国家試験を突破して精神保健福祉士の資格を取得した合格者の皆さんに、合格までの道のりをご紹介いただきます。効果的な勉強法や忙しいなかでの時間のつくり方、実際に資格を手にして思うことなど、受験者が参考にしたい話が満載です。
第29回 渡邉智美(わたなべ・ともみ)さん
平成23年度試験合格
プロフィール
受験の動機
プロフィールに紹介いただいているように、障害やメンタル面に問題を抱えた人との数多くの出会い、エピソードが精神保健福祉士を目指す強力な動機になりました。その子のこともっと知りたいなとか、どうしてそうなっちゃったのかなとか、どんなふうにかかわれたんだろうとか、そういう気持ちを漠然と持ち続けながら学年を重ねていき、将来の進路を考える段になって調べてみたら「精神保健福祉士」という仕事があることに行き当たりました。当時は仕事の内容などはわかりませんでしたが、そういう人たちにかかわる職種なのだと知って、これだと思いました。
進学は福祉をしっかり学べるところと考えて日本社会事業大学を選び、このときには精神保健福祉士の資格を目指すこともはっきりしていました。だからといって、勉学三昧にはならなかった大学生活でしたが、志を立てるという意味ではかなりしっかりしたものをもっていたと思います。
進学は福祉をしっかり学べるところと考えて日本社会事業大学を選び、このときには精神保健福祉士の資格を目指すこともはっきりしていました。だからといって、勉学三昧にはならなかった大学生活でしたが、志を立てるという意味ではかなりしっかりしたものをもっていたと思います。
本格始動は12月に入ってから
受験勉強に取り組み始めたのは大学4年の11月、それも後半からでした。スタートの時期としては遅いと思います。やる気になれなかったとかではなく、ほかにすることがいろいろあって、なかなか手がつけられなかったというのが実際のところでした。
先生方からは3年になったらそろそろ始めるようにと言われていて、私も意識はしていたのですが、精神保健福祉士の専門課程に進むと履修する科目が増え、そのなかで早々に社会福祉士の実習が入ってきます。3年の後期、そして4年になってからは精神保健福祉士の実習も入ってきます。卒論も書かなくてはなりません。私の場合、実習報告会と卒論の提出が終わったのが12月ですから、実質的にはそこからの2か月弱で受験勉強を行った感じです。
先生方からは3年になったらそろそろ始めるようにと言われていて、私も意識はしていたのですが、精神保健福祉士の専門課程に進むと履修する科目が増え、そのなかで早々に社会福祉士の実習が入ってきます。3年の後期、そして4年になってからは精神保健福祉士の実習も入ってきます。卒論も書かなくてはなりません。私の場合、実習報告会と卒論の提出が終わったのが12月ですから、実質的にはそこからの2か月弱で受験勉強を行った感じです。
働く場への思いを整理し、かためることを先行
受験勉強のスタートが遅れ気味になったのは、就職活動を先行させていたことも関係しています。精神保健福祉士として働くことは早くから決めていましたが、どういう場所で働くかについてはいろいろと可能性を探ってみたい気持ちがあり、4年生の前半は一般企業や行政などさまざまな機関の就職試験や見学に時間を費やしていました。そのなかで一つひとつ自分の目的意識を確認していました。
現在勤めている陽和病院は、学部の同期生の実習先で、すばらしくいい施設と聞いていました。精神科病院のソーシャルワーカーとして働くことに気持ちが動いていた、そんな折に同病院から精神保健福祉士の求人が出され、試験を受けたのが10月です。翌11月に内定をいただいて、受験して資格を取る目的がより明確になりました。
現在勤めている陽和病院は、学部の同期生の実習先で、すばらしくいい施設と聞いていました。精神科病院のソーシャルワーカーとして働くことに気持ちが動いていた、そんな折に同病院から精神保健福祉士の求人が出され、試験を受けたのが10月です。翌11月に内定をいただいて、受験して資格を取る目的がより明確になりました。
勉強は過去問がベース、資格の優位は「精神」
もちろん、それまで何も準備をしていなかったわけではなく、受験対策の教材は4年の夏に揃えました。中央法規出版の過去問(『精神保健福祉士国家試験過去問解説集2014』『社会福祉士国家試験過去問解説集2014』)と国試ナビ(『見て覚える!社会福祉士国試ナビ2014』)です。高校受験でも過去問を解くことを中心に受験勉強していましたので、過去問は必須と考えていました。
勉強の方法は、自分の得手不得手がわからなかったので、まず過去問をひと通りやってみて、わからないところ、理解が浅いところ、苦手に感じられるところを出していきました。それらを明らかにした後、学校で使っている各教科のテキストを開いてその内容を書き出して覚えていきました。テキストの記述だけでわからないところは、友達に訊いたり先生に訊いたりして補っていきました。
正直なところ、相当焦っていました。スタートが遅かった上にダブル受験でもあり、やらなくてはならない量に圧倒されそうになりました。精神保健福祉士は何としても取りたかったので、精神の専門科目と共通科目を重点に取り組むようにしました。
勉強の方法は、自分の得手不得手がわからなかったので、まず過去問をひと通りやってみて、わからないところ、理解が浅いところ、苦手に感じられるところを出していきました。それらを明らかにした後、学校で使っている各教科のテキストを開いてその内容を書き出して覚えていきました。テキストの記述だけでわからないところは、友達に訊いたり先生に訊いたりして補っていきました。
正直なところ、相当焦っていました。スタートが遅かった上にダブル受験でもあり、やらなくてはならない量に圧倒されそうになりました。精神保健福祉士は何としても取りたかったので、精神の専門科目と共通科目を重点に取り組むようにしました。
実体験に基づいた知識が力に
そんな切羽詰まった受験勉強のなかで気づいたことがありました。「実体験に基づいた知識」が受験勉強を下支えしてくれていることに、です。
私は大学に入ってほどなく、福祉のボランティアとアルバイトにかかわるようになりました。聴覚障害者の要約筆記、障害者のガイドヘルパー、母子生活支援施設の夜勤、などです。先輩からは、福祉漬けにならないでふつうのアルバイトをしたらと言われ、居酒屋のバイトをした時期もありましたが、将来の目標に近いところで経験したい、学びたいとの気持ちが強く、できるだけ福祉の現場にかかわるようにしました。
これらの経験は受験勉強のなかでおおいに役立ちました。たとえば、テキストに書かれているこの事柄は、現場のあの出来事と関係しているのではと想像するだけで、その知識がスッと入ってきます。それが合っているかどうかは別として、体験を通したイメージが学習を助けてくれることは確かでした。
そのように実体験と結びつけて考えられると、覚えなくてはならない内容が楽しくも感じられ、理解も記憶も不思議と定着するようでした。今振り返ると、こうした経験の蓄積が両資格の合格の秘訣だったのかもしれません。
私は大学に入ってほどなく、福祉のボランティアとアルバイトにかかわるようになりました。聴覚障害者の要約筆記、障害者のガイドヘルパー、母子生活支援施設の夜勤、などです。先輩からは、福祉漬けにならないでふつうのアルバイトをしたらと言われ、居酒屋のバイトをした時期もありましたが、将来の目標に近いところで経験したい、学びたいとの気持ちが強く、できるだけ福祉の現場にかかわるようにしました。
これらの経験は受験勉強のなかでおおいに役立ちました。たとえば、テキストに書かれているこの事柄は、現場のあの出来事と関係しているのではと想像するだけで、その知識がスッと入ってきます。それが合っているかどうかは別として、体験を通したイメージが学習を助けてくれることは確かでした。
そのように実体験と結びつけて考えられると、覚えなくてはならない内容が楽しくも感じられ、理解も記憶も不思議と定着するようでした。今振り返ると、こうした経験の蓄積が両資格の合格の秘訣だったのかもしれません。
試験目前に大好きな演劇の練習に熱中
もう一つ、受験勉強によい作用をもたらしてくれたと思えるのが、ストレスの解消です。友達とカラオケに行ったり、好きな演劇を観に行ったりなど。どなたもされていることと思いますが、私の場合、極めつけだったように思うのが演劇の練習、公演でした。国家試験が終わってすぐの公演だったように、練習は試験勉強の追い込み時期真っ只中でしていました。台本を手にセリフを一所懸命覚えながら、自分は何を覚えているんだろう、この時期覚えなくてはいけないのは本来これじゃないよねと、一人苦笑してしまうこともありました。
でも、セリフを通して自分の感情を出してスッとする。身体の表現や声のトーンで自分とは違う誰かになってすっきりする。この効果は、勉強疲れやさまざまなストレスを解消して余りあるものがあったと思います。
でも、セリフを通して自分の感情を出してスッとする。身体の表現や声のトーンで自分とは違う誰かになってすっきりする。この効果は、勉強疲れやさまざまなストレスを解消して余りあるものがあったと思います。
志したことに意味がある
そんなお世辞にも十分といえない態勢で試験本番に臨みました。試験中は記憶がないくらい、緊張で頭が真っ白になりました。途中、奥のほうからすすり泣く女の人の声が聞こえてきて、あの人も大変だとつらい気持ちになりました。
受けた直後は、はっきりとダメだと思いました。いっしょに受けたみんなであははと笑って、来年がんばろうねと言っていたのを覚えています。周囲には、やったぞとすがすがしい顔をしている人もいて、もっとちゃんとやっておけばよかったと反省もしました。
寮に帰ってから、けあサポの解答速報で友達と答え合わせをしました。震える手でおそるおそる、一問ずつ確認していきました。0点科目がなかったこと、思っていたよりも得点できていることがわかり、合格ラインが何点になるかがわからないながらも、もしかしたら可能性があるかもしれないと思いました。
精神保健福祉士を目指そうと思った経緯、そして受験へと至った過程は、どんな結果になっても意味がある、無駄じゃないと思います。志したこと、志せたことの大きさを自信に変えて、合格を目指してがんばってください。
受けた直後は、はっきりとダメだと思いました。いっしょに受けたみんなであははと笑って、来年がんばろうねと言っていたのを覚えています。周囲には、やったぞとすがすがしい顔をしている人もいて、もっとちゃんとやっておけばよかったと反省もしました。
寮に帰ってから、けあサポの解答速報で友達と答え合わせをしました。震える手でおそるおそる、一問ずつ確認していきました。0点科目がなかったこと、思っていたよりも得点できていることがわかり、合格ラインが何点になるかがわからないながらも、もしかしたら可能性があるかもしれないと思いました。
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合格発表の日は、それはうれしかったです。よく2つとも合格できたなと率直に思いました。勉強を満足に行えていなかったのは紛れもない事実です。ただ、福祉にかかわりたい、そういう仕事に就きたいという思いはいつも頭のどこかにあって、その思いを持ち続けていたから、付け焼刃的な勉強でも想像以上の結果を出せたのかもしれないと、今振り返ると思います。精神保健福祉士を目指そうと思った経緯、そして受験へと至った過程は、どんな結果になっても意味がある、無駄じゃないと思います。志したこと、志せたことの大きさを自信に変えて、合格を目指してがんばってください。