第10回 安心できる空間をつくる工夫 その1〜手作りのベッドカバー〜
施設・在宅を問わず認知症の方の住まいを訪れるとき、その住まいは認知症の方が安心できる場所か、落ち着いて過ごせる場所かどうか、と考えることがよくあります。
「安心できる空間」と聞くと難しいことのように思われるかもしれませんが、さりげない小さな工夫が、認知症の方の安心感につながっていた例が幾つもありました。そこで、今回から数回にわたり、認知症の方が安心できる空間をつくる住まいの工夫をご紹介します。
「安心できる空間」と聞くと難しいことのように思われるかもしれませんが、さりげない小さな工夫が、認知症の方の安心感につながっていた例が幾つもありました。そこで、今回から数回にわたり、認知症の方が安心できる空間をつくる住まいの工夫をご紹介します。
住まいの工夫の内容
今回取り上げる方は認知症が進み、多くの時間を自室のベッドで過ごされていました。その方が使っている介護用ベッドの両側のボードに家族が作ったレースのカバーを掛けていました(写真1)。また、パイプのベッド柵にもタオルを使った手作りのカバーを付けていました(写真2)。可愛らしい刺繍もあしらっていました。
住まいの工夫を行った理由・ねらい
自室として使われている部屋は和室でした。この部屋に置かれたベッドは写真1のような介護用のベッドで、和室の中では違和感があり妙に目立ってしまっていたということです。一日の中で多くの時間を過ごす自室は、病室のような冷たいイメージではなく、普通のお部屋として使いたいという思いがありました。
(家族から見て)住まいの工夫が役立つと感じる理由
以前に比べ、性能重視で無機的な介護用ベッドが柔らかい布に包まれ部屋になじんで見えるようになったそうです。また、触った感触も柔らかいということでした。
専門家からみたひとこと
今回取り上げた事例では、ベッドカバー以外の住まいの工夫も行われていました。自室で食事もされるので、少しでも料理を美味しく見せる光のもとで、食事を楽しめるように白熱灯の照明器具(写真1右上)を光の向きを考えて壁に取付けた工夫などです。
妙に目立ってしまうベッドに布をかけて金属の部分をうまく隠し部屋の雰囲気を変えること、光の色や向きに配慮しながら市販の照明器具を活用すること、これらの住まいの工夫は内容だけを見ると特別な工夫ではありません。涼やかなレースや肌触りのよい布など視覚や触覚など感覚に訴えていく素材を選び、光で雰囲気を整えていました。これらの工夫は、病室ではなく、慣れ親しんだ自分の部屋であるという感覚を呼び起こし、安心して自室ですごせるようにした細やかな配慮といえます。
認知症の方は、時に自分が今どこに居るのか分からなくなったり、不安にかられて落ち着かなくなったりする方も少なくありません。このような不安な気持ちを和らげ、落ち着きを取り戻すために認知症の方を穏やかに包み込み安心できる空間をつくっておくことが非常に大事だと思います。
現在使っているベッドやお部屋を別のものに代えるという方法も選択肢の一つです。しかし、既存のものが持つ機能的に優れた部分を活かしながら、快適さにつながるちょっとした工夫を加えて認知症の方が安心できる空間をつくる考え方は、住まいの工夫の目的に関わらず大切にしたい視点だと思います。
妙に目立ってしまうベッドに布をかけて金属の部分をうまく隠し部屋の雰囲気を変えること、光の色や向きに配慮しながら市販の照明器具を活用すること、これらの住まいの工夫は内容だけを見ると特別な工夫ではありません。涼やかなレースや肌触りのよい布など視覚や触覚など感覚に訴えていく素材を選び、光で雰囲気を整えていました。これらの工夫は、病室ではなく、慣れ親しんだ自分の部屋であるという感覚を呼び起こし、安心して自室ですごせるようにした細やかな配慮といえます。
認知症の方は、時に自分が今どこに居るのか分からなくなったり、不安にかられて落ち着かなくなったりする方も少なくありません。このような不安な気持ちを和らげ、落ち着きを取り戻すために認知症の方を穏やかに包み込み安心できる空間をつくっておくことが非常に大事だと思います。
現在使っているベッドやお部屋を別のものに代えるという方法も選択肢の一つです。しかし、既存のものが持つ機能的に優れた部分を活かしながら、快適さにつながるちょっとした工夫を加えて認知症の方が安心できる空間をつくる考え方は、住まいの工夫の目的に関わらず大切にしたい視点だと思います。