ケアサービスを提供するうえで、鍵となる“記録”。その役割を再確認し、実践に活かすにはどうしたらよいか、考えてみましょう。本連載では、施設における“記録”を取り上げていきます。
最終回 介護記録におけるリスクマネジメント(3)
『リスクマネジメントの視点を活かした記録』
一年を通じてお伝えしてきました「暮らしの場における介護記録」も、今回で最終講となりました。
そこで今回は、一年間の振り返りの意味を込めて、今までご説明した内容を“包括”する介護記録の一例をご紹介したいと思います。
まずは、資料をご覧ください。
そこで今回は、一年間の振り返りの意味を込めて、今までご説明した内容を“包括”する介護記録の一例をご紹介したいと思います。
まずは、資料をご覧ください。
これは、第19回『提供サービス記録』(3)でご紹介した「週間サービス計画表」を活用した「提供サービス記録」です(第19回では資料1としてご紹介しています)。
第19回でご紹介したものを多少アレンジしてありますが、とりあえずは、今までご紹介してきた要素を網羅していると言える様式です。
いくつかのポイントに分けて確認してみましょう。
第19回でご紹介したものを多少アレンジしてありますが、とりあえずは、今までご紹介してきた要素を網羅していると言える様式です。
いくつかのポイントに分けて確認してみましょう。
ポイント1
「提供サービス記録」が、「日々の具体的なサービス提供の記録」であり、かつ、効率的、実用的であるためには、「データ」として記録する欄と、「気づき」を示す欄が必要であることをご説明してきました。
この書式においては、「データ」にあたる「ルーティンサービス」は、「週間計画表」からそのまま転記してあります(資料の1)。
こうすることによって、提供サービスの内容と日時等が「証」として残っていくことになります。
この書式においては、「データ」にあたる「ルーティンサービス」は、「週間計画表」からそのまま転記してあります(資料の1)。
こうすることによって、提供サービスの内容と日時等が「証」として残っていくことになります。
ポイント2
計画表からの転記という形で「データ」を残しても、あくまでもそれは予定に過ぎません。日々のサービスの中では「サービスの変更(または中止)」もありえます。
その対応例が、木曜日の「入浴」と「就寝」の記載例です(資料の2)。
予定のサービスを修正し、実際のサービスの状況を示しておきます。
この際、「記録の訂正」になりますので、第22回『ルールの明文化』でご説明した略語の使用法同様に、組織内で記録訂正に関するルールを決め、明文化を図り、統一した対応をとることが必要です。
修正液などを用いずに、修正前と後の状況が明確に残るようにしなければなりません。
その対応例が、木曜日の「入浴」と「就寝」の記載例です(資料の2)。
予定のサービスを修正し、実際のサービスの状況を示しておきます。
この際、「記録の訂正」になりますので、第22回『ルールの明文化』でご説明した略語の使用法同様に、組織内で記録訂正に関するルールを決め、明文化を図り、統一した対応をとることが必要です。
修正液などを用いずに、修正前と後の状況が明確に残るようにしなければなりません。
ポイント3
「データ」の部分が処理できたら、次は「気づき」を示す部分です。
これは、「データ」記載だけではカバーできない、記録の更新制を示す大事な要素も含んでいます。「データ」と「気づき」が揃って、コンプライアンスに準拠した「記録」が成立するということを改めて確認しておいてください。
一般的に「気づき」を示すのは「特記事項」の欄で、文章で記録が残されることになります(資料の3)。
さらに、この「気づき」は、計画書の「長期目標」に準拠しているかどうかが重要です。そのことは第18回『提供サービス記録』(2)でご説明した通りです。
ちなみに、今回ご紹介しているケースの場合、長期目標として、以下の2点が掲げられています。
「1.現状の体力(特に歩行)を維持できるように支援する」
「2.趣味活動(囲碁)の継続ができるよう環境を整備し、生活意欲の向上に努める」
また、木曜日の「データ」の修正とリンクした「気づき」の記載や、金曜日の「プロの推測」にあたる記載は確認をしてみてください。
火曜日の「特記事項」に訂正をしてある記載が見られますが、ここも[ポイント2]同様、ルールに則った対応が必要です。
これは、「データ」記載だけではカバーできない、記録の更新制を示す大事な要素も含んでいます。「データ」と「気づき」が揃って、コンプライアンスに準拠した「記録」が成立するということを改めて確認しておいてください。
一般的に「気づき」を示すのは「特記事項」の欄で、文章で記録が残されることになります(資料の3)。
さらに、この「気づき」は、計画書の「長期目標」に準拠しているかどうかが重要です。そのことは第18回『提供サービス記録』(2)でご説明した通りです。
ちなみに、今回ご紹介しているケースの場合、長期目標として、以下の2点が掲げられています。
「1.現状の体力(特に歩行)を維持できるように支援する」
「2.趣味活動(囲碁)の継続ができるよう環境を整備し、生活意欲の向上に努める」
また、木曜日の「データ」の修正とリンクした「気づき」の記載や、金曜日の「プロの推測」にあたる記載は確認をしてみてください。
火曜日の「特記事項」に訂正をしてある記載が見られますが、ここも[ポイント2]同様、ルールに則った対応が必要です。
ポイント4
この様式では、毎日の記載欄以外に、週単位以外のサービス等についても記載する欄があります。ここの「特記事項」の欄は毎週毎週記載する必要はないのかもしれませんが、「長期目標」に沿って、何か「気づき」があれば、記録として残しておくと、モニタリングの一環として、計画の見直し時に活用することが可能となり、有用と言えます(資料の4)。
ポイント5
最後に資料の5(資料右上)をご覧ください。記録の確認欄があります。
ここには、記載者を明記するのは当然ですが、それ以外にもリスクマネジメントの視点からすると「現場責任者」「管理責任者」の確認欄も必要になります。
この様式では、主任や部長が「現場責任者」、施設長が「管理責任者」にあたります。
本来なら、一日一日の「記録」に毎回この欄があった方が理想的なのでしょうが、この様式は週単位で一枚の書式ができあがりますので、効率化と簡素化を図り、週単位で主任や部長、さらには施設長に確認してもらう形式を採用しています。
この様式が最善だとは言い切れませんが、この確認欄は忘れてはいけません。
以上、例を用いて、今までお伝えしてきたことを振り返りました。今後の皆様の施設の「記録」に少しでも参考になればと思います。
一年間、ご愛読いただき、誠にありがとうございました。
ここには、記載者を明記するのは当然ですが、それ以外にもリスクマネジメントの視点からすると「現場責任者」「管理責任者」の確認欄も必要になります。
この様式では、主任や部長が「現場責任者」、施設長が「管理責任者」にあたります。
本来なら、一日一日の「記録」に毎回この欄があった方が理想的なのでしょうが、この様式は週単位で一枚の書式ができあがりますので、効率化と簡素化を図り、週単位で主任や部長、さらには施設長に確認してもらう形式を採用しています。
この様式が最善だとは言い切れませんが、この確認欄は忘れてはいけません。
以上、例を用いて、今までお伝えしてきたことを振り返りました。今後の皆様の施設の「記録」に少しでも参考になればと思います。
一年間、ご愛読いただき、誠にありがとうございました。
参考資料
NPO法人神奈川介護支援専門員協会 編集『オリジナル様式から考えるケアマネジメント実践マニュアル 施設編』 中央法規出版