国家試験を突破して精神保健福祉士の資格を取得した合格者の皆さんに、合格までの道のりをご紹介いただきます。効果的な勉強法や忙しいなかでの時間のつくり方、実際に資格を手にして思うことなど、受験者が参考にしたい話が満載です。
第22回 政野信基(まさの・のぶき)さん
—プロフィール—
追手門学院大学心理学部卒。兵庫県伊丹市出身。高校時代にスクールカウンセラーに興味をもったのが「相談」を職に選んだもともとの発端。人の話を聴くのが好きで、「しんどい人がいたら、話を聴いてあげて、なにかしら役に立てるようなことができたら」と思っていたという。大学は心理学部に進み、臨床心理士を目指すというスタート地点。目標はぶれることなく、進級を重ねるが、そのなかにはもう一つ、惹かれるテーマがあった。「精神障害」だった。精神医学で“病理”に興味をもち、精神保健の歴史から“人権”を正面から考えるようになった。心理学を究めるべく大学院の試験クリアは叶わなかったが、切り替えは早く、卒業後すぐに大阪保健福祉専門学校(大阪市淀川区)に入学。「精神保健福祉士」を新たな目標に立てた。翌年、見事試験に合格し、同年(平成24年)4月より地域活動支援センターちのくらぶ(大阪府八尾市)でソーシャルワーカーとして勤務している。好きなものは、ドライブ(特に高速を走るのが)と白いご飯。苦手なのは、人に積極的に働きかけること。相談職なのに?と尋ねると、「自分からいくのは案外苦手なんです」とためらいなくすがすがしい。「魅力的な仕事です」と語り口も軽快な24歳。
受験の動機
最初はカウンセラー志望で、心理学の路線にいました。精神保健福祉士を目指すことになった動機は、プロフィールにも紹介いただいているようにいくつかあるのですが、大きかったのは、大学の演習の授業でした。「もし、スクールカウンセラーだったら」という設定でロールプレイをしたときに、ソーシャルワーカーという人が出てきて、この人が“環境調整をする”とありました。チーム員の連携や資源面のコーディネートを担っていて、こういう専門職がいるんだ、おもしろそうだなと思ったのが強い動機になりました。
順調に大学院に進めていたら、また違った道を歩んでいたのかもしれません。でも、精神保健福祉士を目指すとなったら、もう迷いはありませんでした。受験勉強は結構大変でした。勉強そのものがというより、それ以外の忙しさから時間をつくりづらかったのが要因です。そのあたりもあわせて、私の経験をお話しいたします。
順調に大学院に進めていたら、また違った道を歩んでいたのかもしれません。でも、精神保健福祉士を目指すとなったら、もう迷いはありませんでした。受験勉強は結構大変でした。勉強そのものがというより、それ以外の忙しさから時間をつくりづらかったのが要因です。そのあたりもあわせて、私の経験をお話しいたします。
忙しくも楽しいアルバイトの掛け持ち
3月に大学を卒業して、専門学校の願書受付期限の3日前に書類を提出し、4月に入学。精神保健福祉士を目指す心積もりをしてからその勉強を開始するまでの準備期間がないに等しく、気持ちも体もあわただしいスタートとなりました。
専門学校は精神保健福祉科の夜間1年制で、夕方18時から21時が授業の基本時間帯でした。これ以外の時間のゆとりによって、学習計画もおのずと決まってくるのでしょう。私の場合は、大学での専攻とは異なることからも受験のベースとなる知識は乏しく、共通科目と専門科目の基礎的な知識を早めに習得していくことが必要でした。でも、実際にはそうはなりませんでした。
理由はアルバイトです。大学の1年生から続けていたパン屋のアルバイトは、早朝5時からの勤務が週3回。もう一つは、専門学校がアルバイトの求人を出している各種の事業所勤務です。学校の卒業生が就職した先に、現場の実践を経験することも兼ねて学校が斡旋してくれるのですが、これに嵌まりました。頻度は週5回。楽しかったので、心情としてはうれしい悲鳴なのですが。
私が行ったのは、就労移行支援と就労継続支援B型が一体となった事業所でした。事業所でメンバーさんとかかわったり一緒に作業をしたりするのは楽しく、地域での実際の仕事もこのなかでイメージしていきました。事業所を案内する活動にも取り組みました。大阪府内の精神科クリニックと連絡を取り合って、病院から退院できそうな方や通院されている方で、就労の可能性のある方がいたら紹介いただくというものです。アポイントをとって訪問をしてご案内してという工程は楽しく、受験にもプラスなんだからと、活動に勤しんでいました。
専門学校は精神保健福祉科の夜間1年制で、夕方18時から21時が授業の基本時間帯でした。これ以外の時間のゆとりによって、学習計画もおのずと決まってくるのでしょう。私の場合は、大学での専攻とは異なることからも受験のベースとなる知識は乏しく、共通科目と専門科目の基礎的な知識を早めに習得していくことが必要でした。でも、実際にはそうはなりませんでした。
理由はアルバイトです。大学の1年生から続けていたパン屋のアルバイトは、早朝5時からの勤務が週3回。もう一つは、専門学校がアルバイトの求人を出している各種の事業所勤務です。学校の卒業生が就職した先に、現場の実践を経験することも兼ねて学校が斡旋してくれるのですが、これに嵌まりました。頻度は週5回。楽しかったので、心情としてはうれしい悲鳴なのですが。
私が行ったのは、就労移行支援と就労継続支援B型が一体となった事業所でした。事業所でメンバーさんとかかわったり一緒に作業をしたりするのは楽しく、地域での実際の仕事もこのなかでイメージしていきました。事業所を案内する活動にも取り組みました。大阪府内の精神科クリニックと連絡を取り合って、病院から退院できそうな方や通院されている方で、就労の可能性のある方がいたら紹介いただくというものです。アポイントをとって訪問をしてご案内してという工程は楽しく、受験にもプラスなんだからと、活動に勤しんでいました。
本格始動は12月?
12月に勉強を始めたという意味ではなく、でも基本的な知識を習得する勉強となると、やはりこの時期だったのかなと振り返ってみて思います。
学校の授業とは別の、いわゆる受験対策としてのスタートは、「過去問を解くこと」でした。時期は5月、新しい年度版の本が各出版社から出てくる前です。試験センターはその年度の合格発表を行った後、過去の国家試験問題を掲載します。それを、なんの基本知識もない状態でいきなり解きました。
解けるとは初めから思っていません。自分がこれから1年間のなかで何をしなくてはいけないのかを正確に見極めるためには、これくらい極端なことをしたほうがわかりやすいと思ったのです。結果はボロボロでしたが、たとえば、それでも心理学はそれなりにわかるようだとか(私の場合、これが散々だったらショックでした)、現代社会と福祉は人名と出来事がつながっていないと話にならないとか、社会保障はえらく難しいなとか、傾向的なことが見えてきます。これが目的でした。
その次に取り組んだのが、中央法規の国試ナビ(『見て覚える!社会福祉士国試ナビ』)をざっと眺めることでした。時期は8月。間隔がずいぶん空いてしまっていますが、学校の授業はまじめに受けていましたし、同じく中央法規のワークブック(『精神保健福祉士受験ワークブック』)を教材として手元に用意することはしていました。単純に、バイトが忙しくて中身に取り組めなかったという話です。
なかなか腰を据えて受験勉強できていない状況を問題に感じ、国試ナビで最低限押さえなくてはいけない知識を確認しようと、学校の授業でよくわからなかった箇所との突き合わせに活用する使い方でした。ワークブックは本が厚過ぎて、見てもどこが重要なのかがわからず、一から理解していくことの道のりの険しさを感じたことが本を開きづらくさせていた原因でした。
学校の授業とは別の、いわゆる受験対策としてのスタートは、「過去問を解くこと」でした。時期は5月、新しい年度版の本が各出版社から出てくる前です。試験センターはその年度の合格発表を行った後、過去の国家試験問題を掲載します。それを、なんの基本知識もない状態でいきなり解きました。
解けるとは初めから思っていません。自分がこれから1年間のなかで何をしなくてはいけないのかを正確に見極めるためには、これくらい極端なことをしたほうがわかりやすいと思ったのです。結果はボロボロでしたが、たとえば、それでも心理学はそれなりにわかるようだとか(私の場合、これが散々だったらショックでした)、現代社会と福祉は人名と出来事がつながっていないと話にならないとか、社会保障はえらく難しいなとか、傾向的なことが見えてきます。これが目的でした。
その次に取り組んだのが、中央法規の国試ナビ(『見て覚える!社会福祉士国試ナビ』)をざっと眺めることでした。時期は8月。間隔がずいぶん空いてしまっていますが、学校の授業はまじめに受けていましたし、同じく中央法規のワークブック(『精神保健福祉士受験ワークブック』)を教材として手元に用意することはしていました。単純に、バイトが忙しくて中身に取り組めなかったという話です。
なかなか腰を据えて受験勉強できていない状況を問題に感じ、国試ナビで最低限押さえなくてはいけない知識を確認しようと、学校の授業でよくわからなかった箇所との突き合わせに活用する使い方でした。ワークブックは本が厚過ぎて、見てもどこが重要なのかがわからず、一から理解していくことの道のりの険しさを感じたことが本を開きづらくさせていた原因でした。
基礎知識の習得はやっぱり12月…
そのワークブックに取り組んだのが12月から試験月の1月の間でした。この時期に、こつこつとワークブックを勉強しだす人はあまりいないかもしれません。でも、基本部分をきちんと理解していないと攻略は難しい、ならばやるしかないと思い、科目ごとに順々に取り組み始めました。全部をやり切れるかわかりませんでしたし、その日、その週に計画した勉強も、しんどくなって途中までしかできない状況に陥りましたが、それでも続けることをしました。ひたすら読んで頭に入れていく、見返してみて覚えていなかったり理解があいまいだったりしたら読み直す、という地道な作業のくり返しです。
12月は、過去問(『精神保健福祉士国家試験過去問解説集』)にも取り組みました。先ほど、5月にこれから何をすべきかを見極めるためにいきなり解いたと挙げましたが、今回は実力試しが目的です。当たり前ですが、得点が激増していて、これは自信になりました。順調に勉強できていないようでも積み上げてきたものはあるんだという心の支えです。
学校が受けさせてくれた模擬試験でも、学力が測れました。点数はよくなかったですが、試験に対するイメージがとれて、弱点を補うのか、強みを伸ばすのかといったこれからの対策の立て方に役立ちました。
試験の2週間前から、バイトはすべてお休みをもらって勉強に集中しました。勉強の進み具合からすると劣勢と思われましたが、最後までできることをしようと机に向かい続けました。
12月は、過去問(『精神保健福祉士国家試験過去問解説集』)にも取り組みました。先ほど、5月にこれから何をすべきかを見極めるためにいきなり解いたと挙げましたが、今回は実力試しが目的です。当たり前ですが、得点が激増していて、これは自信になりました。順調に勉強できていないようでも積み上げてきたものはあるんだという心の支えです。
学校が受けさせてくれた模擬試験でも、学力が測れました。点数はよくなかったですが、試験に対するイメージがとれて、弱点を補うのか、強みを伸ばすのかといったこれからの対策の立て方に役立ちました。
試験の2週間前から、バイトはすべてお休みをもらって勉強に集中しました。勉強の進み具合からすると劣勢と思われましたが、最後までできることをしようと机に向かい続けました。
すがすがしい朝を迎えた
そして試験日の朝。このときの心の状態は自分の中によく残っています。すがすがしい朝でした、意外なほどに。これ以上やることはない、落ちても後悔しない、そう思いました。すべきことを全部やれたということではなかったと思います。一念発起して1年、いろいろあったけど、順調に勉強できたとはいえないけど、ともかく自分はやれることをやったのだという達成感です。
試験中もいい緊張感で変なプレッシャーはなく、試験後の手応えは「いけた」でした。自己採点でもだいたい取れたとの感触を得ることができました。就職予定先の内定は資格の取得が条件となっていたので、ドキドキしながら結果を待ちました。そして、合格の報。じーんときて、うれしかったです。
試験中もいい緊張感で変なプレッシャーはなく、試験後の手応えは「いけた」でした。自己採点でもだいたい取れたとの感触を得ることができました。就職予定先の内定は資格の取得が条件となっていたので、ドキドキしながら結果を待ちました。そして、合格の報。じーんときて、うれしかったです。
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精神保健福祉の現場でソーシャルワーカーを務めて1年になります。つらいこともありますが、魅力にあふれる仕事だと思います。ぜひ、試験に合格されて、この仕事をいっしょにやっていきましょう。