第36回 山と湿原(下)
減少しつつある湿原
ところで、湿原の消失が危ぶまれるのは尾瀬ヶ原に限ったことではありません。
国土地理院の調査によると、わが国の湿原は明治から大正にかけ、全国で約2,111平方キロメートルありました。しかし、その後、観光開発や宅地開発などのため、現在では、60%以上が失われ、821平方キロメートルにまで減少してしまいました。これは、およそ琵琶湖の2倍に当たる広さですから、事態は深刻です。
日本の湿原の約86%は北海道にあります。ご参考までにですが、最も減少したのは日本最大規模の釧路湿原で、大正時代には337平方キロメートルもありましたが、現在は227平方キロメートルと、その約33%がなくなっています。
この釧路湿原は、タンチョウヅルや“幻の魚”といわれるイトウなど、希少な生物の生息地であるだけでなく、“天然のダム”として、周辺に住む人々に年間を通じ、安定した水を供給しています。このため、2003(平成5)年、農林水産省や環境省、国土交通省、さらには地元の住民やNPO、自治体、学識経験者が「釧路湿原自然再生協議会」を発足させ、自然再生に取り組んでいます。
一方、栃木県では湿原が増えました。これには群馬、埼玉、茨城各県にまたがる渡良瀬(わたらせ)遊水地の存在が大きい、といわれています。
国土地理院の調査によると、わが国の湿原は明治から大正にかけ、全国で約2,111平方キロメートルありました。しかし、その後、観光開発や宅地開発などのため、現在では、60%以上が失われ、821平方キロメートルにまで減少してしまいました。これは、およそ琵琶湖の2倍に当たる広さですから、事態は深刻です。
日本の湿原の約86%は北海道にあります。ご参考までにですが、最も減少したのは日本最大規模の釧路湿原で、大正時代には337平方キロメートルもありましたが、現在は227平方キロメートルと、その約33%がなくなっています。
この釧路湿原は、タンチョウヅルや“幻の魚”といわれるイトウなど、希少な生物の生息地であるだけでなく、“天然のダム”として、周辺に住む人々に年間を通じ、安定した水を供給しています。このため、2003(平成5)年、農林水産省や環境省、国土交通省、さらには地元の住民やNPO、自治体、学識経験者が「釧路湿原自然再生協議会」を発足させ、自然再生に取り組んでいます。
一方、栃木県では湿原が増えました。これには群馬、埼玉、茨城各県にまたがる渡良瀬(わたらせ)遊水地の存在が大きい、といわれています。
湿原への誘(いざな)い
最後に、おすすめの湿原をいくつかご紹介しましょう。
東日本では、先ほどお話した北海道の釧路湿原をはじめ、岩手山(標高2,038メートル)を遠望する八幡平(はちまんたい)、尾瀬ヶ原、そして、福島県の裏磐梯高原、栃木県・奥日光の戦場ヶ原、長野県・小諸市の池ノ平湿原、浅間山(2,568メートル)の浅間高原、白馬岳(2,993メートル)の中腹の栂池(つがいけ)高原です。
西日本では、富山県・立山連峰(3,015メートル)の弥陀ヶ原(みだがはら)高原や愛知県の葦毛(いもう)湿原、岐阜県の蛭ヶ野(ひるがの)高原、岡山県の蒜山(ひるぜん)高原です。
このうち、葦毛湿原は250メートルの山で、豊橋市の郊外にあり、三方を囲まれた小さな湿原です。
そこには、ミカワバイケイソウやシラタマホシクサ、ミカワシンジュガヤなど、地元三河の地名を冠した約250種が自生しており、「東海のミニ尾瀬」ともいわれています。地元の山岳会や中学生らによる保護活動も盛んで、湿原の保護のために保護柵が設けられているほか、1992(平成5)年、愛知県の天然記念物に指定されました。
次回は「山と湖沼」についてお伝えします。
東日本では、先ほどお話した北海道の釧路湿原をはじめ、岩手山(標高2,038メートル)を遠望する八幡平(はちまんたい)、尾瀬ヶ原、そして、福島県の裏磐梯高原、栃木県・奥日光の戦場ヶ原、長野県・小諸市の池ノ平湿原、浅間山(2,568メートル)の浅間高原、白馬岳(2,993メートル)の中腹の栂池(つがいけ)高原です。
西日本では、富山県・立山連峰(3,015メートル)の弥陀ヶ原(みだがはら)高原や愛知県の葦毛(いもう)湿原、岐阜県の蛭ヶ野(ひるがの)高原、岡山県の蒜山(ひるぜん)高原です。
このうち、葦毛湿原は250メートルの山で、豊橋市の郊外にあり、三方を囲まれた小さな湿原です。
そこには、ミカワバイケイソウやシラタマホシクサ、ミカワシンジュガヤなど、地元三河の地名を冠した約250種が自生しており、「東海のミニ尾瀬」ともいわれています。地元の山岳会や中学生らによる保護活動も盛んで、湿原の保護のために保護柵が設けられているほか、1992(平成5)年、愛知県の天然記念物に指定されました。
次回は「山と湖沼」についてお伝えします。