国家試験を突破して精神保健福祉士の資格を取得した合格者の皆さんに、合格までの道のりをご紹介いただきます。効果的な勉強法や忙しいなかでの時間のつくり方、実際に資格を手にして思うことなど、受験者が参考にしたい話が満載です。
第32回 大野亜彌(おおの・あみ)さん
平成24年度試験合格
プロフィール
受験の動機
精神保健福祉士という資格があることを知った当時は、興味はありましたが新しい世界に飛び込むまでの勇気が出ずに一度見送りました。しかし、学童期の子どもとじっくり向き合える仕事をと、新たに家庭教師として働き始めると、家庭環境の複雑な子や対人関係が苦手な子を任されることが多く、そうした子どもたちとのかかわりには専門的な知識が必要とより思うようになりました。支援する立場としてかかわれるようになりたいとも考えるようになりました。それがきっかけです。
妊娠でスタートが2カ月遅れ
受験に向けて計画を立てたのが国家試験前年の8月末頃。7月まで養成課程のレポートに追われ、8月は仕事(家庭教師)の繁忙期だったため、自分に甘い私は、8月中は勉強をお休みに。ところが、9月に入りさあやるぞ!と思っていたところに妊娠が判明。その直後から激しい悪阻に襲われ、仕事も減らして何とかこなすという状況に。11月に入るとようやく悪阻が落ち着き、勉強も始められました。
当初の計画から2カ月遅れのスタート。しかももう11月……。とても焦っていました。一度過去問に目を通してあり、相当勉強しないとならないことを自覚していただけに受験を次年度に延期することも頭をよぎる始末。ただ、すでに受験料を支払い、問題集も購入していたので、貧乏性の私は「全部で2万円強。このまま終わるのはもったいない」となんとか踏みとどまりました。
当初の計画から2カ月遅れのスタート。しかももう11月……。とても焦っていました。一度過去問に目を通してあり、相当勉強しないとならないことを自覚していただけに受験を次年度に延期することも頭をよぎる始末。ただ、すでに受験料を支払い、問題集も購入していたので、貧乏性の私は「全部で2万円強。このまま終わるのはもったいない」となんとか踏みとどまりました。
計画を見直す
ここでもう一度計画を練り直し。三段構えで考えました。
1)基本事項の確認と暗記(11月〜12月上旬)
2)過去問(5年分)を解く→知識の補強(12月下旬〜1月上旬)
3)模擬問題を解く→知識の補強(1月下旬)
一番目に時間をかけすぎのように見えるかもしれませんが、現場での経験があるわけでも福祉専門の大学出身でもない私にとって、これが特に大切と考えていました。国試突破はもちろん、現場に出るためにも必要だと考え、思い切って時間を割くことに。教材は定番の受験ワークブック(『精神保健福祉士受験ワークブック(専門科目編)』『社会福祉士・精神保健福祉士受験ワークブック(共通科目編)』)。分量と受験までの日数を照らし合わせて、1日あたりの分量を割り出しました。かなりの分量でしたが、今年合格するんだと心に決めて取り掛かりました。
1)基本事項の確認と暗記(11月〜12月上旬)
2)過去問(5年分)を解く→知識の補強(12月下旬〜1月上旬)
3)模擬問題を解く→知識の補強(1月下旬)
一番目に時間をかけすぎのように見えるかもしれませんが、現場での経験があるわけでも福祉専門の大学出身でもない私にとって、これが特に大切と考えていました。国試突破はもちろん、現場に出るためにも必要だと考え、思い切って時間を割くことに。教材は定番の受験ワークブック(『精神保健福祉士受験ワークブック(専門科目編)』『社会福祉士・精神保健福祉士受験ワークブック(共通科目編)』)。分量と受験までの日数を照らし合わせて、1日あたりの分量を割り出しました。かなりの分量でしたが、今年合格するんだと心に決めて取り掛かりました。
ワークブックの学習の手順
ワークブックを使った具体的な勉強の手順は、以下のとおりです。
この方法は、家庭教師として自分の生徒にも勧めていたやり方です。くどくて時間がかかるやり方に感じるかもしれませんが、実は効率がいいんです。記憶はどれだけ覚えようとしたかよりも、どれだけ思い出したかに左右されます。要するにアウトプットにかかっているのですが、そのアウトプットからアウトプットまでの期間があまり長くなってしまうと思い出しづらくなってしまうので、定期的に問題演習することが大切。私の場合はこのやり方でどんどん基本事項は身につけられました。
1) | 「押さえておこう!重要項目」をその日のノルマ分、一通り目を通す |
2) | 赤字を赤シートで隠し、覚えられているか確認(覚えられるまで繰り返す) |
3) | 「実力チェック!一問一答」を解く →間違えたところに印をつけ、正答するまで繰り返し解く |
4) | 翌日、「実力チェック!一問一答」をもう一度全問解 →間違えたところに印をつけ、正答するまで繰り返し解く |
5) | 4)の1回目で間違えたところのみ解く |
6) | 3章分終わったところで、再度「実力チェック!一問一答」を全問解く |
7) | ワークブック一冊分終わったら全章の「実力チェック!一問一答」を全問解く |
この方法は、家庭教師として自分の生徒にも勧めていたやり方です。くどくて時間がかかるやり方に感じるかもしれませんが、実は効率がいいんです。記憶はどれだけ覚えようとしたかよりも、どれだけ思い出したかに左右されます。要するにアウトプットにかかっているのですが、そのアウトプットからアウトプットまでの期間があまり長くなってしまうと思い出しづらくなってしまうので、定期的に問題演習することが大切。私の場合はこのやり方でどんどん基本事項は身につけられました。
過去問の学習の手順
過去問を使った勉強の手順は、以下のとおりです。
実際にやってみると、(3)にかなりの時間がかかりました。そのため、計画よりも遅れがちにはなりましたが、必要なことだったので焦らずに進めていきました。また、(4)では、根拠を持って回答できているかを常に意識しました。正答できていても勘に頼っているのでは意味がありません。自信を持って回答できるよう、(3)に時間をかけました。そのかいあって、過去問の3年度目になると6割くらいは正答できるようになっていました。だんだん欲が出てきた私は7割を目指すことに。その目標も、1年度だけですが、達成できました。((3)の手順は(2)と同様です。)
1) | 模試形式で時間を計って解く(自信のないものには「?」をつけておく) |
2) | 答え合わせをし、さらに間違えたものに印をつける |
3) | 解説を熟読し、知らない事項を暗記する |
4) | 1)・2)で印のついたものを正答するまで繰り返し解く |
5) | 翌日に4)をもう一度解く(正答するまで) |
実際にやってみると、(3)にかなりの時間がかかりました。そのため、計画よりも遅れがちにはなりましたが、必要なことだったので焦らずに進めていきました。また、(4)では、根拠を持って回答できているかを常に意識しました。正答できていても勘に頼っているのでは意味がありません。自信を持って回答できるよう、(3)に時間をかけました。そのかいあって、過去問の3年度目になると6割くらいは正答できるようになっていました。だんだん欲が出てきた私は7割を目指すことに。その目標も、1年度だけですが、達成できました。((3)の手順は(2)と同様です。)
不安点に対策を講じる
ここまでくると、私にも自信がついてきました。でも、本番当日に心配なことが2つありました。1つは時間配分です。共通科目では毎回時間ぎりぎり。見直しに使える時間がかなり少なかったのです。そこで、問題を解いているときに自信のない問題には「?」を付けておき、そこだけ立ち戻ることにしました。もう1つは尿意との戦いです。この頃、私は妊娠7カ月でした。妊娠経験のある方なら分かるかと思いますが、この頃になると胎児に膀胱が圧迫され、頻尿になることが多いそうです。私もその類でした。試験時間の140分を耐え切れるか……。途中でトイレに行ってしまえばその分、時間が削られてしまうし……。結局、試験前に水分を控える対策をとることにしました。
新カリと二択問題に苦戦
さあ、試験本番!十分に勉強できたとは言い難いけれど、限られた時間の中でやれることはやったかなと感じて本番を迎えました。私が受験した平成24年度は、専門科目が新カリキュラムになったことや問題の出題形式に二択問題が採用されたことなどもあり難しかったと評判ですが、実際に難しかったです。新カリキュラムは覚悟していましたが、出題形式の変更は知らず、かなり動揺しました。試験後の手ごたえは、7割どころか6割すら怪しい……といった具合。合格基準によってはダメかもしれないと思いました。でも、とにかく今年の受験は終わり! しばらくは家庭教師をのんびりやりつつマタニティライフを満喫しよう! とまた甘いことを考えていたのを覚えています。
数日後、スクーリング仲間から「自己採点、どうだった?」と聞かれ、とても重い気持ちで自己採点しました。自覚していましたが、これまでで最も悪い正答率でした。でもなんとか6割は達成。「本番に弱いなあ……」と肩を落としましたが、後日、合格基準は過去最低なのを確認してホッとしました。
数日後、スクーリング仲間から「自己採点、どうだった?」と聞かれ、とても重い気持ちで自己採点しました。自覚していましたが、これまでで最も悪い正答率でした。でもなんとか6割は達成。「本番に弱いなあ……」と肩を落としましたが、後日、合格基準は過去最低なのを確認してホッとしました。
合格の秘訣
先にも書きましたが、一定の期間でアウトプットを繰り返すことが効果的でした。「急がば回れ」で、一つひとつ確実に定着させていき、最終的には効率もよかったと思います。
また、大学の直前対策講座に参加した際に、臨床心理士の方から「記憶を定着させるには、夜寝る前にやったことを朝もう一度やると効率的」と聞き、実践していました。苦手な歴史や人名を暗記する時に意識してやっていましたが、試してみる価値はあると思います。
暗記の方法はいろいろありますが、私は覚えたいことを余った紙やノートに書きなぐっていました。理解する段階ではまとめることも必要ですが、覚えるときにはとにかくアウトプット。そのために繰り返し書き、書くのに疲れたら復唱していました。
直前対策講座は、専門の先生方がその年の狙い目を教えてくださり、とても役に立ちました。そのときに配られる資料集は試験前日や当日にざっと見直すのにもよかったです。
また、スクーリングで知り合った仲間と顔を合わせる機会にもなり、ふだん一人で勉強している私にとっては、いい刺激になりました。ただ、このような講座に参加するときには、自分にとって必要なものだけを取捨選択して受けられたほうがいいと思います。得意な科目であれば敢えて受講せず、その時間を他科目の勉強に回したほうが効率的です。最初の何分間か受講して必要かどうかを判断してもいいと思います。
また、長い受験勉強期間中、気分転換も必要です。私の場合は仕事と家事が気分転換の時間でした。集中型の性格なので、できれば勉強だけをしていたかったのですが、仕事と家事は毎日いやおうなしにやってきます。初めの頃は疎ましくも感じていましたが、それらを気分転換の時間ととらえることで、気持ちが楽になりました。気分のメリハリも付き、能率も上がったと思います。
気の持ちようでおすすめしたいことがもう一つ。それは自分を誉めること。「計画よりすこし早く進められた!」とか「妊婦なのに家事も仕事も勉強もしている自分はけっこうカッコイイんじゃないか」などと、ときどき自分をおだててモチベーションを維持していました。そうするともっと誉められたくなって勉強に気持ちが入るという、好循環ができました。周りに誉めてくれる人がいる方には不要でしょうが、そうでないときには自分で自分を誉めることをおすすめします(笑)。
また、大学の直前対策講座に参加した際に、臨床心理士の方から「記憶を定着させるには、夜寝る前にやったことを朝もう一度やると効率的」と聞き、実践していました。苦手な歴史や人名を暗記する時に意識してやっていましたが、試してみる価値はあると思います。
暗記の方法はいろいろありますが、私は覚えたいことを余った紙やノートに書きなぐっていました。理解する段階ではまとめることも必要ですが、覚えるときにはとにかくアウトプット。そのために繰り返し書き、書くのに疲れたら復唱していました。
直前対策講座は、専門の先生方がその年の狙い目を教えてくださり、とても役に立ちました。そのときに配られる資料集は試験前日や当日にざっと見直すのにもよかったです。
また、スクーリングで知り合った仲間と顔を合わせる機会にもなり、ふだん一人で勉強している私にとっては、いい刺激になりました。ただ、このような講座に参加するときには、自分にとって必要なものだけを取捨選択して受けられたほうがいいと思います。得意な科目であれば敢えて受講せず、その時間を他科目の勉強に回したほうが効率的です。最初の何分間か受講して必要かどうかを判断してもいいと思います。
また、長い受験勉強期間中、気分転換も必要です。私の場合は仕事と家事が気分転換の時間でした。集中型の性格なので、できれば勉強だけをしていたかったのですが、仕事と家事は毎日いやおうなしにやってきます。初めの頃は疎ましくも感じていましたが、それらを気分転換の時間ととらえることで、気持ちが楽になりました。気分のメリハリも付き、能率も上がったと思います。
気の持ちようでおすすめしたいことがもう一つ。それは自分を誉めること。「計画よりすこし早く進められた!」とか「妊婦なのに家事も仕事も勉強もしている自分はけっこうカッコイイんじゃないか」などと、ときどき自分をおだててモチベーションを維持していました。そうするともっと誉められたくなって勉強に気持ちが入るという、好循環ができました。周りに誉めてくれる人がいる方には不要でしょうが、そうでないときには自分で自分を誉めることをおすすめします(笑)。
ゆくゆくはスクールソーシャルワーカーに
なんとか合格できてホッとしたのも束の間、合格発表から2カ月後には出産し、一児の母となってしまいました。育児は想像以上に大変ですがおもしろく、もうしばらく子育てに専念したいというのが正直なところです。もう少し子どもの手が離れたら現場に出て経験を積み、ゆくゆくはスクールソーシャルワーカーとして学校に戻りたいと考えています。
今、自分の学生時代を振り返ってみると、小学・中学・高校のなかにも精神障害を持っていると思われる子たちがいました(ご両親のなかにも)。学校は誰もが一度は通うところですから、早期発見に好都合な場所です。その学校が身近な相談機関としての役割を果たせば、早期治療につながると思います。私自身も、精神保健福祉士としてその一端を担うことができたら嬉しいです。その日に向けて、まずは身近な社会資源をもっと知ること、自分が社会資源となれるよう経験を積むことから始めたいと思っています。
何度も遠回りしましたが、今度こそ自分の進む道を見出せた気がしています。今の気持ちを持ち続けられるよう、子育てしながらもできることはやっていこうと思います。
今、自分の学生時代を振り返ってみると、小学・中学・高校のなかにも精神障害を持っていると思われる子たちがいました(ご両親のなかにも)。学校は誰もが一度は通うところですから、早期発見に好都合な場所です。その学校が身近な相談機関としての役割を果たせば、早期治療につながると思います。私自身も、精神保健福祉士としてその一端を担うことができたら嬉しいです。その日に向けて、まずは身近な社会資源をもっと知ること、自分が社会資源となれるよう経験を積むことから始めたいと思っています。
何度も遠回りしましたが、今度こそ自分の進む道を見出せた気がしています。今の気持ちを持ち続けられるよう、子育てしながらもできることはやっていこうと思います。
今年受験された方、これから受験される方へ
今年の受験生の皆さま、おつかれさまでした。受験直後で一息つけている頃と思います。ここは一つ、思いっきり羽を伸ばしてください。
これから受験される皆さま、勉強は大変ですが、得るものは大きいです。私は単に資格を取れたというだけでなく、自分の見聞を広めることにもつながりました。さらに、三十路でもやればできる!という自信にもなりました。このページをご覧になっている方のなかには、働きながら受験される方も少なくないと思います。ぜひ最後まで粘って、合格を勝ち取ってください!
これから受験される皆さま、勉強は大変ですが、得るものは大きいです。私は単に資格を取れたというだけでなく、自分の見聞を広めることにもつながりました。さらに、三十路でもやればできる!という自信にもなりました。このページをご覧になっている方のなかには、働きながら受験される方も少なくないと思います。ぜひ最後まで粘って、合格を勝ち取ってください!