ケアサービスを提供するうえで、鍵となる“記録”。その役割を再確認し、実践に活かすにはどうしたらよいか、考えてみましょう。本連載では、施設における“記録”を取り上げていきます。
第20回 介護記録のコンプライアンス―法的枠組み―(5)
『事故関係記録』
前回までは「計画書」「提供サービス記録」の要件を確認してきました。今回は「事故関係記録」の要件とは何かを考えてみたいと思います。
「事故関係記録」=「事故報告書」+「ヒヤリハット報告書」
「事故関係記録」は、運営規定には「事故の状況及び事故に際して採った処置についての記録」と明記されており、全ての介護保険事業において必ず整備されなければならない記録として位置付けられています。
この運営規定だけを見ると、自己発生時の記録、即ち「事故報告書」だけを想定しがちですが、ここでは「事故報告書」のみならず、事故未然対策としての「ヒヤリハット(インシデント)報告書」も含むと考えた方が現実に即しています。
それを踏まえて資料をご覧ください。これは「事故関係記録」の様式の一例ですが、「報告」という観点から見ると、基本的には「事故報告書」も「ヒヤリハット報告書」も共通様式で別段差し支えないと思われますので、「ヒヤリハット・事故報告書」として用意してみました。「ヒヤリハット」か「事故」か、必要な言葉をどちらか選択して、場合に応じて使い分ければ、より機能的でしょう(むやみに形式だけを増やしても管理が大変です)。
ただ、様式を統一した場合、一点だけ注意していただくことがあります。それは、様式は同じでも、その目的・機能は全く別のものであるという認識を、組織末端まで浸透させることです。
この運営規定だけを見ると、自己発生時の記録、即ち「事故報告書」だけを想定しがちですが、ここでは「事故報告書」のみならず、事故未然対策としての「ヒヤリハット(インシデント)報告書」も含むと考えた方が現実に即しています。
それを踏まえて資料をご覧ください。これは「事故関係記録」の様式の一例ですが、「報告」という観点から見ると、基本的には「事故報告書」も「ヒヤリハット報告書」も共通様式で別段差し支えないと思われますので、「ヒヤリハット・事故報告書」として用意してみました。「ヒヤリハット」か「事故」か、必要な言葉をどちらか選択して、場合に応じて使い分ければ、より機能的でしょう(むやみに形式だけを増やしても管理が大変です)。
ただ、様式を統一した場合、一点だけ注意していただくことがあります。それは、様式は同じでも、その目的・機能は全く別のものであるという認識を、組織末端まで浸透させることです。
「ヒヤリハット報告書」の作成
「ヒヤリハット報告書」については、管理者が積極的に提出することを奨励するくらいの状況でないと、必ず作成するものだという共通認識が生まれず、機能が発揮できません。「ヒヤリハット報告書」は、同じ環境で働く者に対して、自分が「肝を冷やした」経験を通して注意を呼びかけるための「記録」ですから、一枚でも多く提出された方が、リスクが小さいうちにより迅速に問題に対応できることになります。
この点から考えても、ヒヤリハットの内容を適切に残していくことが重要になるのですが、その際にひと工夫が必要です。
資料のA及びBの欄は、「発生状況」を報告する欄ですが、文章だけで事態を他者に伝えるにはどうしても限界があります。それを補うためにも、是非、Bの「略図」のような視覚に訴える方法を併用してください。より伝わりやすく、理解しやすくなるはずです。
また、「ヒヤリハット報告書」では、「発生状況」を伝えることも重要なのですが、それより大切なのが、そのヒヤリハットの原因追究と打開策の提示です。いかに事故を防ぐかがこの「記録」の使命なのですから、この欄(資料のC欄)が空白だと「記録」としての要件を満たすことができません
この点から考えても、ヒヤリハットの内容を適切に残していくことが重要になるのですが、その際にひと工夫が必要です。
資料のA及びBの欄は、「発生状況」を報告する欄ですが、文章だけで事態を他者に伝えるにはどうしても限界があります。それを補うためにも、是非、Bの「略図」のような視覚に訴える方法を併用してください。より伝わりやすく、理解しやすくなるはずです。
また、「ヒヤリハット報告書」では、「発生状況」を伝えることも重要なのですが、それより大切なのが、そのヒヤリハットの原因追究と打開策の提示です。いかに事故を防ぐかがこの「記録」の使命なのですから、この欄(資料のC欄)が空白だと「記録」としての要件を満たすことができません
「ヒヤリハット報告書」の活用
さらに、この記録は全従事者に周知徹底することによって要件が完全に満たされることになります。
そのため、基本的には「2週間を目安として、全従事者に回覧、全従事者押印又はサイン」することを原則とするのがよいでしょう。しかし、交代性勤務等の都合で困難が伴う場合、資料のDの欄のように、部署ごとの押印欄を設けて、その部署の責任者が部署全員に周知徹底することで管理し、組織全体の浸透を図るという方法もあります。
その施設(事業所)ごとに工夫をして、より早く、より確実に、全従事者の視覚に訴えてインシデントを意識させる、認識させるシステムを確立することが重要です。
最後に、この様式を「事故報告書」として用いる場合、Dの欄を使用するかどうかはその時の判断に委ねられるということも申し添えておきます。
そのため、基本的には「2週間を目安として、全従事者に回覧、全従事者押印又はサイン」することを原則とするのがよいでしょう。しかし、交代性勤務等の都合で困難が伴う場合、資料のDの欄のように、部署ごとの押印欄を設けて、その部署の責任者が部署全員に周知徹底することで管理し、組織全体の浸透を図るという方法もあります。
その施設(事業所)ごとに工夫をして、より早く、より確実に、全従事者の視覚に訴えてインシデントを意識させる、認識させるシステムを確立することが重要です。
最後に、この様式を「事故報告書」として用いる場合、Dの欄を使用するかどうかはその時の判断に委ねられるということも申し添えておきます。