第20回 認知症とくすり
先日、市民公開講座で認知症の薬に関する、次のようなご質問を頂きました。
「先生、私はもう80を過ぎております。友人の何人かは認知症の薬を飲んでおります。
私もこの頃、物忘れがひどくなり、かかりつけの先生に認知症の薬を飲みなさいと、言われるのではないかと、ヒヤヒヤしております。本当に認知症の薬は効くのですか?また、この年になっても飲んだほうがいいのでしょうか?」
藤澤「現在、私どもの薬局では、100件以上の高齢者の方にお薬をお届けし、きちんと飲んで頂くための、お手伝いを致しております。そのなかで、約1割の方が、認知症の薬を飲んでいます。薬剤師として認知症の薬は大変効果のある薬だと思っております。また、今までの事例のなかで、薬を途中でやめてしまうと、急激に認知症が進んだ事例もあります。」
「先生、私はもう80を過ぎております。友人の何人かは認知症の薬を飲んでおります。
私もこの頃、物忘れがひどくなり、かかりつけの先生に認知症の薬を飲みなさいと、言われるのではないかと、ヒヤヒヤしております。本当に認知症の薬は効くのですか?また、この年になっても飲んだほうがいいのでしょうか?」
藤澤「現在、私どもの薬局では、100件以上の高齢者の方にお薬をお届けし、きちんと飲んで頂くための、お手伝いを致しております。そのなかで、約1割の方が、認知症の薬を飲んでいます。薬剤師として認知症の薬は大変効果のある薬だと思っております。また、今までの事例のなかで、薬を途中でやめてしまうと、急激に認知症が進んだ事例もあります。」
認知症とは?
認知症とは、記憶、判断力、問題解決、実行機能などの認知機能が障害され、日常生活に支障をきたすことをいいます。
認知症には、大きく分けると「アルツハイマー病」と、脳血管障害が原因で起こる「脳血管性認知症」、「レビー小体型認知症」があります。
高齢化に伴い認知症の患者数は増加の一途をたどり、2015年には442万人(エイジング総合研究センターの日本人人口の将来推計)になると推定されています。
認知症の症状は、中核症状(中心となる症状で、必ずみられる)と、それに伴って起こる周辺症状(必ずみられるとは限らない)とに分けられます。認知症の中核症状には、「物忘れ」や時間・日時・場所・人物などが分からなくなる「失見当識障害」があり、周辺症状には幻覚や妄想、不安、怒りっぽさなどといった「精神症状」や、暴言や攻撃的な言動、徘徊といった「行動障害」がみられることがあります。
いずれにしても、早期発見、早期治療が必要不可欠です。しかし、症状が出ても家族の理解が得られなかったり、歳のせいとかたづけられたりと、治療につなげられないことが多くあります。また、重介護であるため、本人のみならず介護者へのケアも大切です。
認知症には、大きく分けると「アルツハイマー病」と、脳血管障害が原因で起こる「脳血管性認知症」、「レビー小体型認知症」があります。
高齢化に伴い認知症の患者数は増加の一途をたどり、2015年には442万人(エイジング総合研究センターの日本人人口の将来推計)になると推定されています。
認知症の症状は、中核症状(中心となる症状で、必ずみられる)と、それに伴って起こる周辺症状(必ずみられるとは限らない)とに分けられます。認知症の中核症状には、「物忘れ」や時間・日時・場所・人物などが分からなくなる「失見当識障害」があり、周辺症状には幻覚や妄想、不安、怒りっぽさなどといった「精神症状」や、暴言や攻撃的な言動、徘徊といった「行動障害」がみられることがあります。
いずれにしても、早期発見、早期治療が必要不可欠です。しかし、症状が出ても家族の理解が得られなかったり、歳のせいとかたづけられたりと、治療につなげられないことが多くあります。また、重介護であるため、本人のみならず介護者へのケアも大切です。
アルツハイマー病
脳の、直前の記憶をつかさどる、「海馬」という神経細胞が、はじめに障害されるために起こります。やがて大脳皮質がつかさどる思考・判断・見当識の障害も認められ、後期には運動神経も障害されます。
病気の初期には“物忘れ”を自覚してうつ的になる人もありますが、一般にはあっけらかんとして深刻味がない楽天的な雰囲気が特徴です。
病気の初期には“物忘れ”を自覚してうつ的になる人もありますが、一般にはあっけらかんとして深刻味がない楽天的な雰囲気が特徴です。
脳血管性認知症
高血圧や糖尿病などで動脈硬化が進行して脳の血管がつまったり、または破れたりして、脳の血管が障害されると、脳に大切な、酸素や栄養が送られなくなるため、広範囲に脳の細胞が障害され認知症となります。
知的機能は血管の障害の部位を反映し、よくわかっている部分とわからない部分が混在する、いわゆる「まだら型」の認知症が特徴的です。
知的機能は血管の障害の部位を反映し、よくわかっている部分とわからない部分が混在する、いわゆる「まだら型」の認知症が特徴的です。
レビー小体型認知症
認知障害だけでなく、パーキンソン病のような運動障害、自律神経障害(便秘・尿失禁・起立性の低血圧)も併発します。
病気特有の症状としては、初期から幻覚、妄想の症状も表れ、認知・運動障害の両方の症状をもちながら、徐々に進行し、最終的には寝たきりとなります。寝たきりになる可能性が非常に高い認知症です。
病気特有の症状としては、初期から幻覚、妄想の症状も表れ、認知・運動障害の両方の症状をもちながら、徐々に進行し、最終的には寝たきりとなります。寝たきりになる可能性が非常に高い認知症です。
認知症の治療法
アルツハイマー型認知症と脳血管性認知症では、治療法が大きく異なります。
アルツハイマー病患者の脳では、記憶に関連する物質であるアセチルコリンが減少していることも知られています。治療薬は、アセチルコリンを分解する「コリンエステラーゼ」の作用を抑え、その結果、アセチルコリンの濃度を高め、記憶学習機能の低下を防ぎます。しかし、アルツハイマー病の認知症の原因は、神経細胞の脱落によるものですから、治療薬では神経細胞の脱落を止めることはできません。
先日、10年ぶりにアルツハイマー型認知症の新薬が承認申請されました。従来の治療薬も新薬も、根本治療ではありませんが、早期に発見できれば一時的に症状を改善し、進行を遅らせる薬です。
脳血管性認知症では、高血圧、高脂血症、糖尿病など脳血管障害を起こす可能性のある疾病を予防することが大切です。また、自発性低下、抑うつ、不安、興奮、幻覚・妄想、徘徊、失禁などの周辺症状の治療も重要となります(脳循環・代謝改善薬は脳梗塞の慢性期に使用)。
レビー小体型認知症の治療は、精神症状のコントロールと運動症状に対する抗パーキンソン病薬が使われます。また、自律神経障害に対しては血圧コントロール、便秘薬など症状に合わせた治療薬を使います。
漢方薬は、穏やかに効果を現すため、認知症全般に使われていますが、「抑肝散」は、進行したアルツハイマー型認知症で起こる妄想、徘徊、暴力などに抑制効果があります。
アルツハイマー病患者の脳では、記憶に関連する物質であるアセチルコリンが減少していることも知られています。治療薬は、アセチルコリンを分解する「コリンエステラーゼ」の作用を抑え、その結果、アセチルコリンの濃度を高め、記憶学習機能の低下を防ぎます。しかし、アルツハイマー病の認知症の原因は、神経細胞の脱落によるものですから、治療薬では神経細胞の脱落を止めることはできません。
先日、10年ぶりにアルツハイマー型認知症の新薬が承認申請されました。従来の治療薬も新薬も、根本治療ではありませんが、早期に発見できれば一時的に症状を改善し、進行を遅らせる薬です。
脳血管性認知症では、高血圧、高脂血症、糖尿病など脳血管障害を起こす可能性のある疾病を予防することが大切です。また、自発性低下、抑うつ、不安、興奮、幻覚・妄想、徘徊、失禁などの周辺症状の治療も重要となります(脳循環・代謝改善薬は脳梗塞の慢性期に使用)。
レビー小体型認知症の治療は、精神症状のコントロールと運動症状に対する抗パーキンソン病薬が使われます。また、自律神経障害に対しては血圧コントロール、便秘薬など症状に合わせた治療薬を使います。
漢方薬は、穏やかに効果を現すため、認知症全般に使われていますが、「抑肝散」は、進行したアルツハイマー型認知症で起こる妄想、徘徊、暴力などに抑制効果があります。
認知症の薬
アルツハイマー型 | 抗認知症薬:アリセプト 周辺症状抑制:抑肝散(よくかんさん) |
脳血管性認知症 | 脳循環・代謝改善薬:サアミオン・セロクラール 抗血小板薬:ワーファリン・バファリン・プラビックス・パナルジン |
レビー小体型認知症 | 抗認知症薬:アリセプト 周辺症状抑制:抑肝散(よくかんさん) パーキンソン病治療薬:ネオドパストン・メネシット・シンメトレル |
2010年2月に国内承認申請
海外ではすでに用いられている薬
○メマンチン(アスビオファーマ):アセチルコリン分解酵素阻害薬(経口薬)
○ガランタミン(ヤンセン):アセチルコリン分解酵素阻害薬+神経伝達物質の分泌促進(貼付薬)
○リバスチグミン(ノバルティス、小野薬品工業):アセチルコリン分解酵素阻害薬(経口薬)
海外ではすでに用いられている薬
○メマンチン(アスビオファーマ):アセチルコリン分解酵素阻害薬(経口薬)
○ガランタミン(ヤンセン):アセチルコリン分解酵素阻害薬+神経伝達物質の分泌促進(貼付薬)
○リバスチグミン(ノバルティス、小野薬品工業):アセチルコリン分解酵素阻害薬(経口薬)