第32回 認知症の母を施設に預けましたが、それでよかったのかどうか迷っています。
入所された後のお母様の変化は?
【Q】
神奈川在住の主婦です。三重県内に住む85歳の母親の認知症状が進み、一人での生活が訪問介護を導入しても危いものになってきました。なお「要介護」は3です。3か月に一度ぐらいの割合で様子を見に訪ねていました。ケアマネジャーさんとも相談し、予想以上に早く施設(特別養護老人ホーム)に入居できることになり、現在はそこで生活を始めています。ほっとした気持ちと同時に、本当にこれでよかったのかと自問自答しています。
【A】
なぜ、迷いが生じているのか、ご自分の気持ちを整理してみましょう。
【解説】
「介護」に関わることで、最善の選択というのは大変難しいことかと思います。それは、(1)ご本人が希望していること、(2)周りの家族が望んでいること、(3)客観的な諸条件がそれらを満たしうるかどうかということ――それらの間にずれがあったり、見解の相違が常にともなう現実があるからです。
さらに、ご本人に認知症があり、進んでくると、ご自分の意思の表明が十分にできなくなったり、聞くたびに言うことが異なっていたり、曖昧であったりと真意を図ることができず、問題の決定をさらに難しくしてしまうこともあるでしょう。
神奈川在住の主婦です。三重県内に住む85歳の母親の認知症状が進み、一人での生活が訪問介護を導入しても危いものになってきました。なお「要介護」は3です。3か月に一度ぐらいの割合で様子を見に訪ねていました。ケアマネジャーさんとも相談し、予想以上に早く施設(特別養護老人ホーム)に入居できることになり、現在はそこで生活を始めています。ほっとした気持ちと同時に、本当にこれでよかったのかと自問自答しています。
神奈川県・E美(60歳・主婦)
【A】
なぜ、迷いが生じているのか、ご自分の気持ちを整理してみましょう。
【解説】
「介護」に関わることで、最善の選択というのは大変難しいことかと思います。それは、(1)ご本人が希望していること、(2)周りの家族が望んでいること、(3)客観的な諸条件がそれらを満たしうるかどうかということ――それらの間にずれがあったり、見解の相違が常にともなう現実があるからです。
さらに、ご本人に認知症があり、進んでくると、ご自分の意思の表明が十分にできなくなったり、聞くたびに言うことが異なっていたり、曖昧であったりと真意を図ることができず、問題の決定をさらに難しくしてしまうこともあるでしょう。
介護の選択は最善でなくてもよりベターでOK
そうしたなかで、最善ではなくとも、ご本人やご家族にとって数ある選択肢の中でよりよい選択を選ぶことになります。
ご相談の内容によると、在宅での生活が困難なため、特別養護老人ホーム(特養)に移ったのかと思います。
しかし、予想以上に早く入居したところから、ご本人が入所に納得しておられなかった、あるいはご家族がご本人の合点がいくよう働きかけられなかった、という後悔の念がおありのように感じられます。もう少し得心するまでの時間が必要だったのでしょうか。もしかしたら時間をかけて施設の見学、あるいは、“試し入居”のような形で短い期間寝泊りをする、という形で新しい環境への不安を軽くする方法もあり得たかもしれません。
しかし、お母様の気持ちに沿って考えるならば、長く慣れ親しんだ自宅を離れるということへの不安、引き離されるという怒りや悲しみはどのように時間をかけても理解しがたい、消化できないものであったかもしれないのです。
また、ご家族(娘さん)の立場に立ってみれば、母親の健康維持や安全・安心を考えて専門職とも相談し、選んだ選択肢でありながら、家族にとっても心の準備や整理が現実のスピードに対し、追いつかなかったのかもしれません。同時に、後悔の念や迷いはもっとよくやれたかもしれない、という親への愛情を示しているのではないでしょうか。
ここまでのところを整理してみると、次の3つになるでしょうか。
(1)それぞれにとって困難な状況のなかで、最善ではなくともよりベターな選択をした。
(2)よりよい選択をしたとしても互いに心の傷(これでよかったのか、相手の気持ちを十分尊重できず、傷を残してしまったのではないか)が残ることに気づく。
(3)後悔の念や自問自答は愛情の深さの裏返しではないか。
ご相談の内容によると、在宅での生活が困難なため、特別養護老人ホーム(特養)に移ったのかと思います。
しかし、予想以上に早く入居したところから、ご本人が入所に納得しておられなかった、あるいはご家族がご本人の合点がいくよう働きかけられなかった、という後悔の念がおありのように感じられます。もう少し得心するまでの時間が必要だったのでしょうか。もしかしたら時間をかけて施設の見学、あるいは、“試し入居”のような形で短い期間寝泊りをする、という形で新しい環境への不安を軽くする方法もあり得たかもしれません。
しかし、お母様の気持ちに沿って考えるならば、長く慣れ親しんだ自宅を離れるということへの不安、引き離されるという怒りや悲しみはどのように時間をかけても理解しがたい、消化できないものであったかもしれないのです。
また、ご家族(娘さん)の立場に立ってみれば、母親の健康維持や安全・安心を考えて専門職とも相談し、選んだ選択肢でありながら、家族にとっても心の準備や整理が現実のスピードに対し、追いつかなかったのかもしれません。同時に、後悔の念や迷いはもっとよくやれたかもしれない、という親への愛情を示しているのではないでしょうか。
ここまでのところを整理してみると、次の3つになるでしょうか。
(1)それぞれにとって困難な状況のなかで、最善ではなくともよりベターな選択をした。
(2)よりよい選択をしたとしても互いに心の傷(これでよかったのか、相手の気持ちを十分尊重できず、傷を残してしまったのではないか)が残ることに気づく。
(3)後悔の念や自問自答は愛情の深さの裏返しではないか。
自分を責めないように
ところで、入所された後のお母様の変化はいかがでしょうか。遠方に住んでおられるので頻繁に訪問は難しいと思いますが、お電話やお手紙でコンタクトをお続けになることはできます。施設の担当者の方と連携をとられると、日々の変化や情報を共有できるかと思います。老いてもなお、お母様は強み(ストレングス)を新しい環境のなかで発揮される可能性を秘めておられると思います。信じて上げて下さい。
もし、ご兄弟や介護に関する想いを分かち合える友人がおられるようでしたら、お一人で抱え込み過ぎないよう、気持ちをあるときは放出させることも大切です。
最後に、社会資源についてご紹介したいと思います。「要介護3」というお話でした。その地域になかったのかと思いますが、生活の場として認知症の方々が、より日常生活に近い形で穏やかな時間を過ごすことができる少人数のケアを目的としたグループホームや、小規模多機能型施設(地域密着型サービスの一つで、通いと泊まり、訪問を組み合わせるというもの)も各地にあります。施設も非医療機関である“終の住処”として上手に利用できるよう、私たちの認識も変えていく必要があるのかもしれません。
これからお互いの心の傷をいやせるようなケアが相互にできて、よい思い出がお母様にとって連続ではない点としての思い出であっても積み重ねられるよう、お祈りします。「いま」・「ここ」を認知症のお母様は精いっぱい生きておられます。相談者の方も頑張りすぎて、ご自分を責めないようにして下さい。よりよい選択だったと思います。
もし、ご兄弟や介護に関する想いを分かち合える友人がおられるようでしたら、お一人で抱え込み過ぎないよう、気持ちをあるときは放出させることも大切です。
最後に、社会資源についてご紹介したいと思います。「要介護3」というお話でした。その地域になかったのかと思いますが、生活の場として認知症の方々が、より日常生活に近い形で穏やかな時間を過ごすことができる少人数のケアを目的としたグループホームや、小規模多機能型施設(地域密着型サービスの一つで、通いと泊まり、訪問を組み合わせるというもの)も各地にあります。施設も非医療機関である“終の住処”として上手に利用できるよう、私たちの認識も変えていく必要があるのかもしれません。
これからお互いの心の傷をいやせるようなケアが相互にできて、よい思い出がお母様にとって連続ではない点としての思い出であっても積み重ねられるよう、お祈りします。「いま」・「ここ」を認知症のお母様は精いっぱい生きておられます。相談者の方も頑張りすぎて、ご自分を責めないようにして下さい。よりよい選択だったと思います。
ソーシャルワーカー・山口 美恵子
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(アクティブシニア編集部)