第21回 わかりやすさを助ける工夫 その3〜スイッチ紐の延長〜
わかりやすさを助ける住まいの工夫には、様々なバリエーションがあります。中には、認知症の方の生活に役に立っているにも関わらず、あまりにさりげなく生活に溶け込んでいるため、気づかれないままに認知症の方の生活を底支えしている工夫が数多くあります。今回はその代表格ともいえる、電灯のスイッチ紐を延長する工夫に着目したいと思います。
住まいの工夫の内容
認知症の方の部屋の天井に取り付けられている照明器具のスイッチ紐に、それを延長する紐を取り付けていました。延長させたスイッチ紐をベッドサイドに置いた家具に結び付け、認知症の方がベッドに横になったまま自分で照明の点灯操作ができるようにしていました(左写真)。また、紐の下の手が触れる部分に結び目を作って扱いやすくしていました(右写真)。
住まいの工夫を行った理由・ねらい
この認知症の方は、認知症の進行に伴い、意欲や活動性が落ちつつある状態でした。しかし、ご家族は、この方ができることは、可能な限り自分で行ってもらいたい、と考えていました。
(家族から見て)住まいの工夫が役立つと感じる理由
スイッチ紐を引いて照明の灯りを操作することは、昔から行っている慣れた操作なので迷わずにできているということでした。紐の下の方に結び目を作ったことで、重さで位置が安定し、掴む手掛かりができ、より操作しやすくなったのではないか、ということでした。
専門家からみたひとこと
「スイッチ紐」あるいは「紐スイッチ」を延長するという工夫は、認知症のあるなしに関わらず、夜間、ふとんに入ってから照明を操作するまえに、家庭内で実践されている便利な工夫のひとつではないかと思います。
今回の取り上げた事例も、横になった状態でも自分で照明のスイッチを操作する動作を助けるためでしたが、わかりやすさという側面からも評価することができそうです。
私たちの家の中にある照明のスイッチは、大抵の場合、配線の関係からいくつかの照明のスイッチがまとめられ、壁に配置されています。そのために、どのスイッチを押せばどの照明が点くのか、わからなくなる時があります。これまでにご紹介した家電の操作に関わる住まいの工夫の中には、リモコンの不要なボタンを隠したり、目立たせることによって、わかりやすくするものがありました。
リモコンなどの操作をわかりやすくする場合、どのボタンやスイッチを操作すれば、どの機器が稼働するのかわかるようにする、というポイントがあります。スイッチ紐の工夫は、操作スイッチ(紐スイッチ)と稼働機器(照明器具)が一体化し、迷いようもなく一対一対応していますから、操作のわかりやすさという面ではシンプルで優秀な仕様といえます。
今回の事例では、初回の訪問から1年後に再訪問をする機会がありました。初回訪問時よりも認知症がさらに進み、活動性が低下しベッドの上で過ごすことが増えていましたが、このスイッチ紐は変わらず使用されていました。初回訪問から再訪問までの間に、紐の下の手が触れる部分に手掛かりとなる結び目を作り、認知症の方がより操作しやすくなるよう、ご家族が手を加えていました。
このように認知症の方の状況に合わせて「わかりやすくし続ける」ことが、認知症の方が自分でできることを支える力になっていました。「わかりやすくする」工夫の多くは目立たない単純な工夫が多いのですが、意識されずに生活に溶け込んでいるものほど、その工夫の持っている効果は、非常に大きいものであると感じています。
今回の取り上げた事例も、横になった状態でも自分で照明のスイッチを操作する動作を助けるためでしたが、わかりやすさという側面からも評価することができそうです。
私たちの家の中にある照明のスイッチは、大抵の場合、配線の関係からいくつかの照明のスイッチがまとめられ、壁に配置されています。そのために、どのスイッチを押せばどの照明が点くのか、わからなくなる時があります。これまでにご紹介した家電の操作に関わる住まいの工夫の中には、リモコンの不要なボタンを隠したり、目立たせることによって、わかりやすくするものがありました。
リモコンなどの操作をわかりやすくする場合、どのボタンやスイッチを操作すれば、どの機器が稼働するのかわかるようにする、というポイントがあります。スイッチ紐の工夫は、操作スイッチ(紐スイッチ)と稼働機器(照明器具)が一体化し、迷いようもなく一対一対応していますから、操作のわかりやすさという面ではシンプルで優秀な仕様といえます。
今回の事例では、初回の訪問から1年後に再訪問をする機会がありました。初回訪問時よりも認知症がさらに進み、活動性が低下しベッドの上で過ごすことが増えていましたが、このスイッチ紐は変わらず使用されていました。初回訪問から再訪問までの間に、紐の下の手が触れる部分に手掛かりとなる結び目を作り、認知症の方がより操作しやすくなるよう、ご家族が手を加えていました。
このように認知症の方の状況に合わせて「わかりやすくし続ける」ことが、認知症の方が自分でできることを支える力になっていました。「わかりやすくする」工夫の多くは目立たない単純な工夫が多いのですが、意識されずに生活に溶け込んでいるものほど、その工夫の持っている効果は、非常に大きいものであると感じています。