第34回 山と動物(下)
奥日光のシカの食害を考える
このようななか、近年、戦場ヶ原(標高1,400メートル)を中心とした栃木県の奥日光一帯で、ニホンジカの食害が深刻な問題となっています。
戦場ヶ原では貴重な森林や湿原を保護するため、木道の自然研究路を設けたり、毎年春から秋にかけての行楽シーズンにはマイカーの乗り入れを禁止し、低公害のハイブリッド・シャトルバスを走らせ、多くのハイカーたちにその自然豊かな景観を楽しんでもらっています。
しかし、高原の草花やシラカバ、ミズナラなどの木々の皮がシカに軒並み食われて次々と枯れており、自然の生態系をも侵しかねない事態に追い込まれています。
そこで、地元の観光協会などが被害を最小限に食い止めるため、貴重な木々や湿原の周りに、柵や電流が流れているワイヤーを設けてシカの出入りを防ぐ対策に乗り出していますが、自然と動物の保護の調和をどう図るべきか、当分、悩みは続きそうです。
戦場ヶ原では貴重な森林や湿原を保護するため、木道の自然研究路を設けたり、毎年春から秋にかけての行楽シーズンにはマイカーの乗り入れを禁止し、低公害のハイブリッド・シャトルバスを走らせ、多くのハイカーたちにその自然豊かな景観を楽しんでもらっています。
しかし、高原の草花やシラカバ、ミズナラなどの木々の皮がシカに軒並み食われて次々と枯れており、自然の生態系をも侵しかねない事態に追い込まれています。
そこで、地元の観光協会などが被害を最小限に食い止めるため、貴重な木々や湿原の周りに、柵や電流が流れているワイヤーを設けてシカの出入りを防ぐ対策に乗り出していますが、自然と動物の保護の調和をどう図るべきか、当分、悩みは続きそうです。
利尻山で聞いた悲話
最後に、悲しいお話を披露しましょう。
それは、数年前、北海道の最果(さいは)て、利尻山(1,721メートル)に登るときに調べた話です。
北海道の野生動物というと、キタキツネのほかにエゾリスやヒグマなどを思い起こす人が多いでしょう。しかし、ヒグマに限っては獰(どう)猛です。
そこで、地元の人たちはヒグマの多い大雪山(旭岳;2,291メートル)や羊蹄(ようてい)山(1,898メートル)、羅臼岳(1,661メートル)、斜里岳(1,545メートル)などに登る際、クマよけの大きな鈴をいくつもザックに付けたり、携帯ラジオのボリュームをいっぱいにしたりして、こちらの存在をヒグマに知らせながら行動しています。
ところが、利尻山には唯一、ヒグマは生息していません。実は、かつて対岸の増毛(ましけ)で大火があったとき、その難から逃れようと、やっとの思いで一頭のヒグマが泳ぎ着いたことがありました。しかし、危害があってはいけないと、島民によって撃ち殺されてしまったため、今でもヒグマは一頭もいないというわけです。
限られた資料しかないので、当時の事情を知る由もありませんが、殺さなくても生け捕りにとどめ、鎮火したのを見計らって増毛の山中などに戻してやれなかったのだろうか。そう思うのは筆者だけではないでしょう。
このような悲話も、人間と動物との共生を考える一つにしたいものです。
次回は「山と湿原」についてお伝えします。
それは、数年前、北海道の最果(さいは)て、利尻山(1,721メートル)に登るときに調べた話です。
北海道の野生動物というと、キタキツネのほかにエゾリスやヒグマなどを思い起こす人が多いでしょう。しかし、ヒグマに限っては獰(どう)猛です。
そこで、地元の人たちはヒグマの多い大雪山(旭岳;2,291メートル)や羊蹄(ようてい)山(1,898メートル)、羅臼岳(1,661メートル)、斜里岳(1,545メートル)などに登る際、クマよけの大きな鈴をいくつもザックに付けたり、携帯ラジオのボリュームをいっぱいにしたりして、こちらの存在をヒグマに知らせながら行動しています。
ところが、利尻山には唯一、ヒグマは生息していません。実は、かつて対岸の増毛(ましけ)で大火があったとき、その難から逃れようと、やっとの思いで一頭のヒグマが泳ぎ着いたことがありました。しかし、危害があってはいけないと、島民によって撃ち殺されてしまったため、今でもヒグマは一頭もいないというわけです。
限られた資料しかないので、当時の事情を知る由もありませんが、殺さなくても生け捕りにとどめ、鎮火したのを見計らって増毛の山中などに戻してやれなかったのだろうか。そう思うのは筆者だけではないでしょう。
このような悲話も、人間と動物との共生を考える一つにしたいものです。
次回は「山と湿原」についてお伝えします。