第3回 情報の伝え方の工夫(2)〜電化製品のランプにカバーをする工夫〜
何気なく使っている多くの電化製品には、時間や設定などを知らせる表示画面や電灯の蛍スイッチ、電源を示すパイロットランプが付いています。電化製品は日常生活に溶け込んでいるので、その光が認知症の方にどのような影響を与えているのか気づきにくい場合もありますが、寝る前に電灯を消したはずなのに、いつのまにか勝手に灯っている光が気になって認知症の方が落ち着かなくなったり、その光を消そうとしても消えてくれず慌ててしまうことがあります。今回は、認知症の方にとって混乱の原因となった電化製品のランプにカバーする工夫の例をご紹介します。
住まいの工夫の内容
インターフォンの通電を示すパイロットランプを黒いカバーで覆っていました。カバーは白い紙では光が漏れてしまうので黒い紙を用いています。
その他に認知症の方が気になるビデオデッキの時計のランプにも、カバーをしていました(写真)。ビデオデッキの位置は、認知症の方が日中座っている場所の正面にあるため、黒い紙が目立ってしまい気になりました。そこで、黒いカバーの上にその方の年齢や家系図などのメモを貼って、カモフラージュしました。
住まいの工夫を行った理由・ねらい
集合住宅の外廊下の明かり、夜間の電化製品やスイッチの昔の暮らしになかった怪しく小さな光は、気になって消したくても消せないので、混乱の原因になっていました。
認知症になった場合、使い慣れていない電化製品だけでなく、それまで日常的に使用していたもの使い方、たとえばスイッチを押すことさえも、わからなくなることもあります。この場合、電化製品の光はコントロールする必要がありました。
認知症になった場合、使い慣れていない電化製品だけでなく、それまで日常的に使用していたもの使い方、たとえばスイッチを押すことさえも、わからなくなることもあります。この場合、電化製品の光はコントロールする必要がありました。
(家族から見て)住まいの工夫が役立つと感じる理由
カバーをしてから、夜中に小さな光が引き起こしたパニックはなくなったということでした。
専門家からみたひとこと
電化製品の光に限らず認知症の方の混乱を招くような刺激はさまざまです。今回は過剰な刺激となる光への対応としてカバーで隠すという工夫をご紹介しましたが、このような過剰な刺激への対応策は、認知症の方にとって刺激となるようなもの(音、光、におい、色)が全くない状態にすればよい、ということではありません。大事にしたいことは、認知症の方自身が「わからなくなっていること」の内容にあわせた工夫であることです。今までだったら、気なった時には「消すこと」ができるかもしれません。しかし、いまは、「消すこと」ができない。そのような場合に、家族にとって何気ない、当たり前のことでも、本人には「しんどく」なっていることを理解して、時には光が目立たないようにカバーをするなど、刺激・情報の量と質を適度にコントロールする、という考え方ではないでしょうか。