第15回 生活の継続性 その3〜高さ調節をした鏡台〜
認知症があることによって、これまで続けられてきたことができなくなる場合があります。認知症高齢者の場合、認知症であることに加えて、加齢による身体機能の低下によって続けることが難しい場合もあります。そこで、今回は認知症が発症する前から使い続けている鏡台の高さ調節によって、身だしなみを整えるというこれまでの生活行為が無理なく続けられるようにした工夫をご紹介します。
住まいの工夫の内容
鏡台の左側の貼り紙の下にある白いインターフォンに関しては、かつて認知症の方が夫の介護をしていた時に、ゆか座の生活に合わせて敢えて低い位置に取り付けたものでした。我々の訪問時は、介護する側から介護される側になりインターフォンを使わなくなっていました。そのため、認知症の方が使う鏡台の高さは調節していましたが、いす座の生活に合わせたインターフォン高さの調整はしていませんでした。
住まいの工夫を行った理由・ねらい
ゆか座の生活は足腰への負担が大きいため、自室である和室にベッドを置いて、いす座の生活に切り替えていました。自室にある鏡台を床に置き、いすに座った状態では使いにくいので、鏡台の高さ調整という住まいの工夫を行っていました。
(家族から見て)住まいの工夫が役立つと感じる理由
いすに座って鏡台を使えるようになったので、足腰への負担なく、認知症が進んでも、今まで通り鏡台に向かって自分で整容できている、ということでした。
専門家からみたひとこと
この連載で、何度も取り上げていることですが、認知症の方の住まいの工夫を考えるとき、その方が好きなことは何か、やりたいことやできることは何だろうか、と考えます。認知症の方の生活の継続性を考えた住まいの工夫を考えていくうえで、このことは非常に重要であると考えられます。
今回の事例の方は、昔から身だしなみに気を使う方であり、それがこの方の好きなこと、生活の中で大切にしていることでしたので、早めにゆか座の生活からいす座の生活に切り替えて、その生活行為を続けるために負担なく鏡台に向かえるようにする住まいの工夫が必要でした。
このお宅には、はじめて訪問してから1年後に再び訪れましたが、認知症が進み、できることが少しずつ減り、周囲への関心も薄れていました。このようななかでも、この鏡台は、化粧水をつけたり、見だしなみを整えるために変わらず使用されている、ということでした。
今回の事例は、住まいの工夫を行った当初は加齢への対応として負担なく動作ができるようにした工夫でしたが、認知症が進んでも生活の継続性につながった例といえると思います。生活の継続性ということを考えていく上で、非常に大事な視点を教えてくれる事例だと思います。
今回の事例の方は、昔から身だしなみに気を使う方であり、それがこの方の好きなこと、生活の中で大切にしていることでしたので、早めにゆか座の生活からいす座の生活に切り替えて、その生活行為を続けるために負担なく鏡台に向かえるようにする住まいの工夫が必要でした。
このお宅には、はじめて訪問してから1年後に再び訪れましたが、認知症が進み、できることが少しずつ減り、周囲への関心も薄れていました。このようななかでも、この鏡台は、化粧水をつけたり、見だしなみを整えるために変わらず使用されている、ということでした。
今回の事例は、住まいの工夫を行った当初は加齢への対応として負担なく動作ができるようにした工夫でしたが、認知症が進んでも生活の継続性につながった例といえると思います。生活の継続性ということを考えていく上で、非常に大事な視点を教えてくれる事例だと思います。