の際、基本は靴を履かして移乗しますが、利用者によっては難しいときもあります。何が何でも靴を履くのは絶対条件なのでしょうか?社会的、機能的側面から、総合的に判断しましょう
靴を履くかどうか?を決める要因の第一は生活場面です。私たちが生活場面の中で「移乗」する時、絶対に靴を履いているでしょうか? 屋外では、裸足で自動車に乗り込むなんてことは普通ないですね。
では、自宅内でダイニングチェアに座る時には? スリッパのこともあれば、靴下だけのこともあるし、裸足のこともあるかもしれません。つまり、「靴を装用するかどうか?」というのは、まず第一に、その生活場面によって規定されます。
そういう意味では、想定される「生活場面」がいささか不明確ですが、たとえば大規模な特養や老健施設ならば建物は洋風で、床も冷たく固いものでしょう。そういう生活場面ならば、やはり靴を履くのが「基本」とはいえます。
和風の生活空間をもっている小規模多機能施設やグループホーム、あるいは居宅場面ならば、また違ってくるかもしれません。
要因の二点目として、靴には「下肢機能を補う」という機能があります。ご質問の主旨から、移乗動作および下肢機能に何らかの機能的な問題・障害がある方を対象としているように理解できます。
私は日ごろから、そういう虚弱な高齢者に履いていただく靴に対して、支援者は無頓着すぎる!と訴えています。たとえば、靴の踵の有無や高さによって、起立のしやすさや歩行状態、移乗のためのステップの行いやすさが大きく違ってくることが珍しくありません(機能面から靴を選ぶ要素は、踵の高さ以外にもいろいろとあります)。
そんなふうに「靴を履いていただければ、より安全確実に移乗できる」ということならば、なるべく履いていただいたほうがよいといえます。
ただしその際には前提として、『その方に合った良い靴が準備されている』ことが条件となります。まったく合っていない靴を履いた場合には、裸足の場合より危険なこともあります。
反対に、下肢機能に問題が少ない場合には、たとえ裸足であっても構わないといえます。
三点目として「見た目」の問題もあります。たとえば移乗動作が全介助で、二人介助にて行われ、本人の足はまったく床には着かないという場合であっても、裸足や靴下のままで車いすに座っているのを面会に来た家族がご覧になったら、どう感じるでしょうか?
これは一点目の「社会面」と共通する点もありますが、第三者からの視点ということで、別に挙げておきます。
以上の三つの面、つまり社会的な側面と機能的な側面から利用者ごとに、「履いていただいたほうが良いかどうか?」「どのような靴が良いか? 足袋やスリッパでも構わないか? あるいは裸足でもよいのか?」を検討することになると思います。
そして、本当は特に機能面からは靴が必要なのに、本人が履くことを嫌がるといった場合には、準備された靴が本当に本人に合った快適なものなのか? 合っていても嫌がるとしたら、それはなぜなのか? といったアセスメントの視点も必要でしょう。
(回答者:大渕哲也)
では、自宅内でダイニングチェアに座る時には? スリッパのこともあれば、靴下だけのこともあるし、裸足のこともあるかもしれません。つまり、「靴を装用するかどうか?」というのは、まず第一に、その生活場面によって規定されます。
そういう意味では、想定される「生活場面」がいささか不明確ですが、たとえば大規模な特養や老健施設ならば建物は洋風で、床も冷たく固いものでしょう。そういう生活場面ならば、やはり靴を履くのが「基本」とはいえます。
和風の生活空間をもっている小規模多機能施設やグループホーム、あるいは居宅場面ならば、また違ってくるかもしれません。
要因の二点目として、靴には「下肢機能を補う」という機能があります。ご質問の主旨から、移乗動作および下肢機能に何らかの機能的な問題・障害がある方を対象としているように理解できます。
私は日ごろから、そういう虚弱な高齢者に履いていただく靴に対して、支援者は無頓着すぎる!と訴えています。たとえば、靴の踵の有無や高さによって、起立のしやすさや歩行状態、移乗のためのステップの行いやすさが大きく違ってくることが珍しくありません(機能面から靴を選ぶ要素は、踵の高さ以外にもいろいろとあります)。
そんなふうに「靴を履いていただければ、より安全確実に移乗できる」ということならば、なるべく履いていただいたほうがよいといえます。
ただしその際には前提として、『その方に合った良い靴が準備されている』ことが条件となります。まったく合っていない靴を履いた場合には、裸足の場合より危険なこともあります。
反対に、下肢機能に問題が少ない場合には、たとえ裸足であっても構わないといえます。
三点目として「見た目」の問題もあります。たとえば移乗動作が全介助で、二人介助にて行われ、本人の足はまったく床には着かないという場合であっても、裸足や靴下のままで車いすに座っているのを面会に来た家族がご覧になったら、どう感じるでしょうか?
これは一点目の「社会面」と共通する点もありますが、第三者からの視点ということで、別に挙げておきます。
以上の三つの面、つまり社会的な側面と機能的な側面から利用者ごとに、「履いていただいたほうが良いかどうか?」「どのような靴が良いか? 足袋やスリッパでも構わないか? あるいは裸足でもよいのか?」を検討することになると思います。
そして、本当は特に機能面からは靴が必要なのに、本人が履くことを嫌がるといった場合には、準備された靴が本当に本人に合った快適なものなのか? 合っていても嫌がるとしたら、それはなぜなのか? といったアセスメントの視点も必要でしょう。
(回答者:大渕哲也)