第17回 安心・安全の確保 その2〜ユニットバスへの交換と目立たない鍵〜
住まいの安心と安全の確保に関して考える時に、入浴と排泄の話は必ずといって良いほど挙がります。入浴・排泄は、欠かせない生活行為であると同時に、認知症の方の楽しみや尊厳と大きく関わってきます。そして、同居する家族にとっても介助・介護の負担を左右するポイントにもなるものです。
そこで、今回は、前回に引き続き入浴の安心・安全に関わる住まいの工夫のうち、ユニットバスの導入と浴室扉の目立たない鍵をご紹介します。
そこで、今回は、前回に引き続き入浴の安心・安全に関わる住まいの工夫のうち、ユニットバスの導入と浴室扉の目立たない鍵をご紹介します。
住まいの工夫の内容
浴室にユニットバスを導入しました。脱衣室との段差解消、以前より浅い浴槽、出入り動作を助ける手すり、シャワーチェアに座って使いやすいように風呂桶を置くことのできる台が設置されました。ユニットバスの導入の際に、外側(脱衣室側)から浴室扉を開閉する場合、硬貨など(事例のお宅では1円玉を使用)を溝に差し込んで開閉する目立たない鍵の付いているタイプの扉を選んでいました。開閉するための硬貨は内側から鍵をかける場合は、つまみを回転させて鍵をかけられるようになっていました。(写真1〜3)
住まいの工夫を行った理由・ねらい
この事例の方は、入浴が好きな方でした。デイサービスでも気持ちよさそうに入浴されていたということです。しかし、自宅の浴室は、脱衣室と浴室の間に段差があること、深い浴槽であったので出入りの際の足腰への負担があり、自宅でのんびり入浴することが難しい状態でした。
さらに、一人で浴室に入り服を着たまま、冷めたお湯の入っている浴槽に座り込んでいたことがありました。その時は、大事には至りませんでしたが、浴室での転倒・転落事故や、体調への影響も気がかりで、家族の負担が重くなっていました。
このようなことから、家族は住まいの工夫を行うにあたって、1.自宅でものんびり入浴できるようにしたい、2.夜間や家族の留守の時に、認知症の方が浴室に入ってしまうのを避けたい、という2つのねらいがありました。
さらに、一人で浴室に入り服を着たまま、冷めたお湯の入っている浴槽に座り込んでいたことがありました。その時は、大事には至りませんでしたが、浴室での転倒・転落事故や、体調への影響も気がかりで、家族の負担が重くなっていました。
このようなことから、家族は住まいの工夫を行うにあたって、1.自宅でものんびり入浴できるようにしたい、2.夜間や家族の留守の時に、認知症の方が浴室に入ってしまうのを避けたい、という2つのねらいがありました。
(家族から見て)住まいの工夫が役立つと感じる理由
浴室を新しくしたことによって安全に入浴できるようになったということでした。また、浴室の扉の鍵は鍵と気づかず、今のところ家族が知らないうちに、浴室に入ってしまっていることは無いということでした。
専門家からみたひとこと
今回取り上げた住まいの工夫は、様々な観点から見ることができると思います。
ここでは、特に浴室扉の目立たない鍵を中心に考えてみたいと思います。
安心・安全に関する住まいの工夫のうち、認知症の方が誤操作によって事故に遭う可能性のあるものにカバーをしたり、動かすことができないようにテープで固定したりするような工夫が取り組まれている例があります。上手くいった例ももちろんありますが、例えば固定したテープが必要以上に認知症の方の関心を集めてしまったり、貼ったテープを剥がしたりしてしまう例もあります。
これに対して、今回の住まいの工夫は、浴室扉の鍵を「目立たなくする」工夫といえます。一見、鍵だとわからない鍵が付いている扉を設置して、関心を集めないようにしていました。隠そうとするあまりに逆に目立たせてしまう工夫になる例もあるなか、この住まいの工夫は、さりげなく目立たせない工夫であることと、予期せぬ事故に遭うことを防ぎたい、という家族の思いを両立している点に特徴がある工夫であると思います。
ここでは、特に浴室扉の目立たない鍵を中心に考えてみたいと思います。
安心・安全に関する住まいの工夫のうち、認知症の方が誤操作によって事故に遭う可能性のあるものにカバーをしたり、動かすことができないようにテープで固定したりするような工夫が取り組まれている例があります。上手くいった例ももちろんありますが、例えば固定したテープが必要以上に認知症の方の関心を集めてしまったり、貼ったテープを剥がしたりしてしまう例もあります。
これに対して、今回の住まいの工夫は、浴室扉の鍵を「目立たなくする」工夫といえます。一見、鍵だとわからない鍵が付いている扉を設置して、関心を集めないようにしていました。隠そうとするあまりに逆に目立たせてしまう工夫になる例もあるなか、この住まいの工夫は、さりげなく目立たせない工夫であることと、予期せぬ事故に遭うことを防ぎたい、という家族の思いを両立している点に特徴がある工夫であると思います。