第11回 安心できる空間をつくる工夫 その2〜自分で作った小物を飾る〜
認知症の方が暮らすお宅に訪問すると、認知症の方が自分で作った愛着のある作品や自らしたためた書などがさりげなく飾られていることがあります。話をうかがってみると、「飾る」ことは認知症の方の生活にとって重要な意味を持っていることが見えてきました。そこで、今回は、自分で作った愛着のある作品や小物を飾ることにより、安心できる空間をつくる工夫についてご紹介したいと思います。
住まいの工夫の内容
写真1の置き物(ペンホルダー)は、近隣の大学で行われているミニデイ活動で大学生たちと一緒に楽しみながら作ったものでした。認知症の方が一日の中で多くの時間を過ごすリビングに置かれていました。
住まいの工夫を行った理由・ねらい
せっかく作った置き物で、学生たちと楽しい思い出もあるので、いつも目に入るところに飾っておくと、認知症の方が安心できるのではないかと思い置いているということでした。
(家族から見て)住まいの工夫が役立つと感じる理由
この置き物があるだけでなく、なじみのものに囲まれて比較的落ち着いた生活が維持できています。また、来客があったとき、認知症の方が置き物などについて紹介し、楽しそうにそのときの出来事を話し出すこともあります。作品などは、来客者や家族と話をする材料としても役立っています。
専門家からみたひとこと
今回ご紹介した住まいの工夫は、認知症の方が自分で作った置き物や小物を飾るという非常にシンプルな工夫です。
このシンプルな工夫のなかに、認知症の方が安心して暮らしていくために重要な役割を果たすために幾つかポイントがあると思います。
ひとつは、認知症の方が作ったものが楽しい思い出と結びついていたことです。この事例の方の場合、置き物や作品は作った時の楽しい思い出と結びついたので、それらに愛着を感じていました。来客者や尋ねてきた家族に、その愛着のある置き物や作品に関する話を自分からしていました。我々が訪問したときも、始めは初対面の人々が家の中に入ってきたこともあり不安な表情が見られていましたが、この置き物の話を契機に、家族で花見をしたときの写真、デイサービスで作った絵手紙など様々なものを見せていただき、様々な思い出について話が盛り上がり、しだいに安心してくる様子がうかがえました。
もうひとつは、その置き物が認知症の方の居場所から見える場所に置かれていたことです。この事例の方は、デイサービスに行かない日中や家族が仕事から帰ってくるまでの間、家の中でひとりで過ごしていました。一人でいるときに、探し物が見つからなくなって探し回ったり、不安にかられることもある様子でした。このような時、身の周りに、愛着を感じるものや自分自身が書いた絵や文字が見える位置にあることで、気持ちの安定・安心につながる要因のひとつになっていました。
この点は、今回ご紹介した事例の住まいの工夫だけでなく、第2回の「1週間の予定表」や第5回の「メッセージを紙に書いて伝える工夫」とも共通している点です。
認知症がある場合には、デイサービスであったことを忘れてしまうこともよくあります。しかし自分の作品や小物を見て、作品を作った体験や思い出が楽しく思い出されることもあります。それを踏まえて、認知症の方の住まいの工夫を考えていく際に、「何を」「置く(貼る)か」だけでなく、「何を」「どこに」「置く(貼る)か」については今後も引き続き考えていく必要のある大事な視点だと思います。
このシンプルな工夫のなかに、認知症の方が安心して暮らしていくために重要な役割を果たすために幾つかポイントがあると思います。
ひとつは、認知症の方が作ったものが楽しい思い出と結びついていたことです。この事例の方の場合、置き物や作品は作った時の楽しい思い出と結びついたので、それらに愛着を感じていました。来客者や尋ねてきた家族に、その愛着のある置き物や作品に関する話を自分からしていました。我々が訪問したときも、始めは初対面の人々が家の中に入ってきたこともあり不安な表情が見られていましたが、この置き物の話を契機に、家族で花見をしたときの写真、デイサービスで作った絵手紙など様々なものを見せていただき、様々な思い出について話が盛り上がり、しだいに安心してくる様子がうかがえました。
もうひとつは、その置き物が認知症の方の居場所から見える場所に置かれていたことです。この事例の方は、デイサービスに行かない日中や家族が仕事から帰ってくるまでの間、家の中でひとりで過ごしていました。一人でいるときに、探し物が見つからなくなって探し回ったり、不安にかられることもある様子でした。このような時、身の周りに、愛着を感じるものや自分自身が書いた絵や文字が見える位置にあることで、気持ちの安定・安心につながる要因のひとつになっていました。
この点は、今回ご紹介した事例の住まいの工夫だけでなく、第2回の「1週間の予定表」や第5回の「メッセージを紙に書いて伝える工夫」とも共通している点です。
認知症がある場合には、デイサービスであったことを忘れてしまうこともよくあります。しかし自分の作品や小物を見て、作品を作った体験や思い出が楽しく思い出されることもあります。それを踏まえて、認知症の方の住まいの工夫を考えていく際に、「何を」「置く(貼る)か」だけでなく、「何を」「どこに」「置く(貼る)か」については今後も引き続き考えていく必要のある大事な視点だと思います。