Vol.71 年金の損得はここがポイント(2)〜老齢基礎年金の繰上げ受給〜
川村匡由(社会福祉学者)
年金受給の時効はなくなったが…
しかし、あまりの保険者に関するデータの管理がずさんなうえ、そもそも老後の“トラの子”である年金に時効があること自体、おかしな話ということで、年金時効特例法が2007(平成19)年7月に成立・施行したことに伴い、年金記録の訂正による年金の増加分は時効によって消滅した分を含め、本人、または遺族に全額が支給されるようになりました。
その意味で、今までのように泣き寝入りをしなくても済むようになりましたが、やはり、自分はどのような年金に加入しており、保険料はどのくらい納めているのか、また、納めてきたのか、すべての領収書を揃えておくとともに、どのような要件になったら、どのような年金をどのような手続きですれば何歳から受給できるのか、現役時代から整理しておくことが大切です。
老齢基礎年金の『繰り上げ受給』は慎重に
ところで、前回、老齢基礎年金の「繰り上げ受給」で、「希望すれば60〜64歳からでも受給できますが、この場合、その年齢に応じ、減額され、以後、変更できないので十分注意して下さい」といいましたが、その点をもう少しくわしくお話ししましょう。
確かに、そのとおりですので、60歳になったら、社会保険庁から「老齢基礎年金の受給は何歳にしますか」と照会状が届けられます。これは、「あなたは国民年金から老齢基礎年金の『繰り上げ受給』の権利を取得できた。そこで、その受給を満額の年金額を受ける65歳まで待つか、それとも60〜64歳からの『繰り上げ受給』、あるいは66歳以上の『繰り下げ受給』のいずれにするか」というお尋ねです。
そこで、多くの自営業・自由業および専業主婦はハムレットの心境になるわけです。
「両親や祖父母は寿命が長かったので、私も長生きしそうだから65歳、いや、66歳以上にしようかしら」、「いやいや、寿命なんてだれもわからないし、最近の年金行政を考えると、この先どうなるかわからないので、生涯、減額されたままでもいいから、早めに受給した方が得策かも…」。
しかし、老齢基礎年金の『繰り上げ受給』を選択した場合、年金額は生涯、減額されたままになるだけでなく、それ以降、万一、障害者になっても国民年金からの障害基礎年金は原則として請求できなくなるほか、将来、転職して厚生年金の被保険者になった場合、繰り上げた老齢基礎年金は支給停止になります。また、国民年金に25年以上加入した夫が死亡しても、寡婦年金(国民年金に25年以上加入した夫と死別した妻に対し、60〜65歳未満まで支給される年金)の請求などができなくなります(死亡一時金は受給できる)。
いずれにしても、このように老齢基礎年金の『繰り上げ受給』はよく考えて後悔などしないようにしましょう。
*
次回は「年金の損得はここがポイント(3)」についてお話ししましょう。
確かに、そのとおりですので、60歳になったら、社会保険庁から「老齢基礎年金の受給は何歳にしますか」と照会状が届けられます。これは、「あなたは国民年金から老齢基礎年金の『繰り上げ受給』の権利を取得できた。そこで、その受給を満額の年金額を受ける65歳まで待つか、それとも60〜64歳からの『繰り上げ受給』、あるいは66歳以上の『繰り下げ受給』のいずれにするか」というお尋ねです。
そこで、多くの自営業・自由業および専業主婦はハムレットの心境になるわけです。
「両親や祖父母は寿命が長かったので、私も長生きしそうだから65歳、いや、66歳以上にしようかしら」、「いやいや、寿命なんてだれもわからないし、最近の年金行政を考えると、この先どうなるかわからないので、生涯、減額されたままでもいいから、早めに受給した方が得策かも…」。
しかし、老齢基礎年金の『繰り上げ受給』を選択した場合、年金額は生涯、減額されたままになるだけでなく、それ以降、万一、障害者になっても国民年金からの障害基礎年金は原則として請求できなくなるほか、将来、転職して厚生年金の被保険者になった場合、繰り上げた老齢基礎年金は支給停止になります。また、国民年金に25年以上加入した夫が死亡しても、寡婦年金(国民年金に25年以上加入した夫と死別した妻に対し、60〜65歳未満まで支給される年金)の請求などができなくなります(死亡一時金は受給できる)。
いずれにしても、このように老齢基礎年金の『繰り上げ受給』はよく考えて後悔などしないようにしましょう。
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次回は「年金の損得はここがポイント(3)」についてお話ししましょう。
(2009年4月24日)