第6回 会社延長派、地域活動派、あなたはどっち?
会社延長派のFさん
製造業の企業で42年働いたFさんが定年退職して2年がたちました。長い間勤めたので、退職後しばらくは「のんびり」を決め込んで、奥さんと九州の温泉地へ湯治に出かけたり、夏には1週間の北海道旅行もしました。家の中の片付けも終わり、これから「何かしたいものだな」と考えてはいるけど、具体的にどうすれば良いのか見当もつきません。これまで地域での付き合いもないので相談する人もなく、ある日、時々サークル活動に出かける奥さんに聞いてみました。
「何か俺に合いそうな地域での社会活動はないかなあ」
奥さんの応えは、
「そんなの自分で見つけなさいよ。毎日ごろごろしているんだから」
とそっけない一言です。すると、
「そんな言い方はないじゃないか。俺だって真剣に考えているんだ」
と、Fさんはついに怒り出してしまいました。
「何か俺に合いそうな地域での社会活動はないかなあ」
奥さんの応えは、
「そんなの自分で見つけなさいよ。毎日ごろごろしているんだから」
とそっけない一言です。すると、
「そんな言い方はないじゃないか。俺だって真剣に考えているんだ」
と、Fさんはついに怒り出してしまいました。
退職者の会
こんな話が続く中、ある日Fさんに、勤めていた会社の退職者の集まりがあるとの通知が来ました。Fさんも、そういえば退職したときに、退職者の会に入会の申し込みをしていたのを思い出しました。今まで気にしていなかったのですが、退屈でもあり参加してみることにしました。
「しばらくです。お元気ですか」「少しも変わりませんね」退職者の集まりには、30人ほどの元社員が参加していました。会費を3千円支払い、しばらく雑談したあとに、別室に用意されていた立食による懇談会が始まりました。年長の先輩はもと取締役のGさんで78歳です。Fさんと同じ時期にやめたHさんも、先に退職した元部長も参加していました。
「偉い人達は皆さん元気だなあ、俺もあと何年かするとこうなるのかなあ」と思ったり、「同じ会社で苦労してきた仲間に会うのは、気心も知れているし、懐かしいし、退職者の会はやっぱりいいなあ」と、Fさんはすっかりリラックスしたようです。やがて…
「地域であまり知り合いもいない中で、難しい地域活動やNPOよりも退職者の会のほうがよほど楽しいや。来月の会にも参加しよう」
と思うようになりました。
「しばらくです。お元気ですか」「少しも変わりませんね」退職者の集まりには、30人ほどの元社員が参加していました。会費を3千円支払い、しばらく雑談したあとに、別室に用意されていた立食による懇談会が始まりました。年長の先輩はもと取締役のGさんで78歳です。Fさんと同じ時期にやめたHさんも、先に退職した元部長も参加していました。
「偉い人達は皆さん元気だなあ、俺もあと何年かするとこうなるのかなあ」と思ったり、「同じ会社で苦労してきた仲間に会うのは、気心も知れているし、懐かしいし、退職者の会はやっぱりいいなあ」と、Fさんはすっかりリラックスしたようです。やがて…
「地域であまり知り合いもいない中で、難しい地域活動やNPOよりも退職者の会のほうがよほど楽しいや。来月の会にも参加しよう」
と思うようになりました。
地域活動派のIさん
一方のIさんは、退職後3年がたちました。現在は、地域でさまざまな活動に参加しています。退職したときに、「これからは地域社会で何か役立つことがしたい」と強い思いを持ち、3か月がたったとき、市のボランティアセンターが開催した「誰にでもできるボランティア活動講座」に参加しました。
そこでは、住んでいる地域にはどんなボランティア団体があり、どのような活動をするのかを4回に分けて勉強しました。最初は誰も知らない中での講座でしたが、4回目が終了した時には、6名の参加者とお友達になれました。
そこでは、住んでいる地域にはどんなボランティア団体があり、どのような活動をするのかを4回に分けて勉強しました。最初は誰も知らない中での講座でしたが、4回目が終了した時には、6名の参加者とお友達になれました。
学童クラブでのボランティア活動
その後Iさんは、家の近くの学童クラブで子どもたちの面倒を見るボランティアに参加することにしました。毎日、小学校が終わると3年生までの子どもたちが学童クラブに来ます。孫のような子どもたちが「おじさん一緒に遊んで」「宿題の勉強を教えて」などIさんと親しくしてくれる子どもたちがとても可愛くて、毎日楽しい時間を過ごしています。
夏休みになると、毎日学童クラブに来る子どもたちに、新しい遊びを教えてもらったりもしました。
ある日、Iさんが「おじさんたちが小さいときに遊んだことを教えてあげよう」と提案したら、子どもたちも興味を示し賛成してくれました。Iさんは少し心配だったのですが、「竹とんぼ作り」を教えることにしました。材料にする竹は、さいたま市にすむ友人にお願いして探してもらいました。
夏休みになると、毎日学童クラブに来る子どもたちに、新しい遊びを教えてもらったりもしました。
ある日、Iさんが「おじさんたちが小さいときに遊んだことを教えてあげよう」と提案したら、子どもたちも興味を示し賛成してくれました。Iさんは少し心配だったのですが、「竹とんぼ作り」を教えることにしました。材料にする竹は、さいたま市にすむ友人にお願いして探してもらいました。
できたものを学校で飛ばしてみます。子どもたちも夢中になって遊びました。
「おじさんすごいね、こんな楽しい竹とんぼを教えてもらってありがとう」子供たちは皆満足したようです。
翌日、ある子どもの母親がみえて、
「とてもよいものを教えていただきありがとうございました。子どもが帰ってきてから、竹とんぼを作れたことや、うまく飛ばせるようになったことを、竹とんぼを見せながら楽しそうに話してくれました。本当にありがとうございました、これからもよろしくお願いします」
と、お礼を言いに来てくれました。お母さんのことばを聞いて、Iさんは素直に満足感を感じたのです。
心の中で「ボランティアをしてよかった」と何度も繰り返しました。
皆さんは、この二人の話をどのように思いましたか。ほかにも退職後の過ごし方についていろいろな選択肢はあるでしょうが、何か考えさせられることはないでしょうか。Fさんは、退職後も会社務めの延長です。Iさんは、自分が主体的に地域での生活に溶け込むことを選びました。さて、皆さんならどちらを選ぶでしょうか。
(2008年5月23日)
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