第24回 1年間のまとめ
この1年間、22の住まいの工夫を取り上げてきました。今回は、これまでご紹介した住まいの工夫を振り返りながら、改めて認知症高齢者の住まいの工夫とは何であるのか、また行うときのポイントを考えます。
住まいの工夫は多岐にわたること
これまでにご紹介した住まいの工夫の多くは、当たり前すぎて一見工夫と気づかないような地味で小さな工夫です。例えば、第13回で取り上げた住まいの工夫は、工夫そのものは使い慣れた電子レンジを使い続けるというもので、何かを新しく導入したり、取り除いたりするような工夫ではありません。しかし、電子レンジを使って食事を温めることが認知症の方の生活にとって大事なことだと捉えて、使い馴れている電子レンジを使い続けていました。
工夫の大小に関わらず、認知症の方にとって、その住まいの工夫の持つ意味に気づくことができるかどうかで、住まいの工夫の捉え方はずいぶん異なると思います。
工夫の大小に関わらず、認知症の方にとって、その住まいの工夫の持つ意味に気づくことができるかどうかで、住まいの工夫の捉え方はずいぶん異なると思います。
「何を」「どう」「使うか」を考えること
この連載では、各所で触れていますが、誰にとっても役に立つ万能な住まいの工夫があるわけではありません。認知症高齢者の住まいの工夫を行う時には、「何が役に立つか/有効か」ということも勿論重要ですが、特に「何を」「どう」「使うか」ということをセットにして考える必要があると思います。例えば貼り紙ひとつにしても、どのような内容の貼り紙を、どこに貼り、それを認知症の方にどのように見てもらうようにしたら効果的か、それを見たときに不快や不安にならないか、受け止める側の気持ちまで考えていただきたいのです。
環境の変化による影響が生じること
認知症高齢者への住まいの工夫の難しさのひとつに、症状に個人差が大きいことや状態が変化していくことがあります。そのため、ある段階までは有効であった住まいの工夫が、急に使えなくなることもあります。
基本的には、状態像に合わせた住まいの工夫を行うことになりますが、その方ができること、続けたいこと・好きなことは何か、家族も含めどのような生活を望んでおられるのかを常に意識しておく必要があります。変化に合わせて試行錯誤しながら認知症の方の不安を和らげ、落ち着ける住まいにしていくプロセスが必要になると思います。
注意したいのは、仮に小さな住まいの工夫であっても、認知症の方への想定外の影響が生じる場合が少なくないことです。何らかの住まいの工夫を行う場合、新しいモノや環境に馴染むためのまわりのサポートが必要です。そのために、住まいの工夫に取り組む時には、可能であれば、認知症の方が比較的落ち着いている時期を選ぶこと、変化に伴う認知症の方への混乱などに家族が対応できる余裕があるかどうかを見極めた上で取り組むことが必要ではないでしょうか。
第9回でご紹介した暮らしながらの住宅改修の背景には、かつて担当のケアマネージャーが認知症の方が不在時に住宅改修を行ったことが認知症の方の混乱を招いてしまった、という経験がありました。この事例では工事に関わる大工さんだけでなく、近所に住む娘さんの協力・デイサービスとの連携しながら、ご本人を巻き込んで(疎外せずに)行ったことが上手くいった理由のひとつになっていました。認知症の方の変化を受け止められる幅、変化に対する適応能力に加えて、環境の変化にあわせて認知症の方の能力を周りがどの程度サポートできる状態にあるかも、見極める必要があると思います。
基本的には、状態像に合わせた住まいの工夫を行うことになりますが、その方ができること、続けたいこと・好きなことは何か、家族も含めどのような生活を望んでおられるのかを常に意識しておく必要があります。変化に合わせて試行錯誤しながら認知症の方の不安を和らげ、落ち着ける住まいにしていくプロセスが必要になると思います。
注意したいのは、仮に小さな住まいの工夫であっても、認知症の方への想定外の影響が生じる場合が少なくないことです。何らかの住まいの工夫を行う場合、新しいモノや環境に馴染むためのまわりのサポートが必要です。そのために、住まいの工夫に取り組む時には、可能であれば、認知症の方が比較的落ち着いている時期を選ぶこと、変化に伴う認知症の方への混乱などに家族が対応できる余裕があるかどうかを見極めた上で取り組むことが必要ではないでしょうか。
第9回でご紹介した暮らしながらの住宅改修の背景には、かつて担当のケアマネージャーが認知症の方が不在時に住宅改修を行ったことが認知症の方の混乱を招いてしまった、という経験がありました。この事例では工事に関わる大工さんだけでなく、近所に住む娘さんの協力・デイサービスとの連携しながら、ご本人を巻き込んで(疎外せずに)行ったことが上手くいった理由のひとつになっていました。認知症の方の変化を受け止められる幅、変化に対する適応能力に加えて、環境の変化にあわせて認知症の方の能力を周りがどの程度サポートできる状態にあるかも、見極める必要があると思います。
おわりに
「住まいの工夫」と聞いて何を思い浮かべますか?
第1回で投げかけたこの問いに対し「以前よりも具体的にイメージできた」「工夫とは意識していなかったけど、この工夫も住まいの工夫と言えるかもしれない」などと思ってくださる方が一人でも多くおられたら本当に嬉しく思います。
1年間お付き合いくださいまして、ありがとうございました。
第1回で投げかけたこの問いに対し「以前よりも具体的にイメージできた」「工夫とは意識していなかったけど、この工夫も住まいの工夫と言えるかもしれない」などと思ってくださる方が一人でも多くおられたら本当に嬉しく思います。
1年間お付き合いくださいまして、ありがとうございました。