国家試験を突破して精神保健福祉士の資格を取得した合格者の皆さんに、合格までの道のりをご紹介いただきます。効果的な勉強法や忙しいなかでの時間のつくり方、実際に資格を手にして思うことなど、受験者が参考にしたい話が満載です。
第18回 三宅沙紀(みやけ・さき)さん
平成23年度試験合格
プロフィール
受験の動機
プロフィールで紹介いただいたように、この道を選んだそもそものきっかけは自分自身の病気でした。社会福祉士や精神保健福祉士といった職種ではなく、病院という「場」が先だったと思います。体がつらいときに自分が行く場所、いる場所。そこにはいろんな病気で私と同じように苦しんでいる人たちが大勢いる。この人たちの支えになれたらと思ったのです。寝たきりになって、自分のことを自分でできず、将来も見えない。つらく、不安なことです。人のいたみがわかるからこそ、そこを支えたいという気持ちもありました。
ソーシャルワーカーについて知ったのは、高校生のときです。通院先の病院で、医療相談室で働くMSWの存在を知ったことがきっかけでした。そして高校3年生のとき、進路を考える際に母の職場の友人(SW)がMSWへの具体的な進路の道筋についてアドバイスをくれたのです。やがて、社会福祉士や精神保健福祉士の資格のことも知り、これを目指す気持ちがうまれてきました。ただ、高校に思うように通えていなかったため、通常の大学受験は難しく、「AO入試」という方法で進学しました。自己推薦する方式で、佛教大学では書類審査とグループワーク、個人面接で選考が行われました。
大学入学時に、社会福祉士と精神保健福祉士の資格取得をかなり意識していたので、国家試験の受験勉強は結構しっかりやりました。その内容をこれからご紹介します。私と同じ病気で働いている人は少なく、大学に通うこと自体もあまり例がないと聞いています。私がこの両方を達成すれば、あとに続く人の励みにもなる。その思いも支えになっています。
ソーシャルワーカーについて知ったのは、高校生のときです。通院先の病院で、医療相談室で働くMSWの存在を知ったことがきっかけでした。そして高校3年生のとき、進路を考える際に母の職場の友人(SW)がMSWへの具体的な進路の道筋についてアドバイスをくれたのです。やがて、社会福祉士や精神保健福祉士の資格のことも知り、これを目指す気持ちがうまれてきました。ただ、高校に思うように通えていなかったため、通常の大学受験は難しく、「AO入試」という方法で進学しました。自己推薦する方式で、佛教大学では書類審査とグループワーク、個人面接で選考が行われました。
大学入学時に、社会福祉士と精神保健福祉士の資格取得をかなり意識していたので、国家試験の受験勉強は結構しっかりやりました。その内容をこれからご紹介します。私と同じ病気で働いている人は少なく、大学に通うこと自体もあまり例がないと聞いています。私がこの両方を達成すれば、あとに続く人の励みにもなる。その思いも支えになっています。
スタートは早め、ワークブックで始動
まず、受験モードに入るのが周りに比べて早かったと思います。病気のことがあるので、ラストスパートはおそらく利かない。であれば、早めに着実に準備を進めておく必要がありました。いわゆる受験対策書に着手したのは、大学4年生になってすぐの4月です。はじめに取り組んだのは、中央法規のワークブック(『社会福祉士受験ワークブック(専門科目編)』『精神保健福祉士受験ワークブック(専門科目編)』『社会福祉士・精神保健福祉士受験ワークブック(共通)科目編』)でした。この時期は、まだ新しい年度の本が出ていなかったのですが、勉強を先に進めたかったので、精神保健福祉士の専門科目と共通科目は前年度版を購入し、新しい本が出たところで友達から借りて内容を比較するということをしました。なかなかの手間ですが、やりきると制度などの変更点がわかり、得るものは大きいです。社会福祉士の専門科目は、当年度版を購入しました。
ワークブックの勉強方法は、はじめに青と赤のマーカーで重要箇所に一通り線を引いてから、そのあと読む。くり返し読みます。もう一つは、科目ごとの最後におかれている「実力チェック!一問一答」を縮小コピーして、それを電車の中で解きます。通学は、奈良の自宅から京都の大学まで片道2時間。往復4時間あるので、一日3科目ずつと決めてじっくり取り組みました。タイムスケジュールでは、朝8時に家を出て、10時に大学着。12時まで図書館でワークブックその他の勉強をして、お弁当を食べた後、毎日3限か4限に1コマずつ入っている授業を受けて帰宅、というサイクルでした。毎日授業が入っていたのも、リズムをつくるうえで奏功しました。この勉強を4月から7月にかけて集中して行いました。ワークブックは3冊とも分厚いので、取り組みがいがありました。
ワークブックの勉強方法は、はじめに青と赤のマーカーで重要箇所に一通り線を引いてから、そのあと読む。くり返し読みます。もう一つは、科目ごとの最後におかれている「実力チェック!一問一答」を縮小コピーして、それを電車の中で解きます。通学は、奈良の自宅から京都の大学まで片道2時間。往復4時間あるので、一日3科目ずつと決めてじっくり取り組みました。タイムスケジュールでは、朝8時に家を出て、10時に大学着。12時まで図書館でワークブックその他の勉強をして、お弁当を食べた後、毎日3限か4限に1コマずつ入っている授業を受けて帰宅、というサイクルでした。毎日授業が入っていたのも、リズムをつくるうえで奏功しました。この勉強を4月から7月にかけて集中して行いました。ワークブックは3冊とも分厚いので、取り組みがいがありました。
就職試験、実習で目標を再確認
7月後半から8月、9月にかけては、就職試験や実習など自分自身の将来に関係するイベントに、より意識を注ぎました。私が目標にしていた病院就職は、もともと募集が少なく、新卒枠となればなおさらです。そのため、就職先は早めに探すようにしていました。私が就職した大阪医科大学附属病院は、以前に通院したことがあり、またそのとき通りかかった医療相談室(現:広域医療連携センター)の立ち寄りやすい雰囲気に好印象を抱いていました。ですから、職員の募集を知ったときは、ここだと即応募しました。こちらの就職試験、そして合格通知を受け取ったのがこの時期です。職員の資格要件は社会福祉士。受験に向けて大きな刺激になったのはいうまでもありません。
精神保健福祉士の実習は、実習先に希望していた就労継続支援B型事業所でした。病院とはまた違う、日々の生活のなかから豊かさを見出していく、創り出していくという支援を体験してみてみたいと思ったのが理由です。こういう時間の流れで、ワーカーはこんな役割を担っていくのだと発見があり、と同時に、病院で働きたいという自分自身の目標を再確認する機会にもなりました。
目的意識やモチベーションにかかわる大切な時期だったと思います。
精神保健福祉士の実習は、実習先に希望していた就労継続支援B型事業所でした。病院とはまた違う、日々の生活のなかから豊かさを見出していく、創り出していくという支援を体験してみてみたいと思ったのが理由です。こういう時間の流れで、ワーカーはこんな役割を担っていくのだと発見があり、と同時に、病院で働きたいという自分自身の目標を再確認する機会にもなりました。
目的意識やモチベーションにかかわる大切な時期だったと思います。
仕事の1シーンです。スピードが求められる局面では院内携帯(PHS)を使って情報連携します
続いて、過去問、DSソフト、模擬試験
次に取り組んだのが過去問解説集(『社会福祉士国家試験過去問解説集』『精神保健福祉士国家試験過去問解説集』中央法規出版)です。購入したのは9月の中旬だったと思います。あらかじめ2冊分の分量をいつまでに終わらせるかを決め、それを約2カ月、おおむね11月中旬と設定しました。1日あたり何問ずつ解いていけばよいかを計算して、一問一問をていねいに、内容を理解するように回答していき、間違えた問題やわかりづらい問題は、教科ごとにまとめていたルーズリーフノートの中にファイリングしていきました。
この時期は併行して、DS(携帯型ゲーム機)を使った勉強もしていました。社会福祉士受験のためのDSソフト(『マル合格資格奪取!SPECIAL社会福祉士試験NINTENDO DS版』中央法規出版)です。往復4時間の通学電車のなかで、集中的に取り組みました。受験も勉強方法にバリエーションをもたせると、変化が出て面白みが出てくるものです。
模擬試験を受けたのも11月です。上旬と中旬に2回受けました。秋も後半に入ってくると、受験関連の対策企画が巷にいろいろと登場してきますが、これらすべてに参加するのは肉体的にも精神的にも負担が大きくなります。この時期にある程度勉強が進んでいると、それらを取捨選択できる目がもてます。自分が決めた勉強をぶれずにしっかりやることが大事と今振り返って思います。
この時期は併行して、DS(携帯型ゲーム機)を使った勉強もしていました。社会福祉士受験のためのDSソフト(『マル合格資格奪取!SPECIAL社会福祉士試験NINTENDO DS版』中央法規出版)です。往復4時間の通学電車のなかで、集中的に取り組みました。受験も勉強方法にバリエーションをもたせると、変化が出て面白みが出てくるものです。
模擬試験を受けたのも11月です。上旬と中旬に2回受けました。秋も後半に入ってくると、受験関連の対策企画が巷にいろいろと登場してきますが、これらすべてに参加するのは肉体的にも精神的にも負担が大きくなります。この時期にある程度勉強が進んでいると、それらを取捨選択できる目がもてます。自分が決めた勉強をぶれずにしっかりやることが大事と今振り返って思います。
後半は「復習」に力を入れる
模擬試験を受けたときの手応えから、合格に向けて何とかなっているとの感触をつかむことができました。そこで、12月から1月にかけて、学習してきた内容の点検とあわせて復習に力を入れました。勉強していると、過去問には出題されていない重要な知識・情報があります。これらをノートに追加していくという作業です。知識が補強され、知識間の流れやつながりも見えてきて、なかなか有意義な勉強と思いました。
また、この時期にお手製の「暗記カード」を作りました。制度や年月日、人名など語句として重要とにらんだものを選定して作り、それを電車の中などで暗記する方法です。ちょっと時間があるときにカバンから出してさらっと確認する程度でも、効果は実感できました。その事柄に対する理解がある程度あった上での暗記は、何もわからない状態で一からする暗記とは別物のようです。
また、この時期にお手製の「暗記カード」を作りました。制度や年月日、人名など語句として重要とにらんだものを選定して作り、それを電車の中などで暗記する方法です。ちょっと時間があるときにカバンから出してさらっと確認する程度でも、効果は実感できました。その事柄に対する理解がある程度あった上での暗記は、何もわからない状態で一からする暗記とは別物のようです。
模擬問題集でラストスパート
国家試験の当月、1月に入って模擬問題集(『社会福祉士国家試験模擬問題集』『精神保健福祉士国家試験模擬問題集』中央法規出版)に取り組みました。試験本番に向けての実力試し、また総仕上げとしての位置づけです。この本に出ている問題は結構難しく、回答ミスも多かったのですが、先ほど挙げた教科ごとのノートに内容を追加し、それらを覚えるという作業を重ねていきました。
試験を目前に控えての不安はあったと思いますが、それが心に巣食ってしまうような大きさではありませんでした。ご紹介してきた教材の多さにも表れているように、やるべきことはやってきたという過程がありました。あとは自分の力を出し切るのみ、でした。
もしかしたら、成功のイメージが過大だったのかもしれません。自己採点の結果は良好、むしろ高得点とわかり、胸をなでおろしたのでした。
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さて、磐石の備えをもって臨んだ国家試験。終了のチャイムを合格の確信とともに耳に……とは、いかなかったのです。共通科目と2つの専門科目、どれも出来栄えの手応えは過去にないほど悪く、落ちたと思いました。気持ちが家までもたず、駅のホームで母に電話をかけながら泣いてしまいました。本番にかぎってどうしてと。もしかしたら、成功のイメージが過大だったのかもしれません。自己採点の結果は良好、むしろ高得点とわかり、胸をなでおろしたのでした。
「がんばることをあきらめない」
以上が私の体験記です。大学入学時からも含め、この間には冒頭にお伝えした病気との闘い、といいますか付き合いがありました。病状に波があること、ストレスが痛みになること。3週間がんばったら3カ月寝込むという特質に当初は悩まされました。大学2年のとき、半年ほど自主休学して単位をレポート提出に振り替えていただいたこともあります。往復4時間の通学も時に険しい道のりでした。冬場は病状から車椅子での通学となることもあり、電車や車椅子対応のバスを乗り継いで通ったこともあります。
やりとおすことができたのは、私の中に目標に対する強い思いがあったから――。いえ、ちょっと違いそうです。私を支えてくれた大勢の人たち、医療スタッフ、友達、学校の先生、そして家族。この方々が私を、私の思いを支え続けてくれたから、私はやりとおせたのだと思います。
母は私が病気になったとき、病気を逃げることの言い訳にさせませんでした。だからこそ私は“がんばりたい”という思いを持ち続けることができました。紆余曲折を経ての大学生活、私は4年かけて、“がんばりすぎずにがんばる”ことを学びました。
合格に向けて、「がんばることをあきらめないでほしい」。これが私から皆様に送らせていただく言葉です。私にとっては、今ここからがスタートラインです。これからもマイペースで一歩ずつ歩んでいきたいと思います。
最後に1枚、写真をお届けします。先日、祖父母の喜寿のお祝いで旅行に行きました。隣は妹、私が手にしているのは愛用の杖です。初めての有給休暇に社会人としての喜びを感じています。こういうひと時を家族と過ごす幸せを大切にしていきたい、そんなスナップショットです。
やりとおすことができたのは、私の中に目標に対する強い思いがあったから――。いえ、ちょっと違いそうです。私を支えてくれた大勢の人たち、医療スタッフ、友達、学校の先生、そして家族。この方々が私を、私の思いを支え続けてくれたから、私はやりとおせたのだと思います。
母は私が病気になったとき、病気を逃げることの言い訳にさせませんでした。だからこそ私は“がんばりたい”という思いを持ち続けることができました。紆余曲折を経ての大学生活、私は4年かけて、“がんばりすぎずにがんばる”ことを学びました。
合格に向けて、「がんばることをあきらめないでほしい」。これが私から皆様に送らせていただく言葉です。私にとっては、今ここからがスタートラインです。これからもマイペースで一歩ずつ歩んでいきたいと思います。
最後に1枚、写真をお届けします。先日、祖父母の喜寿のお祝いで旅行に行きました。隣は妹、私が手にしているのは愛用の杖です。初めての有給休暇に社会人としての喜びを感じています。こういうひと時を家族と過ごす幸せを大切にしていきたい、そんなスナップショットです。
日差しのやわらかい11月晩秋。羊さんはエサくメェ〜(くれ〜)とねだるのでした