第14回 生活の継続性 その2〜愛用のコートを車いす仕様にリメイク〜
前回から「生活の継続性」をテーマに住まいの工夫をご紹介しています。前回は、今まで使っているもの(認知症の方が使いこなせる電子レンジ)を使い続ける、という住まいの工夫をご紹介しました。これに対し、今回は、今まで使っているもの(愛用のコート)に手を加え、使い続けられるようにして、その方らしさを保って暮らし続けるための工夫をご紹介します。
住まいの工夫の内容
認知症が発症する前から外出時に着ていた愛用のコートを車いす仕様にリメイクしていました。このリメイクは認知症の方の家族(配偶者)が行いました。
住まいの工夫を行った理由・ねらい
はじまりは、認知症が発症する前から好きだった近所への散歩を、車いすに乗るようになってからも継続したいという思いでした。冬場は寒いので、家族が車いす仕様の既製服を探しましたが、機能性の良いものは多かったものの、着る物や身だしなみに気を使っていたこの方の好みに合うようなデザインのものが見当らなかったということでした。また、価格面でも魅力に欠けていたので、既製品を購入しなかったそうです。そこで、認知症の方が以前から愛用しているコートをリメイクするというアイディアに至りました。
(家族から見て)住まいの工夫が役立つと感じる理由
何より、認知症の方が昔から愛用しているコートなので、着用して家族と一緒に散歩に出かけると嬉しそうにされているということでした。散歩に行くことも以前のように習慣化されつつあるということでした。
専門家からみたひとこと
「外出する生活を継続するために」
今回の工夫のポイントは、症状が進行し、車いすで移動するようになっても、認知症が発症する前からの楽しみであった散歩に行くことを継続するための方策を軸に考えていたことだと思います。外出を支援するための住まいの工夫として、このコートの工夫以外にも、居間から外に出るためのスロープ設置という改修工事も行われていました。ですから、このコートの工夫とスロープは同じ目的のために一体的に行われていました。
スロープなどを設置して外出手段を確保するという工夫は、認知症の有無に関わらず身体機能の低下に対応する基本的な住まいの工夫として行われていることだと思います。この事例でも、「外出する」という目的のためだけのスロープの設置と、寒さをしのぐ何らかの防寒具の使用という別々の住まいの工夫になっていたかも知れません。
しかしながら、この事例では、コートは単に外出時の寒さをしのぐためだけのものではありませんでした。認知症が発症する前から身だしなみに気を使っていた方の気持ちに配慮し、愛用していたコートに手を加え引き続き使うことで、自分らしい姿を保ちながら習慣(散歩)を維持できるようにしていました。
認知症の方の気持ちに寄り添い、本人の気持ちに沿って、これまでの生活像(暮らしぶり)を大切にする配慮が行われていたことが、認知症の方にとっても、周りの家族にとっても満足度の高い住まいの工夫につながった理由のひとつだと思います。
今回の工夫のポイントは、症状が進行し、車いすで移動するようになっても、認知症が発症する前からの楽しみであった散歩に行くことを継続するための方策を軸に考えていたことだと思います。外出を支援するための住まいの工夫として、このコートの工夫以外にも、居間から外に出るためのスロープ設置という改修工事も行われていました。ですから、このコートの工夫とスロープは同じ目的のために一体的に行われていました。
スロープなどを設置して外出手段を確保するという工夫は、認知症の有無に関わらず身体機能の低下に対応する基本的な住まいの工夫として行われていることだと思います。この事例でも、「外出する」という目的のためだけのスロープの設置と、寒さをしのぐ何らかの防寒具の使用という別々の住まいの工夫になっていたかも知れません。
しかしながら、この事例では、コートは単に外出時の寒さをしのぐためだけのものではありませんでした。認知症が発症する前から身だしなみに気を使っていた方の気持ちに配慮し、愛用していたコートに手を加え引き続き使うことで、自分らしい姿を保ちながら習慣(散歩)を維持できるようにしていました。
認知症の方の気持ちに寄り添い、本人の気持ちに沿って、これまでの生活像(暮らしぶり)を大切にする配慮が行われていたことが、認知症の方にとっても、周りの家族にとっても満足度の高い住まいの工夫につながった理由のひとつだと思います。