利用者の皮膚の乾燥や赤みが気になるのですが……。適切な洗い方を教えてください。
特養に勤務している者です。入浴介助の時に利用者の上下肢の角質がうまくきれいに洗えません(落とせません)。一度、浴槽で皮膚を蒸らしてから、手でゴシゴシと擦っているのですが、擦れば擦るほど、乾燥したときにガサガサになってしまいます。顔も特におでこの辺りがガサガサになります。何か良い方法はありますか?
また、そ頸部や、脇、手のひらなどのただれは、どのように洗えばきれいに清潔になるでしょうか? 石鹸で泡を十分に立てて、自分の手のひらで工夫してやさしく擦って、泡で洗うように心がけているのですが、擦りすぎて、いつも赤くしてしまいます。
どうか、簡単に適切にできる良い方法があれば教えてください。
まず、「なぜ、そうなってしまうのか」を確認しましょう。
利用者の皮膚のカサカサ感や角質は、毎日ケアする介護職にとって、気になるものですね。では、何故そうなるのか、どうしたら良いのかを確認してみましょう。
まずは皮膚の一般的な構造や機能について確認してみます。皮膚はからだ全体を覆い、外界の敵から人体を守るバリアの役割を持っています。皮膚は、表面から、表皮・真皮・皮下組織から成り立っており、皮膚のphは弱酸性に保たれていて、皮膚の保湿機能は皮脂腺からの皮脂や汗腺からの汗により保たれています。表皮は新陳代謝が繰り返される部位であり、古くなった角質層は平均28日間で垢となって剥がれ落ちるようになっています。
私たちが皮膚を清潔に保とうとするのは、外部から付く汚れや、皮膚表面から出る汗・皮脂・垢、尿や便が付着した場合に、それを取り除くためです。高齢者の場合、加齢に伴い発汗の低下や皮脂分泌機能が低下するとされています。そのため皮膚の「乾燥」が進む傾向にあります。また、陰部や脇の下には、大汗腺とされるアポクリン腺が開口しているので、臭いのある汗が出てそれが体臭の原因ともなります。汗腺は手のひらに多く分布しているほか、足底、額も多い部分です。このことから汚れも気になる部分になります。
さて、以上の情報を踏まえて、ご質問にある「乾燥が気になる」「赤くなる」ということについて考えてみます。まず、ゴシゴシ洗うことは皮膚のバリア機能を無理に落とすことにつながりますので、洗い方を再考してみてください。ご質問の後にある洗い方、「石鹸を十分泡立て、タオルを使用せず手のひらでやさしく洗う」のは、とても良い方法です。この方法で皮膚表面の汚れは十分落とせます。ただし、洗った後に「カサカサの状態になる」「皮膚が赤くなる」ということは皮膚の出している危険シグナルと考えられます。「汚れを落とそう落とそうと思い」洗いすぎてはいませんか。皮膚表面のphに合った石鹸を使用していますか。また、洗った後の保湿は十分に行われていますか。利用者の生活環境も一度アセスメントして、皮膚が乾燥しやすい状態にないかも確認してみてください。
これから乾燥する時期に入りますので、環境に加えケアで皮膚を乾燥させてしまうことは、皮膚の状態を悪化させ、かゆみの原因にもなります。高齢者の肘、膝、踵は厚くなっていて、どうしてもきれいにしなくてはと思いがちな部分でもありますね。蒸らして洗うことも良いことです。「洗う」「保湿する」……。これを繰り返すことで無理なくきれいにしていけると思います。
焦る必要はありません。どうしても気になる、悪化するような場合には医療職との連携を忘れてはいけませんね。病的な場合が隠れていることも考えられます。
(回答者:東京福祉専門学校 白井孝子)
まずは皮膚の一般的な構造や機能について確認してみます。皮膚はからだ全体を覆い、外界の敵から人体を守るバリアの役割を持っています。皮膚は、表面から、表皮・真皮・皮下組織から成り立っており、皮膚のphは弱酸性に保たれていて、皮膚の保湿機能は皮脂腺からの皮脂や汗腺からの汗により保たれています。表皮は新陳代謝が繰り返される部位であり、古くなった角質層は平均28日間で垢となって剥がれ落ちるようになっています。
私たちが皮膚を清潔に保とうとするのは、外部から付く汚れや、皮膚表面から出る汗・皮脂・垢、尿や便が付着した場合に、それを取り除くためです。高齢者の場合、加齢に伴い発汗の低下や皮脂分泌機能が低下するとされています。そのため皮膚の「乾燥」が進む傾向にあります。また、陰部や脇の下には、大汗腺とされるアポクリン腺が開口しているので、臭いのある汗が出てそれが体臭の原因ともなります。汗腺は手のひらに多く分布しているほか、足底、額も多い部分です。このことから汚れも気になる部分になります。
さて、以上の情報を踏まえて、ご質問にある「乾燥が気になる」「赤くなる」ということについて考えてみます。まず、ゴシゴシ洗うことは皮膚のバリア機能を無理に落とすことにつながりますので、洗い方を再考してみてください。ご質問の後にある洗い方、「石鹸を十分泡立て、タオルを使用せず手のひらでやさしく洗う」のは、とても良い方法です。この方法で皮膚表面の汚れは十分落とせます。ただし、洗った後に「カサカサの状態になる」「皮膚が赤くなる」ということは皮膚の出している危険シグナルと考えられます。「汚れを落とそう落とそうと思い」洗いすぎてはいませんか。皮膚表面のphに合った石鹸を使用していますか。また、洗った後の保湿は十分に行われていますか。利用者の生活環境も一度アセスメントして、皮膚が乾燥しやすい状態にないかも確認してみてください。
これから乾燥する時期に入りますので、環境に加えケアで皮膚を乾燥させてしまうことは、皮膚の状態を悪化させ、かゆみの原因にもなります。高齢者の肘、膝、踵は厚くなっていて、どうしてもきれいにしなくてはと思いがちな部分でもありますね。蒸らして洗うことも良いことです。「洗う」「保湿する」……。これを繰り返すことで無理なくきれいにしていけると思います。
焦る必要はありません。どうしても気になる、悪化するような場合には医療職との連携を忘れてはいけませんね。病的な場合が隠れていることも考えられます。
(回答者:東京福祉専門学校 白井孝子)