Vol.2 老後の生活資金
川村匡由(社会福祉学者)
サラリーマンの生涯賃金は約3億円だが
「50代からの人生設計」を考えるうえでまず大切なことは、老後の生活資金はいくらぐらい必要なのか、ということです。なぜなら、50代から向こう30年以上の長きにわたる老後を安心して送るためには、前回に解説した「5K」のなかでも「経済」に関わるため、おおよその目安をあらかじめ知ったうえ、早めに人生設計を立てる必要があるからです。
そこで、この点を述べる前に、一つ、お考えいただきたいのは生涯で得られる収入についてです。ごく一般的な例として、一家の大黒柱となる男性が四年制の大学を出て一部上場の企業に就職し、途中、とくに転職も転社もせず、定年の60歳まで無事に勤めあげた場合、この約40年というサラリーマン生活で稼ぐ生涯の賃金は、ボーナスや臨時の収入も合わせ、一体、どれくらいになると思われるでしょうか。
ちなみに、ある民間団体の調査によると約3億円になるといわれています。しかし、家庭生活を送るうえで必要不可欠な衣食住に関わる費用や車のローン、友人や知人との交際費、趣味・娯楽費、医療費などさまざまな出費がかさむため、これらに費やされる生活費は約2億5000万円になります。このため、物価が世界一の東京で、一介のサラリーマンが庭付き一戸建てのマイホームを持つことは困難で、せいぜいマンション程度に終わるということです。
そこで、この点を述べる前に、一つ、お考えいただきたいのは生涯で得られる収入についてです。ごく一般的な例として、一家の大黒柱となる男性が四年制の大学を出て一部上場の企業に就職し、途中、とくに転職も転社もせず、定年の60歳まで無事に勤めあげた場合、この約40年というサラリーマン生活で稼ぐ生涯の賃金は、ボーナスや臨時の収入も合わせ、一体、どれくらいになると思われるでしょうか。
ちなみに、ある民間団体の調査によると約3億円になるといわれています。しかし、家庭生活を送るうえで必要不可欠な衣食住に関わる費用や車のローン、友人や知人との交際費、趣味・娯楽費、医療費などさまざまな出費がかさむため、これらに費やされる生活費は約2億5000万円になります。このため、物価が世界一の東京で、一介のサラリーマンが庭付き一戸建てのマイホームを持つことは困難で、せいぜいマンション程度に終わるということです。
定年のない自営業・自由業は退職金もない
なるほど、そういわれてみれば、東京でサラリーマン生活を送る場合、一戸建てのマイホームなど夢のまた夢で、なかには、一生、住宅ローンに追われる借金生活よりも借家住まいの方が安気と割り切る人たちもいるほどです。しかし一口にサラリーマンといっても、その人生観や職業観、家庭生活、生活水準、さらには居住地によっても物価やライフスタイルにもバラつきがあるため、いちがいにいえないことはいうまでもありません。
また、近年、従来の終身雇用・年功序列が崩れているだけでなく、ここ数年、経済のグローバル化や金融ビッグバンなどを背景に、リストラや早期希望退職、あるいは少子高齢化に伴う公的年金の保険料や支給開始年齢の引き上げがあったりします。一方、金額の引き下げ、さらには団塊の世代の大量退職に伴う「2007年問題」も浮上しており、サラリーマンを取り巻く環境は厳しくなれこそ、やさしくなるような気配はありません。
その意味で、格差社会は、経済的には比較的安定しているといわれているサラリーマンにとっても、縁遠い話ではありません。そればかりか、毎日の激務のあまり過労死や突然死したり、鉄道自殺したりする人も少なくありません。まして、定期収入のない自営業・自由業の人たちは定年がない代わりに退職金はなく、公的年金も年金額の少ない国民年金しかありません。
また、近年、従来の終身雇用・年功序列が崩れているだけでなく、ここ数年、経済のグローバル化や金融ビッグバンなどを背景に、リストラや早期希望退職、あるいは少子高齢化に伴う公的年金の保険料や支給開始年齢の引き上げがあったりします。一方、金額の引き下げ、さらには団塊の世代の大量退職に伴う「2007年問題」も浮上しており、サラリーマンを取り巻く環境は厳しくなれこそ、やさしくなるような気配はありません。
その意味で、格差社会は、経済的には比較的安定しているといわれているサラリーマンにとっても、縁遠い話ではありません。そればかりか、毎日の激務のあまり過労死や突然死したり、鉄道自殺したりする人も少なくありません。まして、定期収入のない自営業・自由業の人たちは定年がない代わりに退職金はなく、公的年金も年金額の少ない国民年金しかありません。
無理・無駄・ムラのない人生設計を立てる
そこで、民間金融機関では、このような不安材料をさらに煽るかのように新聞や雑誌、テレビ、インターネット、通信販売などで「老後の生活資金は何千万円必要」「老後の資産運用にはアパート経営」「個人年金で老後は安泰」などと、連日、コマーシャルに躍起のようです。
しかし、このような宣伝に惑わされず、まずは家族で日々の家計簿を見つめるとともに、これまで掛けてきた公的年金や生命保険、個人年金の契約方法に問題はないか、また、退職金はいくらぐらい手にすることができるのか、定年後もしばらく働くのか、人生80年時代に見合った、無理・無駄・ムラのない人生設計を立てることが何よりも大切ではないでしょうか。
次回からは、その人生設計を立てるための基礎的な知識を順に解説します。
しかし、このような宣伝に惑わされず、まずは家族で日々の家計簿を見つめるとともに、これまで掛けてきた公的年金や生命保険、個人年金の契約方法に問題はないか、また、退職金はいくらぐらい手にすることができるのか、定年後もしばらく働くのか、人生80年時代に見合った、無理・無駄・ムラのない人生設計を立てることが何よりも大切ではないでしょうか。
次回からは、その人生設計を立てるための基礎的な知識を順に解説します。
(2007年4月23日)