ケアサービスを提供するうえで、鍵となる“記録”。その役割を再確認し、実践に活かすにはどうしたらよいか、考えてみましょう。本連載では、施設における“記録”を取り上げていきます。
第3回 記録の誤解
前回、「記録を残す」という行為には二つの目的があることをご説明しました。「利用者の生活の証を記す」という目的、そしてもう一つは「提供者の支援の証を残す」という目的です。
「記録」を残すというのは、利用者のためでもあり、サービス提供者自らのためでもあるという認識を持つ必要があることもご理解いただけたことと思います。この認識は、ケアサービスに「職」として従事するものであれば、当然持ち合わせなければならないことで、これは「プロ」としての「責務」だと言えます。
この点から見ると、「記録」に関する「常識」として誤解をされていることがいくつか存在します。今回はその「誤解」を解消していただきたいと思います。
「記録」を残すというのは、利用者のためでもあり、サービス提供者自らのためでもあるという認識を持つ必要があることもご理解いただけたことと思います。この認識は、ケアサービスに「職」として従事するものであれば、当然持ち合わせなければならないことで、これは「プロ」としての「責務」だと言えます。
この点から見ると、「記録」に関する「常識」として誤解をされていることがいくつか存在します。今回はその「誤解」を解消していただきたいと思います。
専門用語は使ってはいけないの?
まず、第一に「記録には専門用語を用いるべきではない」という誤解です。
これは、介護保険制度が導入され、サービス提供者側に「情報の開示」が義務づけされたことによる誤解だと思われます。確かに利用者等から「開示」を求められた場合、「介護記録」は利用者の個人情報になりますので、提供者側はその要求に積極的に応じなければなりません。そして、それは開示すれば足りるというものではなく、「説明責任(Accountability)」を伴います。
もし、専門用語を用いたことで「開示」の際に開示請求者の理解に困難を来たす状況であれば、提供者として解説書を添付するなり、請求者が納得するように説明するなりしなければなりません。また、そうすることで専門用語使用による開示の際の問題は解決するはずです。たとえ、「専門用語」を用いずに平易な文章で記載してあったとしても、「内容」の理解が伴わなければ意味を成しません。
さらに、記録とはサービス提供側の「プロ」としての「仕事の証」です。その「業務に関する記録」に「専門用語」が用いられていないというのは非常に不自然です。また、ケアサービス特有の専門用語を平易な用語で表現し直すという努力は、「記録」を完璧に残すことが不完全な状態では徒労と言えないでしょうか?
現状では、まず自分達の仕事の証を適切に残すことが先決のはずです。「記録」を上手く残せない者が、この点ばかりに意識が集中してしまうと、「記録」の本来の機能「共有」に支障を来たす恐れがあります。
ただし、この点でご注意いただきたいのは、「専門用語」とケアサービス業界内のみで通用する「略語」の類とは区別が必要だということです。この件に関しては、別の機会に詳細にご説明したいと思います。
これは、介護保険制度が導入され、サービス提供者側に「情報の開示」が義務づけされたことによる誤解だと思われます。確かに利用者等から「開示」を求められた場合、「介護記録」は利用者の個人情報になりますので、提供者側はその要求に積極的に応じなければなりません。そして、それは開示すれば足りるというものではなく、「説明責任(Accountability)」を伴います。
もし、専門用語を用いたことで「開示」の際に開示請求者の理解に困難を来たす状況であれば、提供者として解説書を添付するなり、請求者が納得するように説明するなりしなければなりません。また、そうすることで専門用語使用による開示の際の問題は解決するはずです。たとえ、「専門用語」を用いずに平易な文章で記載してあったとしても、「内容」の理解が伴わなければ意味を成しません。
さらに、記録とはサービス提供側の「プロ」としての「仕事の証」です。その「業務に関する記録」に「専門用語」が用いられていないというのは非常に不自然です。また、ケアサービス特有の専門用語を平易な用語で表現し直すという努力は、「記録」を完璧に残すことが不完全な状態では徒労と言えないでしょうか?
現状では、まず自分達の仕事の証を適切に残すことが先決のはずです。「記録」を上手く残せない者が、この点ばかりに意識が集中してしまうと、「記録」の本来の機能「共有」に支障を来たす恐れがあります。
ただし、この点でご注意いただきたいのは、「専門用語」とケアサービス業界内のみで通用する「略語」の類とは区別が必要だということです。この件に関しては、別の機会に詳細にご説明したいと思います。
どんな文体で書けばいいの?
第二の誤解として「文体(調)」の問題があります。
特に高齢者が対象のケアサービスにおいて、利用者が人生の大先輩であることから、敬意を表するという意味でも、「専門用語」の問題と同じで「開示」の際の対応を考えても丁寧語を用いた記載方法、俗に言う「ですます調(敬体)」を用いるべきだとの意見があります。
しかしながら、ケアサービスにおける「記録」は、再三ご説明している通り、提供者の仕事の証、あるいは「責務」として残すものであり、公式の場(例えば「訴訟」)においても「証拠」として用いられる、いわば「公式文書」ですので、「である調(常体)」で記して構いません。現場が記録の記載で困惑している現状では、敬体で記載することの「弊害」が大きいのは専門用語の誤解のところでご説明した通りです。
特に高齢者が対象のケアサービスにおいて、利用者が人生の大先輩であることから、敬意を表するという意味でも、「専門用語」の問題と同じで「開示」の際の対応を考えても丁寧語を用いた記載方法、俗に言う「ですます調(敬体)」を用いるべきだとの意見があります。
しかしながら、ケアサービスにおける「記録」は、再三ご説明している通り、提供者の仕事の証、あるいは「責務」として残すものであり、公式の場(例えば「訴訟」)においても「証拠」として用いられる、いわば「公式文書」ですので、「である調(常体)」で記して構いません。現場が記録の記載で困惑している現状では、敬体で記載することの「弊害」が大きいのは専門用語の誤解のところでご説明した通りです。