ケアサービスを提供するうえで、鍵となる“記録”。その役割を再確認し、実践に活かすにはどうしたらよいか、考えてみましょう。本連載では、施設における“記録”を取り上げていきます。
第18回 介護記録のコンプライアンス―法的枠組み―(3)
『提供サービス記録』(2)
前回「提供サービス記録(1)」には、「気づき」を残すことが重要だとご説明しました。今回は、その「気づき」についてご説明いたしましょう。
「気づき」とは具体的に何か?
日々のサービスを行う上で、プロとして、また金銭契約に基づいて利用者とかかわっているのであれば、絶えず、ある基準を考慮してサービス提供に務めているかが問題になります。ここでいう基準というのが、「計画書」に示す「長期目標」や「総合的な援助の方針」なのです。「長期目標」や「総合的な援助の方針」は、利用者や家族にも分かっていただきたいものですが、それ以上に、サービスを提供する者全てが、その内容を的確に把握しなければならないものです。
つまり、サービスに従事している全員(ベテランも新人も)が、「計画書」に準拠し、「長期目標」や「総合的な援助の方針」を理解して行動したうえで、それを日々の仕事の証として記録に残していることが非常に重要なのです。この点から考えると、計画策定者は、利用者のみならず、サービス従事者全員に対しても、「説明責任」を負っているといえるのかもしれません。
「計画書」の「長期目標」に「排泄の自立支援」ということがうたってあるのに、日々の「提供サービス記録」に排泄の自立に関する視点がなく、「レクレーション参加の状況」や「入浴の状況」のみしかないとすると、それは求められている「気づき」にはなっていないということなのです。
つまり、サービスに従事している全員(ベテランも新人も)が、「計画書」に準拠し、「長期目標」や「総合的な援助の方針」を理解して行動したうえで、それを日々の仕事の証として記録に残していることが非常に重要なのです。この点から考えると、計画策定者は、利用者のみならず、サービス従事者全員に対しても、「説明責任」を負っているといえるのかもしれません。
「計画書」の「長期目標」に「排泄の自立支援」ということがうたってあるのに、日々の「提供サービス記録」に排泄の自立に関する視点がなく、「レクレーション参加の状況」や「入浴の状況」のみしかないとすると、それは求められている「気づき」にはなっていないということなのです。
毎日、一人一人に対して残す
さらに、契約は施設と利用者及び家族と個々に結ばれているはずですから、計画書は利用者個々に存在し、「提供サービス記録」も個々に存在するはずです。また、施設では365日24時間継続してサービスを提供しているはずですから、毎日の記録が存在していなければなりません。「利用者及び家族」への「説明責任」を果たすためにも、この点は重要です。
皆様の施設ではいかがですか? 利用者や家族から「○年○月○日のサービスの具体的な記録を開示してほしい」と請求された場合、きちんと対応が可能ですか?
「当施設では、集団処遇をしていますので、日時を限定した個々人の記録は存在しません」などという回答は通用しないのはおわかりいただけるでしょう。
皆様の施設ではいかがですか? 利用者や家族から「○年○月○日のサービスの具体的な記録を開示してほしい」と請求された場合、きちんと対応が可能ですか?
「当施設では、集団処遇をしていますので、日時を限定した個々人の記録は存在しません」などという回答は通用しないのはおわかりいただけるでしょう。
「気づき」の残し方は?
つまり、個々の利用者を支援するためには、チームケア成員が「計画書」を理解し、それに基づいてケアを実施し、その結果として「記録」に「気づき」を残す。この一連の過程を成立させる必要があります。新人だから、非常勤だから、「計画書」を理解していないというのでは、ケアサービス自体が成立しないのです。
しかし、そう分かっていても、この「要件」を満たすことは容易ではありません。毎日毎日、50名近く(もしくはそれ以上)の利用者の個々の記録を「適切に」残すというのは、大変な労力と時間を必要とします。
効率よく、かつ適切に記録を残していくことが、施設の「提供サービス記録」に求められています。この点は今後ますます重要視されてくることが、判例等を見ていると容易に予測できます。
そこで、この要件を充足させる「提供サービス記録」の例として、次回、いくつかの様式をご紹介したいと思います。
しかし、そう分かっていても、この「要件」を満たすことは容易ではありません。毎日毎日、50名近く(もしくはそれ以上)の利用者の個々の記録を「適切に」残すというのは、大変な労力と時間を必要とします。
効率よく、かつ適切に記録を残していくことが、施設の「提供サービス記録」に求められています。この点は今後ますます重要視されてくることが、判例等を見ていると容易に予測できます。
そこで、この要件を充足させる「提供サービス記録」の例として、次回、いくつかの様式をご紹介したいと思います。