第2回 筋力トレーニングの効果とは?
加齢とともに筋力が低下し、その結果、転倒・骨折し介護が必要な状態に陥ることがありますが、筋力が低下する原因に筋量の減少があげられます。そこで筋力トレーニングによって、筋量の減少を抑制させ、維持または増大させることが、要介護状態を防ぐことはもちろん、自立した生活をおくるうえで重要です。
筋量の減少は30歳代から
筋量の低下は30〜40歳から徐々に始まります。20歳代をピークとすると、40歳代ではその約80%に、さらに60歳代では約60%に、70歳代では約半分にまで減少してしまいます。また、上肢(上半身)と下肢(下半身)における筋量の低下の割合を比較すると、下肢は上肢より1.5倍〜2倍近くも低下の割合が高いことが明らかとなっています。下肢の筋肉の中でも、大腰筋と大腿の前側の筋量の低下は歩行時の歩幅の減少をもたらし、これにより歩行速度も遅くなります。特に、前回ご紹介したように、大腰筋は、歩行時の足の引き上げや踏み出しに重要な役割を果たしていますので、この筋力の低下が歩行能力の低下、つまり「すり足」状態の原因となるのです。
筋トレを始めるのに遅いことはない
筋量の減少を抑制するためには、筋力トレーニングが必要なのですが、「高齢だから」とあきらめてしまう人もいます。しかしながら、様々な研究から80歳代、場合によっては90歳代の人でも、適切な筋力トレーニングによって筋量が増えることがわかってきました。そして、同年代で筋力トレーニングを行っている人と行っていない人では大腰筋の面積が明らかに違います。筋力トレーニングはいつ始めても遅いということはないのです。また、フィットネスクラブ等にあるようなマシンを用いてトレーニングを行った場合と自分の体重を負荷にしてトレーニングを行った場合のどちらの方法でも、筋量の増加が認められています。特に、自分の体重を負荷にして行う筋力トレーニングは、マシンを用いたトレーニングに比べて無理な負荷がかかりにくく、また自宅や職場などどこでも行えますので、これから筋力トレーニングを始める方には取り組みやすいのではないでしょうか。
転倒予防以外にも筋トレの効果が
転倒の予防とその原因の一つである加齢に伴う筋量の減少を抑制するという観点から、大腰筋や大腿などの筋肉をトレーニングする重要性を述べてきましたが、これら脚の筋肉を鍛える利点はほかにもあります。脚の筋肉が収縮することで、ポンプのように全身に血液を送り出しますが、こうした機能は、低下した高齢者の心臓の働きを助けてくれます。「脚は第二の心臓」ともいわれる理由です。
筋トレでいきいきした生活を!
実際に筋トレを続けている方からは、筋力が向上したことで自信がつき、今まで行わなかった趣味やボランティアなどに取り組むようになり生活に張りが出てきたという声を聞きます。筋トレで筋量が増えることで、颯爽と歩けるようになるだけでなく、生活そのものがいきいきしてくるようです。
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