国家試験を突破して精神保健福祉士の資格を取得した合格者の皆さんに、合格までの道のりをご紹介いただきます。効果的な勉強法や忙しいなかでの時間のつくり方、実際に資格を手にして思うことなど、受験者が参考にしたい話が満載です。
第28回 竹村望(たけむら・のぞみ)さん
平成20年度試験合格
プロフィール
受験の動機
当初、精神保健福祉士の資格を取ることは考えていませんでした。自分がそういう仕事をしている姿は想像できませんでしたし、国家資格となればハードルも高いと思っていました。純粋にこの分野のことを勉強したいと思った、それが専門の課程を修めようと考えた動機です。
私が精神科病院で出合った患者さんたちは、それまでのイメージと違って“ふつうの”人でした。もちろん、症状やその強弱はあります。しかし、一般に抱かれやすい“こわい”とか“何をするかわからない人”といったものではありませんでした。患者さんと話をしていると、配偶者との死別や離婚などの人生上の問題、大きな苦しみが発病の引き金になっている例が意外に多いこともわかりました。
精神疾患という病気のことに興味がわき、この人たちが不当に侵害されているように思えた権利面にも関心が向き、しっかり勉強してみたいと思いました。それこそ一生をかけて勉強するくらいの気持ちで大学に入ったというのが実際のところです。精神保健福祉士の資格は勉強するなかで、可能性があるのならとしだいに意識するようになった感じです。
はじめから資格取得が目標になかったこともあり、卒業は大学3年の編入から所定の2年ではなく、3年間要しました。ふつうに仕事もしていたので、受験勉強に本格的に取り組んだのは年が明けてからの最後の1カ月です。同じようにされるのはリスクが高いと思いますが、もう間に合わないと思っている方の勇気づけにはなるかもしれません。私の受験体験をお話しします。
私が精神科病院で出合った患者さんたちは、それまでのイメージと違って“ふつうの”人でした。もちろん、症状やその強弱はあります。しかし、一般に抱かれやすい“こわい”とか“何をするかわからない人”といったものではありませんでした。患者さんと話をしていると、配偶者との死別や離婚などの人生上の問題、大きな苦しみが発病の引き金になっている例が意外に多いこともわかりました。
精神疾患という病気のことに興味がわき、この人たちが不当に侵害されているように思えた権利面にも関心が向き、しっかり勉強してみたいと思いました。それこそ一生をかけて勉強するくらいの気持ちで大学に入ったというのが実際のところです。精神保健福祉士の資格は勉強するなかで、可能性があるのならとしだいに意識するようになった感じです。
はじめから資格取得が目標になかったこともあり、卒業は大学3年の編入から所定の2年ではなく、3年間要しました。ふつうに仕事もしていたので、受験勉強に本格的に取り組んだのは年が明けてからの最後の1カ月です。同じようにされるのはリスクが高いと思いますが、もう間に合わないと思っている方の勇気づけにはなるかもしれません。私の受験体験をお話しします。
ワークブックと過去問に的を絞る
私が学んだのは通信課程です。スクーリングでカリキュラムの説明を受けた後、基本は教科書に書かれていることを自己学習してレポートを書き、卒業に必要な単位を取得していくという流れです。
これらを基礎学習としながら、受験対策用に教材を購入しました。中央法規出版の『精神保健福祉士受験ワークブック(専門科目編)』と『精神保健福祉士国家試験過去問解説集』です。社会福祉士とのダブル受験だったため、ワークブックは共通科目編と社会福祉士専門科目編をあわせて3冊入手しました。教材としてはこれらのみです。教材の種類を増やしても、やりきれないことははじめからわかっていたので、その内容に集中するためにも、こんなにあってはとても間に合わないと自信を失わないためにも、的を絞ることにしました。これらの教材も揃えたのは9月ですから、時期は少し遅めかもしれません。
大学の受験対策講座もありましたが、会場が神戸で家(大阪の堺市)から遠く、フルタイムの仕事が週に5日入ってもいて、受講は難しい状況でした。
これらを基礎学習としながら、受験対策用に教材を購入しました。中央法規出版の『精神保健福祉士受験ワークブック(専門科目編)』と『精神保健福祉士国家試験過去問解説集』です。社会福祉士とのダブル受験だったため、ワークブックは共通科目編と社会福祉士専門科目編をあわせて3冊入手しました。教材としてはこれらのみです。教材の種類を増やしても、やりきれないことははじめからわかっていたので、その内容に集中するためにも、こんなにあってはとても間に合わないと自信を失わないためにも、的を絞ることにしました。これらの教材も揃えたのは9月ですから、時期は少し遅めかもしれません。
大学の受験対策講座もありましたが、会場が神戸で家(大阪の堺市)から遠く、フルタイムの仕事が週に5日入ってもいて、受講は難しい状況でした。
音読をボイスレコーダーに吹き込む
本腰を入れての勉強は、先ほど挙げたとおり試験月の1月からです。といっても、それまで何もしていなかったわけではありません。10月くらいから始めたのが、「音読のボイスレコーダーへの吹き込み」でした。
ワークブック3冊(精神専門・共通・社会専門)を声に出してすべて読み、それをボイスレコーダーに吹き込むというものです。重要項目の解説文、一問一答の問題と解答と、読み上げられる部分はすべて吹き込んでいきます。一問一答については、問題を聞いた後に回答できるように、問題文を読んだ後に数秒の間を入れて、考える時間をつくります。
後で聴くことを考えると、滑舌のよい聞きやすい状態で吹き込まなくてはなりません。そうすると、一文一文をていねいに読むこととなり、そのことは内容を理解したり記憶したりすることにもつながってきます。
理解したい内容、覚えたい内容を替え歌にして吹き込むこともしました。たとえば、成年後見制度を「聖者の行進」のメロディに乗せて覚えたりしました。文字数が合わなくて苦労する替え歌もあって、自分は何に手間かけてるんだろと苦笑することもありました。
吹き込んだ音読はいつも持ち歩き、通勤時間の道中や家にいてちょっと気が向いたときなど、聴く時間があるときに聴くというスタイルで毎日を過ごしました。
ワークブック3冊(精神専門・共通・社会専門)を声に出してすべて読み、それをボイスレコーダーに吹き込むというものです。重要項目の解説文、一問一答の問題と解答と、読み上げられる部分はすべて吹き込んでいきます。一問一答については、問題を聞いた後に回答できるように、問題文を読んだ後に数秒の間を入れて、考える時間をつくります。
後で聴くことを考えると、滑舌のよい聞きやすい状態で吹き込まなくてはなりません。そうすると、一文一文をていねいに読むこととなり、そのことは内容を理解したり記憶したりすることにもつながってきます。
理解したい内容、覚えたい内容を替え歌にして吹き込むこともしました。たとえば、成年後見制度を「聖者の行進」のメロディに乗せて覚えたりしました。文字数が合わなくて苦労する替え歌もあって、自分は何に手間かけてるんだろと苦笑することもありました。
吹き込んだ音読はいつも持ち歩き、通勤時間の道中や家にいてちょっと気が向いたときなど、聴く時間があるときに聴くというスタイルで毎日を過ごしました。
仕事をもちながらでもできる勉強法は必須
音読をボイスレコーダーに吹き込んだ10月、それから11月、12月と、机に向かっての勉強はほとんどしませんでした。いえ、実際にはしたくてもできない状況でした。
一つは、実習の問題です。大学が家から遠かったため、学校から紹介される実習先ではなく、通える場所を自己開拓する必要が生じ、そうするとそれらの実習先は近隣大学等の学生さんの受け入れが先となるため、受けていただけてもどうしても時期が遅くなります。私はダブル受験だったため、精神と社会の2カ所ずつを9月から12月まで毎月実習に行っていました。実習期間中は記録作業などもあり、それ以外のことはほとんど手につかないものです。卒業に必要なレポート作成の時期とも重なってくるため、受験勉強どころではなくなるわけです。
加えて、私は精神科病院での医療事務を週5回、フルタイムで行っていました。実習の時のみ週2日を午前勤務にして、午後から実習に行くという具合です。この時間も、有休を使って工面しました。こうした状況のなかで無理をして勉強時間をつくれば、睡眠不足などから業務でミスを起こさないとも限りません。医療機関でもあり、自分の状態は受験勉強の進み具合以上に大事に考える必要がありました。社会人受験者はどなたも似たような状況だと思います。
そのなかで唯一取り組めたのが、紹介したボイスレコーダーの聴き取り学習です。大事な10月から12月の約3カ月間の時期を、ほとんど机に向かうことなく学習を進めることができました。
一つは、実習の問題です。大学が家から遠かったため、学校から紹介される実習先ではなく、通える場所を自己開拓する必要が生じ、そうするとそれらの実習先は近隣大学等の学生さんの受け入れが先となるため、受けていただけてもどうしても時期が遅くなります。私はダブル受験だったため、精神と社会の2カ所ずつを9月から12月まで毎月実習に行っていました。実習期間中は記録作業などもあり、それ以外のことはほとんど手につかないものです。卒業に必要なレポート作成の時期とも重なってくるため、受験勉強どころではなくなるわけです。
加えて、私は精神科病院での医療事務を週5回、フルタイムで行っていました。実習の時のみ週2日を午前勤務にして、午後から実習に行くという具合です。この時間も、有休を使って工面しました。こうした状況のなかで無理をして勉強時間をつくれば、睡眠不足などから業務でミスを起こさないとも限りません。医療機関でもあり、自分の状態は受験勉強の進み具合以上に大事に考える必要がありました。社会人受験者はどなたも似たような状況だと思います。
そのなかで唯一取り組めたのが、紹介したボイスレコーダーの聴き取り学習です。大事な10月から12月の約3カ月間の時期を、ほとんど机に向かうことなく学習を進めることができました。
ラスト1カ月は問題を解いて知識の定着へ
1月に入ってからは、勉強に集中できる環境を意識してつくりました。9時から17時までの病院勤務は試験月も同様でしたが、夫に晩ごはんを作ってもらって、帰宅後にすぐ食事をして、勉強時間として一日2時間は確保できるように努めました。
勉強法では主に過去問を使い、時間を測りながら解いた後、間違ったところの解説文をよく読みました。全体的にはよくわかっていて、問題の言っている意味が意外と理解できていることをうれしく思ったりしました。点数が低い科目や苦手なテーマの周辺知識は、机に向かっていない時間帯にその分野をボイスレコーダーで聴きました。振り返り学習としても有効でした。
勉強法では主に過去問を使い、時間を測りながら解いた後、間違ったところの解説文をよく読みました。全体的にはよくわかっていて、問題の言っている意味が意外と理解できていることをうれしく思ったりしました。点数が低い科目や苦手なテーマの周辺知識は、机に向かっていない時間帯にその分野をボイスレコーダーで聴きました。振り返り学習としても有効でした。
力を尽くして真っ白に
試験の終了直後は何も覚えていないくらい頭が真っ白になりました。集中しすぎて燃え尽きたような感覚です。試験に臨む過程としては十分ではなかったかもしれませんが、最後の1カ月は合格するために精一杯がんばりました。答え合わせはしませんでした。自信のある、なしではなく、やっと終わった、とにかく離れたい、それだけでした。思っていたよりわかる問題が多かったように思います。
合格を知ったときはうれしかったです。合格は精神保健福祉士です。社会福祉士は受験勉強の途中で、無理に2つの資格を追いかけたらどちらも取れないと思い、勉強せずに試験に臨みました。
この翌年の社会福祉士の国家試験日に長男を出産し、さらに翌年(平成23年)に社会福祉士を取得しました。私の場合、社会福祉士の資格は、精神保健福祉士としての活動をさらに充実させるための取得という位置づけになります。
合格を知ったときはうれしかったです。合格は精神保健福祉士です。社会福祉士は受験勉強の途中で、無理に2つの資格を追いかけたらどちらも取れないと思い、勉強せずに試験に臨みました。
この翌年の社会福祉士の国家試験日に長男を出産し、さらに翌年(平成23年)に社会福祉士を取得しました。私の場合、社会福祉士の資格は、精神保健福祉士としての活動をさらに充実させるための取得という位置づけになります。
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皆さんも、合格に向けて頑張ってください。一つ、試験前には会場の下見をしておかれることをおすすめします。私が受験したときの会場は倉庫のような場所で、部屋がとても寒く、いすは固く、試験に集中できる環境とはいえませんでした。事前に会場の様子がわかっていれば、羽織るものを用意したり、逆に脱ぎやすい服にしたりなど備えができます。試験以外のことに足を引っ張られないようにお気をつけください。手製の日傘です。楽しくて無心で作りました。
受験者の皆さん、好きなものに打ち込める時間も大事になさってください。
受験者の皆さん、好きなものに打ち込める時間も大事になさってください。