国家試験を突破して精神保健福祉士の資格を取得した合格者の皆さんに、合格までの道のりをご紹介いただきます。効果的な勉強法や忙しいなかでの時間のつくり方、実際に資格を手にして思うことなど、受験者が参考にしたい話が満載です。
第27回 中野愛子(なかの・あいこ)さん
平成24年度試験合格
プロフィール
受験の動機
プロフィールに紹介いただいているとおりです。祖母の病気と私の進路を考える時期が重なっていて、福祉との出会い方にもインパクトがありました。母はほぼ毎日病院に通っていましたし、私も高校からの帰り道によく寄っていました。MSWという人がいることをそこで知って、苦しんでいる人、悩みを抱えている人とのかかわりの部分にだんだん惹かれて……という出発点です。
精神保健福祉士の資格を考えたのは、社会福祉士を目指しながらいっしょに取得できる可能性がある、それならという気持ちからでしたが、勉強していくうちにどんどん精神保健福祉に対する興味が広がっていきました。決め手になったのは、4年生の実習ゼミ・演習ゼミでした。精神障害のさまざまな事例にふれ、患者さんの生きづらさ、社会のなかでの難しさ、そのなかで望む生活を実現するための支援、一人ひとりの人に寄り添った支援など、現場の実際に即した学習から得たことは大きかったです。また、こうした授業を通して学ぶ私(たち)の問題意識や向学心を刺激してくれた先生方の存在も大きかったです。
私が勤めている新阿武山病院は、就職試験が8月(国試の5カ月前)で翌9月に内定をいただいていました。社会福祉士とのダブル受験体制でしたが、すでにこの時期から仕事のフィールドとして描いていたのは「精神保健福祉」でした。
精神保健福祉士の資格を考えたのは、社会福祉士を目指しながらいっしょに取得できる可能性がある、それならという気持ちからでしたが、勉強していくうちにどんどん精神保健福祉に対する興味が広がっていきました。決め手になったのは、4年生の実習ゼミ・演習ゼミでした。精神障害のさまざまな事例にふれ、患者さんの生きづらさ、社会のなかでの難しさ、そのなかで望む生活を実現するための支援、一人ひとりの人に寄り添った支援など、現場の実際に即した学習から得たことは大きかったです。また、こうした授業を通して学ぶ私(たち)の問題意識や向学心を刺激してくれた先生方の存在も大きかったです。
私が勤めている新阿武山病院は、就職試験が8月(国試の5カ月前)で翌9月に内定をいただいていました。社会福祉士とのダブル受験体制でしたが、すでにこの時期から仕事のフィールドとして描いていたのは「精神保健福祉」でした。
学校の授業は大事
受験勉強については、はじめに学校の授業の大切さをお話ししたいと思います。学校の授業というのは、それだけをどんなにまじめに聴いても、どんなにていねいにノートを作ったとしても、合格できるものではないかもしれません。試験問題を解くためには、解くための技術や過去の傾向からの予測や問題そのものへの慣れなど、試験対策的なテクニックが求められると思います。
しかし、学校で先生が教えてくれる授業はやはり重要です。一つの知識を学ぶには、その知識の前提となる事柄やそのことが理解しやすくなるための周辺知識・情報が必要です。現場の実状や制度の動向や地域の資源状況など、教科書には載っていないことが合わさってくることで理解できる内容もあります。
その意味で、学校の授業は基礎知識を基礎知識として消化するために必須のものだろうと思います。先生の言葉で聴けばよいので、頭にも入りやすいです。たとえ、これだけ覚えれば完璧という受験参考書があったとしても、いきなりそれを目にしたら何のことかさっぱりわからないでしょうし、がんばって読もうと思ってもかえって時間ばかりかかるに違いありません。授業は、わからないことがあればすぐに先生に質問ができますし、先生と仲良くなるきっかけにもなって、とても楽しかったです。
授業を大事だと思って臨むと、受験勉強にもよい効果があらわれると思います。
しかし、学校で先生が教えてくれる授業はやはり重要です。一つの知識を学ぶには、その知識の前提となる事柄やそのことが理解しやすくなるための周辺知識・情報が必要です。現場の実状や制度の動向や地域の資源状況など、教科書には載っていないことが合わさってくることで理解できる内容もあります。
その意味で、学校の授業は基礎知識を基礎知識として消化するために必須のものだろうと思います。先生の言葉で聴けばよいので、頭にも入りやすいです。たとえ、これだけ覚えれば完璧という受験参考書があったとしても、いきなりそれを目にしたら何のことかさっぱりわからないでしょうし、がんばって読もうと思ってもかえって時間ばかりかかるに違いありません。授業は、わからないことがあればすぐに先生に質問ができますし、先生と仲良くなるきっかけにもなって、とても楽しかったです。
授業を大事だと思って臨むと、受験勉強にもよい効果があらわれると思います。
4年生の4月からゆっくり始動
受験対策としての勉強を始めたのは、大学4年の4月に入ってからです。3年生の頃は、やらないといけないねーと友達と言いながらも着手するまでは至らず、むしろインターンシップに参加するなど、現場としての学びに力を入れていました。インターンは、2年生の夏に身体・知的障害者の施設、3年生の冬に病院に行っています。部活動も、3年まで本気でやって4年から勉強に切り替えよう!と決めていて、3年生の頃はまだまだ国試に向けたモードになっていませんでした。
4年生になって、1こ上の先輩から過去問やワークブックなどのテキストをもらったり、ゼミの先生の研究室で試験対策に役立ちそうな資料をコピーしたりといった勉強の準備を始めていきました。
4年生になって、1こ上の先輩から過去問やワークブックなどのテキストをもらったり、ゼミの先生の研究室で試験対策に役立ちそうな資料をコピーしたりといった勉強の準備を始めていきました。
気持ちと体制を徐々に整えて
しだいに、ゼミの仲間やそれ以外でも受験勉強のグループができてきます。そろそろやらなくちゃという雰囲気も周囲に出てきて、グループ内で問題を解き合ったり、書店に並び始める新しい年度の教材を購入したりと、徐々に臨戦体制が整っていきます。
私が購入した主な教材は、社会福祉士のほうが中央法規出版の『社会福祉士国家試験過去問解説集』『社会福祉士国家試験受験ワークブック』、翔泳社の『福祉教科書 社会福祉士 出る! 出る! 一問一答』、精神保健福祉士のほうが中央法規出版の『精神保健福祉士国家試験過去問題解説集』、ミネルヴァ書房の『精神保健福祉士 専門科目編』などです。大学からは夏休みに行われる東京アカデミーの受験対策講座も案内され、このテキストも入手し講座に参加しました。
私が購入した主な教材は、社会福祉士のほうが中央法規出版の『社会福祉士国家試験過去問解説集』『社会福祉士国家試験受験ワークブック』、翔泳社の『福祉教科書 社会福祉士 出る! 出る! 一問一答』、精神保健福祉士のほうが中央法規出版の『精神保健福祉士国家試験過去問題解説集』、ミネルヴァ書房の『精神保健福祉士 専門科目編』などです。大学からは夏休みに行われる東京アカデミーの受験対策講座も案内され、このテキストも入手し講座に参加しました。
「知識ノート」でポイントを整理
こうした準備を整えるなか、私がはじめに取り組んだのは「知識ノート」の作成でした。テキストをいろいろ読んでいくと、科目ごとに、おそらく絶対押さえていなくてはならないだろう事柄や読んでも理解や記憶があいまいになっている箇所が見えてきます。こうしたポイントだけをまとめたノートです。
たとえば、先ほど挙げた心理学の科目なら、人名とその人が編み出した理論や技法をオリジナルの表として整理し直すなど。科目ごとにまとめると、自分がとらえているその科目の要点や自分の弱点もわかってきて重宝します。まとめていく過程で理解が深まる、わかりやすくなるメリットもあります。
このノートは、夏休みに入るまでに作成することを目標に、4月から7月の間に作り上げました。ノートを作成する過程で、知識が断片的ではあっても入ってきますので、問題を解くときに初めて聞く単語を少なくすることができました。
たとえば、先ほど挙げた心理学の科目なら、人名とその人が編み出した理論や技法をオリジナルの表として整理し直すなど。科目ごとにまとめると、自分がとらえているその科目の要点や自分の弱点もわかってきて重宝します。まとめていく過程で理解が深まる、わかりやすくなるメリットもあります。
このノートは、夏休みに入るまでに作成することを目標に、4月から7月の間に作り上げました。ノートを作成する過程で、知識が断片的ではあっても入ってきますので、問題を解くときに初めて聞く単語を少なくすることができました。
勉強の「計画ノート」を作成
本格的に勉強に取り組み始めたのは、精神保健福祉士の実習が終わってからで、10月以降です。私はタイプ的に、要領よく効率よく行うのが苦手で、反面、こつこつと積み上げていくのは合っています。そのことを自覚していたので、はじめに勉強の計画ノートを1週間単位で作りました。1週間の授業の予定、アルバイトの予定などをはじめにうめて、どの時間にどこでどんな勉強をするか、それらを一覧できるようにする仕様です。
大きな設定としては、1日に4科目ずつ勉強し、1週間で25科目をこなしました。25科目は、共通科目と社会の専門科目、精神の専門科目の全科目です。1科目に割り当てる時間と勉強のだいたいの内容をあらかじめ決めておき、その内容をこなしていく進め方です。
急な予定が入ったり勉強が追いつかずに計画がずれてきたりすることも考えられたので、週1日はフリーにしました。計画どおりに進めば、この日の勉強はお休みです。高校受験のときに無理な計画を立てて痛い目に遭っていたので、余裕のあるスケジュールにすることは特に意識しました。
大きな設定としては、1日に4科目ずつ勉強し、1週間で25科目をこなしました。25科目は、共通科目と社会の専門科目、精神の専門科目の全科目です。1科目に割り当てる時間と勉強のだいたいの内容をあらかじめ決めておき、その内容をこなしていく進め方です。
急な予定が入ったり勉強が追いつかずに計画がずれてきたりすることも考えられたので、週1日はフリーにしました。計画どおりに進めば、この日の勉強はお休みです。高校受験のときに無理な計画を立てて痛い目に遭っていたので、余裕のあるスケジュールにすることは特に意識しました。
過去問とワークブックを併用し、くり返し学習
勉強の仕方としては、過去問とワークブックを併用する方法を基本にしました。例えば、「心理学理論と心理的支援」の科目なら、過去問を解く前にワークブックをぱらぱらとめくる。しっかりは読まずに、こんなことが書いてある、これらが重要そうだという印象をとどめる程度にして問題を解く。その程度では満足に解くことなどできませんが、問題を解くなかで自分は何がわからないのかを見つけるようにして、それを意識して問題の解説を読む、ワークブックに戻って該当部分を読む。理解できたら、次の年の過去問に進む。こんな進め方です。
私が特に苦手とした科目は、この「心理学理論と心理的支援」と「現代社会と福祉」、「社会保障」でした。これらの科目は、人名や歴史上の出来事、理論など、記憶(暗記)して自らの知識とする内容が多く、苦労しました。共通科目は全般にこの傾向があり、とても苦手としていました。
こうした内容はなおのことくり返し学習が必要とされ、何度もくり返して問題を解きました。その意味でも、週1回は必ず全科目の内容にふれる進め方は理に適っていたと思います。
私が特に苦手とした科目は、この「心理学理論と心理的支援」と「現代社会と福祉」、「社会保障」でした。これらの科目は、人名や歴史上の出来事、理論など、記憶(暗記)して自らの知識とする内容が多く、苦労しました。共通科目は全般にこの傾向があり、とても苦手としていました。
こうした内容はなおのことくり返し学習が必要とされ、何度もくり返して問題を解きました。その意味でも、週1回は必ず全科目の内容にふれる進め方は理に適っていたと思います。
集中しやすい環境をつくる
受験勉強の計画づくりや毎日の勉強の仕方については、勉強時間の長さよりも集中できる環境面を大事に考えました。8〜10月の1日あたりの勉強時間は、多くて5時間です。場所については、朝起きてから夜寝るまでずっと家で勉強することは極力しないようにしました。ずっと同じ場所、それもくつろぐこともしやすい家にいると、めりはりがなくなってだらけてしまいます。私は通学に2時間を要するくらい遠かったのですが、授業がないときも大学の図書館に行くようにしていました。授業があるとき、たとえば午後に1コマ入っているときは、その前後の時間帯を図書館で勉強していました。
通学に往復4時間かかるので、電車とバスの中でも勉強していました。一問一答形式のコンパクトな教材や知識ノートを使用しての勉強が中心でした。
試験勉強の後半、12〜1月になると勉強時間は増やしていきましたが、授業がなくても通学し、例えばお昼休みを挟んで10〜17時まで約6時間、帰宅してから食事後に2時間勉強するようなスケジュールで、12時(0時)前には寝るようにしていました。
睡眠は生活のなかで必要と思っていて、時間を減らしたくなかったので、後半はより意識してとるように心がけていました。
通学に往復4時間かかるので、電車とバスの中でも勉強していました。一問一答形式のコンパクトな教材や知識ノートを使用しての勉強が中心でした。
試験勉強の後半、12〜1月になると勉強時間は増やしていきましたが、授業がなくても通学し、例えばお昼休みを挟んで10〜17時まで約6時間、帰宅してから食事後に2時間勉強するようなスケジュールで、12時(0時)前には寝るようにしていました。
睡眠は生活のなかで必要と思っていて、時間を減らしたくなかったので、後半はより意識してとるように心がけていました。
気分転換は勉強一色にしないこと
一日に占める勉強時間の割合が増えてきて、それが続いていくとどうしてもストレスがたまってきます。私の場合、それなりにうまく解消できていたようで、その理由に挙げられるのがアルバイトの継続でした。
私は大学時代に3つ、アルバイトをしていました。一つは塾の講師、一つはケーキ屋の店員、一つは中学校の「スクールサポーター」です。スクールサポーターとは、幼稚園や小学校、中学校に大学生が先生のお手伝いとして参加する自治体の事業「学校教育活動支援事業」の支援者に対する呼称です。私は奈良市内で活動していました。不登校の子で教室に行けない子と別室で一緒に勉強をしたり、障害のある子のクラスで一緒に授業を受けて補佐をしたり、放課後や休日には吹奏楽部でトランペットを教えたり、一緒に演奏会に出演したりといった活動をしていました。
このうち、塾の講師は夏まで続け、ケーキ屋は平日の授業が終わった後や土日9〜17時の勤務を続けました。スクールサポーターも、試験月の1月以外はできるかぎり活動しました。
所属していたジャズクラブの活動は控えていましたが、ライブを観に行って、後輩や同級生のキラキラした姿をみて、元気をもらいリフレッシュしたり、時にはトランペットも吹いたりして発散していました。
私は大学時代に3つ、アルバイトをしていました。一つは塾の講師、一つはケーキ屋の店員、一つは中学校の「スクールサポーター」です。スクールサポーターとは、幼稚園や小学校、中学校に大学生が先生のお手伝いとして参加する自治体の事業「学校教育活動支援事業」の支援者に対する呼称です。私は奈良市内で活動していました。不登校の子で教室に行けない子と別室で一緒に勉強をしたり、障害のある子のクラスで一緒に授業を受けて補佐をしたり、放課後や休日には吹奏楽部でトランペットを教えたり、一緒に演奏会に出演したりといった活動をしていました。
このうち、塾の講師は夏まで続け、ケーキ屋は平日の授業が終わった後や土日9〜17時の勤務を続けました。スクールサポーターも、試験月の1月以外はできるかぎり活動しました。
所属していたジャズクラブの活動は控えていましたが、ライブを観に行って、後輩や同級生のキラキラした姿をみて、元気をもらいリフレッシュしたり、時にはトランペットも吹いたりして発散していました。
こんなに緊張するなんて
国家試験に臨む過程としては、それなりに順調だったと思います。でも、試験の手応えは「全然できなかった」でした。不思議だったのは、問題を解いているときは、いろんな単語がはじめて目にするものに見えて、試験が終わって改めて見直すと、これはあれだっんだと思い出されてくることでした。国家試験本番という特別な緊張状態のなかで、記憶も理解力も低まっていたのかもしれません。
ともかく、とても自信のもてる出来栄えではなく、特に社会福祉士のほうは自己採点の結果からも8割方あきらめていました。
合否は発表当日にパソコンで確認しました。はじめに精神保健福祉士のほうから。すごく緊張して、画面をスクロールする手がふるえました。自分の番号が近づくにつれ緊張は高まり……番号を見つけてびっくりしました。「あった!」と。
すぐに両親と学校の先生に連絡しました。うれしさいっぱいで父に報告し喜んでいると、「もう一つのはどうだった?」と訊かれました。社会福祉士の結果を見るのを忘れていたのです。すぐさま発表を見に行き、こちらの合格も確認しました。両方合格できたなんて、すぐには信じられない気持ちでした。
皆さんも、まずは資格取得に向けて頑張ってください。 一人でも多くの方が福祉の現場に魅力を感じてくれることを願っています。応援しています。
ともかく、とても自信のもてる出来栄えではなく、特に社会福祉士のほうは自己採点の結果からも8割方あきらめていました。
合否は発表当日にパソコンで確認しました。はじめに精神保健福祉士のほうから。すごく緊張して、画面をスクロールする手がふるえました。自分の番号が近づくにつれ緊張は高まり……番号を見つけてびっくりしました。「あった!」と。
すぐに両親と学校の先生に連絡しました。うれしさいっぱいで父に報告し喜んでいると、「もう一つのはどうだった?」と訊かれました。社会福祉士の結果を見るのを忘れていたのです。すぐさま発表を見に行き、こちらの合格も確認しました。両方合格できたなんて、すぐには信じられない気持ちでした。
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今、私は精神科病院の相談員として勤務しています。担当の患者さんもいて、この方々との一つひとつのかかわりを大事にしていきたいと思っています。悩むこともありますが、患者さんやご家族に“中野さん”と名前を呼ばれるたびに喜びを感じています。希望する職場で働くことができ、毎日にやりがいを感じています。20代のうちはひたすら勉強をし、自分の中の引き出しをたくさん作っていきたいと思っています。皆さんも、まずは資格取得に向けて頑張ってください。 一人でも多くの方が福祉の現場に魅力を感じてくれることを願っています。応援しています。
今年の夏、大好きなディズニーの世界で
ホッと癒されました。
両隣は小学生の時からの親友。
いつも支えてもらっています。
ホッと癒されました。
両隣は小学生の時からの親友。
いつも支えてもらっています。