ケアサービスを提供するうえで、鍵となる“記録”。その役割を再確認し、実践に活かすにはどうしたらよいか、考えてみましょう。本連載では、施設における“記録”を取り上げていきます。
第8回 他者に伝える(1)
情報共有の“Key Word”『動作主体』
前回、「記録」と「日記」には、「他者の目を意識するかどうか」の違いがあることをご説明しました。これは、目に見える形としては「動作主体の表現」というものに表れます。つまり、「主語」を明確に書き表すか否かという点です。
【日記】 動作主体=書き手=読み手
日記の「動作主体(主語)」は、基本的に「書き手(情報発信者)」である「自分」であることが多く、また、「読み手(情報受信者)」も「自分」であるのが一般的です。ですから、動作主体である「主語」を明確に表現しなくとも、情報を伝えるのに何ら支障はありません。
【記録】 動作主体≠書き手≠読み手
しかし、記録は日記と違い、「動作主体(主語)」が「書き手(情報発信者)」ではなく、また、「読み手(情報受信者)」が「第三者」であることが想定されています。即ち、記録では、書き手と読み手が、共通認識を持たない未知のものを情報としてやりとりする可能性も非常に高いということです。
書き手と読み手をつなぐもの
この状態では「共有」という目的に関して高いリスクが介在する恐れがありますので、書き手は、そのリスクを回避するためにも、動作主体を明確に表現しなければなりません。
例えば、ある利用者の記録に関して、施設(サービス提供者)としては病院受診を勧めている状況で、記録には「病院受診を勧めるも、拒否している。」と残してあれば、確実な「共有」が可能か?ということです。
この記載だけではなく、前後の記載と読み比べれば、動作主体も明確になるのかもしれません。しかしこれでは、常に確実な「共有」は望めませんし、場合によっては誤解が生じ、トラブルが発生する恐れもあります。
この情報を確実なものにするには、誰が受診を勧めていて、誰が拒否しているのかを明確にする必要があります。そうしなければ、受診を勧めているのが「施設(サービス提供者)」なのか、それとも「主治医等の医療関係者」なのかが明確でありません。拒否しているのも「利用者本人」かもしれませんが、「家族」ということも考えられます。
このように、動作主体が明確でないと、読み手は、その記録から自分のなすべきことが判断できず、サービスの停滞を招いたり、書き手が求めたサービスと異なるサービスを実施し、重大なミスにつながる可能性が存在してしまいます。
また、このように完全に動作主体が欠落しているケースも要注意ですが、中途半端な記載も現場ではよく見受けられ、注意が必要です。「家族から外泊許可を求める連絡があった。」といった記述がこれに相当します。「家族」とは一体誰なのでしょうか? たとえ、日頃その利用者のことに関しては連絡を取り合っているのが配偶者だけだとしても、この「外泊許可」を配偶者が求めてきたとは限らないはずです。別居している子どもが許可を求めてきたということも十分考えられます。
例えば、ある利用者の記録に関して、施設(サービス提供者)としては病院受診を勧めている状況で、記録には「病院受診を勧めるも、拒否している。」と残してあれば、確実な「共有」が可能か?ということです。
この記載だけではなく、前後の記載と読み比べれば、動作主体も明確になるのかもしれません。しかしこれでは、常に確実な「共有」は望めませんし、場合によっては誤解が生じ、トラブルが発生する恐れもあります。
この情報を確実なものにするには、誰が受診を勧めていて、誰が拒否しているのかを明確にする必要があります。そうしなければ、受診を勧めているのが「施設(サービス提供者)」なのか、それとも「主治医等の医療関係者」なのかが明確でありません。拒否しているのも「利用者本人」かもしれませんが、「家族」ということも考えられます。
このように、動作主体が明確でないと、読み手は、その記録から自分のなすべきことが判断できず、サービスの停滞を招いたり、書き手が求めたサービスと異なるサービスを実施し、重大なミスにつながる可能性が存在してしまいます。
また、このように完全に動作主体が欠落しているケースも要注意ですが、中途半端な記載も現場ではよく見受けられ、注意が必要です。「家族から外泊許可を求める連絡があった。」といった記述がこれに相当します。「家族」とは一体誰なのでしょうか? たとえ、日頃その利用者のことに関しては連絡を取り合っているのが配偶者だけだとしても、この「外泊許可」を配偶者が求めてきたとは限らないはずです。別居している子どもが許可を求めてきたということも十分考えられます。
動作主体を明確にする
記録を記載した者には、「周知の事実」でも、他者にとっては「未知の情報」であることが往々にしてあります。このギャップを解消するためにも、情報発信者は、記録を残す際には「動作主体」のことを意識して明確に表現することが必要です。
最後に、今回は「動作主体」について述べましたが、これは「5W1H―Who(誰)、When(何時)、Where(何処)、What(何)、Why(何故)、How(どのようにして)」全体についても同様であることを付け加えておきます。
最後に、今回は「動作主体」について述べましたが、これは「5W1H―Who(誰)、When(何時)、Where(何処)、What(何)、Why(何故)、How(どのようにして)」全体についても同様であることを付け加えておきます。