第5回 情報の伝え方の工夫(4)〜メッセージを紙に書いて伝える工夫〜
記憶が不確なため不安になりがちな認知症の方にメッセージを伝える方法として、紙に「9時にお迎え(デイサービス)がきます」「水分補給」など予定やこれから行うことを書いたメモを用いる工夫があります。このメッセージを紙に書いて伝える工夫は、広く取り組まれている工夫のひとつではないかと思います。今回は、この最も身近な住まいの工夫ともいえるメッセージを紙に書く工夫を紹介します。
住まいの工夫の内容
文字の読み取りが可能な方に向けて、夕食の支度が不要であることを伝えるメモ用紙を、キッチンのカウンターの上の見つけやすい場所に置いていました。メモは何種類か用意しておき、状況に合わせて使い分けていました。また、必要ない時は、メモが本人の目に入らないように吊り戸棚の中に保管していました。
住まいの工夫を行った理由・ねらい
食事の支度は一人では難しいので、同居している娘さんと一緒に食事の準備をしていました。しかし、娘さんの留守中に夕刻になると、ご本人は食事の準備をしなければいけないと思い不安になっていました。そこで、「食事の支度をしなくても大丈夫」ということを伝えて、夕刻の不安を取り除く必要がありました。
(家族から見て)住まいの工夫が役立つと感じる理由
いろいろなメモを試した結果、写真のメモは夕刻時に安心させる効果が高かったので繰り返し使っているということでした。
専門家からみたひとこと
認知症によって、記憶や見当識の障害が生じることは、何をしていいのかわからない、という混乱や不安感が高まることがあります。メッセージを書いたメモを置いたり、家の中に貼る工夫は、直接的に情報を提供するもっとも身近な住まいの工夫のひとつです。「このようなメモを作るのがよい」ということは一概には言えませんが、いくつかの例を拝見して気付いた点もありました。
1.何をメモに書くか
メモの内容が、長すぎたり、くどすぎたり過剰になってはいないでしょうか。読み手である認知症の方に響く表現、受け止めやすい簡潔な書き方、理解力に合わせた言葉づかいや文字数などにも工夫が必要だと思います。
2.メモをどこに置く(貼る)か、見やすいか
第2回目にご紹介した「1週間の予定表」の回でも触れましたが、メモを置く場所や貼る場所が認知症の方にとって目に入りやすい場所、居場所や目線の位置を考慮した場所になるでしょうか。また、視力に合わせた表示、文字のサイズや色にも配慮する必要があると思います。
3.メモをどのように使うか
状況や時間によって求められるメモの内容が変わる場合、そのメモが不要な状況・不要な時間になった目に入らないようにメモをしまっているお宅が幾つかありました。内容に応じて、ということではありますが、本人の望むメッセージをより伝えやすく伝える有効な条件の一つだと思います。
メッセージを紙に書いて伝える工夫は多くのお宅で取り組まれていますが、一つとして同じメモはありません。他の実践例も参考にしながら、ご本人の必要とされている情報に合わせて「うちで役立っているのはこのメモ」というものが見つけられるとよいと思います。もちろん、メッセージを伝える方法は紙に書いたメモだけではありません。過剰なメモはかえって失敗を強調されると感じる方もおられるので、メモを使わない、という選択肢もあってよいと思います。
メッセージを紙に書いて伝える工夫は多くのお宅で取り組まれていますが、一つとして同じメモはありません。他の実践例も参考にしながら、ご本人の必要とされている情報に合わせて「うちで役立っているのはこのメモ」というものが見つけられるとよいと思います。もちろん、メッセージを伝える方法は紙に書いたメモだけではありません。過剰なメモはかえって失敗を強調されると感じる方もおられるので、メモを使わない、という選択肢もあってよいと思います。