第25回 積雪期の山歩き
その魅力と警戒
山歩きといえば、春から秋にかけてがシーズンと思われがちですが、最近の「日本百名山」ブームもあって、積雪期に出かけるシニアの愛好家も増えつつあります。
樹林や高原が雪に覆われて幻想的なたたずまいとなるだけに、山好きでなくとも、積雪期の冬山には魅了されることでしょう。しかし、相手は自然です。天候が急変すれば台風並みの強風や突風、酷寒に見舞われ、かつ行く手を阻まれて判断能力が鈍くなって道に迷ったり、雪崩に押し流されて埋もれたりして遭難するおそれがあります。
そのようなときは生命があやうくなるばかりか、行方不明ともなれば家族が地元の警察署や山岳会、職場に捜索をお願いするなど関係者に多大な迷惑をかけるため、何よりも「安全登山第一」に徹しましょう。
それでも、毎年、積雪期の遭難は後を絶たず、今年も、正月を頂上で迎えようとしたシニアのパーティや、スキー場でスノーボードを楽しんでいた中高年の一行が一時行方不明となって大騒ぎとなりました。このような遭難は、天候に恵まれて雪崩が起こりやすいゴールデンウィークの春山の方がむしろ多いので、これからもいっそうの注意が必要です。
樹林や高原が雪に覆われて幻想的なたたずまいとなるだけに、山好きでなくとも、積雪期の冬山には魅了されることでしょう。しかし、相手は自然です。天候が急変すれば台風並みの強風や突風、酷寒に見舞われ、かつ行く手を阻まれて判断能力が鈍くなって道に迷ったり、雪崩に押し流されて埋もれたりして遭難するおそれがあります。
そのようなときは生命があやうくなるばかりか、行方不明ともなれば家族が地元の警察署や山岳会、職場に捜索をお願いするなど関係者に多大な迷惑をかけるため、何よりも「安全登山第一」に徹しましょう。
それでも、毎年、積雪期の遭難は後を絶たず、今年も、正月を頂上で迎えようとしたシニアのパーティや、スキー場でスノーボードを楽しんでいた中高年の一行が一時行方不明となって大騒ぎとなりました。このような遭難は、天候に恵まれて雪崩が起こりやすいゴールデンウィークの春山の方がむしろ多いので、これからもいっそうの注意が必要です。
積雪期の山の状態と装備
積雪期の山は無積雪期と違い、吹きつける風や寒さのうえ、日照時問もきわめて短いため、高度な技術と豊富な経験、そして機敏な行動が求められます。とりわけ、強風や突風は体温を奪い、行動を鈍くさせるので要注意です。
また、登山道がすっぽりと雪に覆われ、道がかき消されてしまうどころか、吹雪や雪崩のため、目印に取り付けられている布切れやテープも見えなくなります。場合によっては、無積雪期のルートを迂回して登ることもありますが、尾根筋では雪庇(せっぴ:雪のひさし)を踏み外して滑落したりするだけでなく、寒さのために三半規管がマヒして方向音痴になり、道を探しているうちに疲れ果ててしまい、凍死するおそれもあります。もちろん、山小屋は閉鎖されていますし、高山では雪に埋もれていて影も形も見えません。
そこで、積雪期の山歩きでは、初心者や体力の落ちているアクティブシニア世代は、このような危険のある標高1000〜1500メートル以上の高山は避け、積雪が平均30センチ以下の低山に日帰りで登ることを計画しますが、念のため、過去に雪崩などが起きたことがないかどうかもチェックしましょう。また、無積雪期と同じルートを上り下りし、経験者をリーダーとして入山するなどしてパーティを編成しましょう。
本格的な冬山用のワカン(ワカンジキ)やザイル(ロープ)、スコップ、シャベルなどは必要ないものの、皮製の冬山用登山靴のほか、フード付きのヤッケや目出帽(目出し帽)、スパッツ(ゲートル)、オーバーズボン、ピッケル、またはスキーのストック、アイゼン(登山靴の底に装着する滑り止め用の金具)、ポンチョ(簡易雨具)などを用意します。このほか、飲み水や地図、磁石、ライター、ロウソク、携帯電話、サングラス、非常用の食料などを携帯し、あらかじめ天気予報で、行程中、いずれも好天が予想されていることを確認しましょう。
また、登山道がすっぽりと雪に覆われ、道がかき消されてしまうどころか、吹雪や雪崩のため、目印に取り付けられている布切れやテープも見えなくなります。場合によっては、無積雪期のルートを迂回して登ることもありますが、尾根筋では雪庇(せっぴ:雪のひさし)を踏み外して滑落したりするだけでなく、寒さのために三半規管がマヒして方向音痴になり、道を探しているうちに疲れ果ててしまい、凍死するおそれもあります。もちろん、山小屋は閉鎖されていますし、高山では雪に埋もれていて影も形も見えません。
そこで、積雪期の山歩きでは、初心者や体力の落ちているアクティブシニア世代は、このような危険のある標高1000〜1500メートル以上の高山は避け、積雪が平均30センチ以下の低山に日帰りで登ることを計画しますが、念のため、過去に雪崩などが起きたことがないかどうかもチェックしましょう。また、無積雪期と同じルートを上り下りし、経験者をリーダーとして入山するなどしてパーティを編成しましょう。
本格的な冬山用のワカン(ワカンジキ)やザイル(ロープ)、スコップ、シャベルなどは必要ないものの、皮製の冬山用登山靴のほか、フード付きのヤッケや目出帽(目出し帽)、スパッツ(ゲートル)、オーバーズボン、ピッケル、またはスキーのストック、アイゼン(登山靴の底に装着する滑り止め用の金具)、ポンチョ(簡易雨具)などを用意します。このほか、飲み水や地図、磁石、ライター、ロウソク、携帯電話、サングラス、非常用の食料などを携帯し、あらかじめ天気予報で、行程中、いずれも好天が予想されていることを確認しましょう。
積雪期の山歩きの方法
さて、山中では足に体重を十分乗せて雪面を蹴り込み、一歩ずつ確かめるようにして上ります。また、斜面では谷側に落ちないよう、山側の雪面にピッケル、またはスキーのストックを突き刺し、バランスをとりながらトラバース(横断)します。
これに対し、下りは逆に体重を後ろに移し、かかとで雪面を踏み固めるようにして歩きます。路面が凍結していたらピッケルなどで足場をつくったり、アイゼンを装着したりして安全を確保したうえで行動します。
また、雪崩は天気がよいときに表面の雪が溶けて崩れるだけでなく、パーティの歓声によって生じる場合もあるため、絶景に感動しても小躍りしたりして騒がず、静かに行動します。滑落の危険のおそれがあるような尾根や岩場などでは仲間とザイルで結んだりして、もしものときに備えます。
万一、雪崩に巻き込まれたら一刻も早く雪面に顔や手足を出すよう、雪をかけ分けて這い上がります。ちなみに雪崩の際、救助されて助かるのは、事故の発生後、せいぜい2〜3時間が限度といわれているため、このわずかの時間のうちに全力で仲間を救出しなければいけません。
ただし、このような高度な技術は積雪が1メートル以上の高山の場合で、低山ではまずあり得ません。それでもこの程度の技術はマスターしておきましょう。地域によっては地元の山岳会が初心者を対象に講習会を開いているところもありますので、事前にこのような講習会に参加し、気象の変化のとらえ方や雪庇、雪崩の起こりやすい地形の見分け方、凍結した岩場の歩き方などを習得しておくといいでしょう。
なお、危ないと思ったら無理をせず、“勇気ある撤退”をしましょう。また、万一、山中で身動きができなくなってしまったら、大木の陰やくぼ地、洞穴を探したり、雪洞(せつどう:雪穴)をつくって身を寄せ合いビバーク(不時露営)したり、歌を歌ったりして励まし合いながら、絶対に眠らないようにするなどの覚悟も必要です。
次回は「山の絵画」についてお伝えします。
これに対し、下りは逆に体重を後ろに移し、かかとで雪面を踏み固めるようにして歩きます。路面が凍結していたらピッケルなどで足場をつくったり、アイゼンを装着したりして安全を確保したうえで行動します。
また、雪崩は天気がよいときに表面の雪が溶けて崩れるだけでなく、パーティの歓声によって生じる場合もあるため、絶景に感動しても小躍りしたりして騒がず、静かに行動します。滑落の危険のおそれがあるような尾根や岩場などでは仲間とザイルで結んだりして、もしものときに備えます。
万一、雪崩に巻き込まれたら一刻も早く雪面に顔や手足を出すよう、雪をかけ分けて這い上がります。ちなみに雪崩の際、救助されて助かるのは、事故の発生後、せいぜい2〜3時間が限度といわれているため、このわずかの時間のうちに全力で仲間を救出しなければいけません。
ただし、このような高度な技術は積雪が1メートル以上の高山の場合で、低山ではまずあり得ません。それでもこの程度の技術はマスターしておきましょう。地域によっては地元の山岳会が初心者を対象に講習会を開いているところもありますので、事前にこのような講習会に参加し、気象の変化のとらえ方や雪庇、雪崩の起こりやすい地形の見分け方、凍結した岩場の歩き方などを習得しておくといいでしょう。
なお、危ないと思ったら無理をせず、“勇気ある撤退”をしましょう。また、万一、山中で身動きができなくなってしまったら、大木の陰やくぼ地、洞穴を探したり、雪洞(せつどう:雪穴)をつくって身を寄せ合いビバーク(不時露営)したり、歌を歌ったりして励まし合いながら、絶対に眠らないようにするなどの覚悟も必要です。
次回は「山の絵画」についてお伝えします。