Vol.5 老後の生活費と年金
川村匡由(社会福祉学者)
老後の月額の生活費と公的年金の目安を
人口減少社会の到来を受けてか、最近、また、新聞やテレビ、週刊誌などで「人生80年時代における老後の生活資金はいくらぐらい必要か」といった特集の記事や番組が目立っていますが、このような質問に対し、みなさんはどう答えられるのでしょうか。ある人は「2000万円ほど」といわれるかと思えば、また、別のある人は「3000万円ぐらいではないか」などと返答をされるかもしれません。
しかし、老後の生活資金の大半は公的年金で賄われるため、総額で考えるのではなく、月額で考えれば何ら心配はありません。にもかかわらず、あえてこのような問いかけをして必要以上に不安をあおるのは問題で、公的年金を所管する厚生労働省が関係業界に対し、国民に誤解を与えるようなコマーシャルは厳に慎むよう、注意したことはまだ記憶に新しいところでしょう。
そこで、賢明なみなさんはこのような利益誘導に惑わされず、まずは自分の老後の月額の生活費と公的年金の目安をつけ、その対策を講ずることが大切です。
しかし、老後の生活資金の大半は公的年金で賄われるため、総額で考えるのではなく、月額で考えれば何ら心配はありません。にもかかわらず、あえてこのような問いかけをして必要以上に不安をあおるのは問題で、公的年金を所管する厚生労働省が関係業界に対し、国民に誤解を与えるようなコマーシャルは厳に慎むよう、注意したことはまだ記憶に新しいところでしょう。
そこで、賢明なみなさんはこのような利益誘導に惑わされず、まずは自分の老後の月額の生活費と公的年金の目安をつけ、その対策を講ずることが大切です。
家計簿をチェックして老後の生活水準を考える
また、住んでいる所は都市なのか、地方なのか、その土地の物価はどの程度なのか、これからも都市に住むのか、いずれ故郷にUターンするのか、海外でロングステイを楽しむのかなどなど、人によってさまざまだからです。このほか、現在、健康なのか、病気がちなのか、介護が必要なのか、今は健康でも将来、いつまでも健康という自信があるのか、そもそも家系的に長命なのか、短命なのか、がんなどで死別した親や兄弟、姉妹はいないのかなどによっても違ってきます。
このように考えてみると、要するに先のことはだれも分からないというわけですが、それでは老後対策にならないため、まずは現在の毎月の生活費を家計簿でチェックし、その生活費で老後も過ごすのか、それとも生活費を落とすのか、逆に上げるのか、見きわめることです。その際、住宅ローンの有無や退職金の運用、また、預貯金の残高や生命保険の受け取りの見込み額なども考え合わせます。
退職金や私的年金でも足りなければ再就職
次に、公的年金の受取額ですが、ごく平均的な会社員世帯なら月額約23.4万円というのが相場です。そこで、老後の生活資金の見通しや生活水準に照らし合わせ、公的年金で足りなければ退職金を運用したり、預貯金でやりくりしたりするほか、万一のとき、遺族年金や生命保険はどうなるのか、それぞれの受け取りの見込み額などを試算するとともに、企業年金の見込み額も考え、問題がなければ現状のままとします。それでも足りなければ子どもに仕送りの可否を聞いたり、個人年金への加入、さらには定年後、再就職を考えます。
公的年金の平均受給額(会社員世帯)
※共働きの場合、月額約46.8万円。また、公務員世帯は老齢基礎年金と退職共済年金の合計額となるが、退職共済年金には会社員の企業年金に相当する職域年金部分が加算されるため、月額約25万円となる。
一方、自営業世帯なら月額約13.4万円のうえ、退職金もないため、預貯金や生命保険などの見込み額、子ども夫婦からの仕送りなどの可否、個人年金の加入を考えます。場合によってはサラリーマンに転職するなど、思い切って人生設計を変更することもあり得ましょう。
一方、自営業世帯なら月額約13.4万円のうえ、退職金もないため、預貯金や生命保険などの見込み額、子ども夫婦からの仕送りなどの可否、個人年金の加入を考えます。場合によってはサラリーマンに転職するなど、思い切って人生設計を変更することもあり得ましょう。
公的年金の平均受給額(自営業世帯)
なお、再就職は公共職業安定所(ハローワーク)や人材銀行、シルバー人材センターなどに照会するのが一般的ですが、仲間を募って都道府県に対し、NPO(特定非営利活動法人)の法人格の認証取得のために申請し、福祉や環境保全、まちづくりなどの分野で起業することも一考です。
(2007年6月11日)