第47回　山と渓谷（上）

　前回、「山と滝」についてお話ししたので、今回は、これに関連する話題として、「山と渓谷」についてご案内しましょう。
　「山と渓谷」と聞くと、同名の月刊誌を思い出す人もいるのではないでしょうか。この雑誌は、わが国の山岳雑誌として、東京新聞発行の『岳人』と双璧をなすもので、長年、文字どおり、山と渓谷を数多く紹介しています。
　また、さまざまな写真集や辞（事）典も出版しています。それだけに、山歩きの愛好家には、なくてはならない“バイブル”となっています。
　ご参考まで、フリー百科事典「ウィキぺディア」によると、谷とは山や丘、尾根、山脈に挟まれた、周囲より標高の低い箇所が細長く溝状に伸びた地形のことで、渓、谿とも表記される、とされています。そして、このような地形は渓谷であるのに対し、峡谷は谷の断面の形状により、渓谷とは区別されるとの趣旨の解説をしています。

　それにしても、私たちは、なぜ、このような山と渓谷、あるいは峡谷を愛するのでしょうか。
　それは、ある人にとっては、ふるさとの山河の一つであり、自然の恵みを受けているからでもありましょう。また、ふるさとを持たない人にとっては、幼いころ、遠足などで郊外の渓谷を訪ねた思い出があれば、何かと気ぜわしい生活を送っている日々のなか、山歩きなどで峡谷へ出かけたりして“癒（いや）しの場”となっているからではないでしょうか。
　なかでも渓谷は、どちらかといえば市街地とほど近く位置しており、だれでも気軽に車などで出かけられるため、必ずしも山歩きをしなくても楽しめる場合が多いように思います。
　一方、峡谷は、たいていは奥山に位置しているため、山歩きをしなければ楽しめない場合が多いように思います。逆にいえば、峡谷は、それだけ、自然とのふれあいを約束される魅力のあるコースといえるでしょう。