第21回 認知症の人とのかかわり方のヒント(11)−認知症と成年後見制度
成年後見制度とは
認知症に限らずメンタルな病気では、その人の判断能力が低下することがあるため、本来その人が持っている財産の処分や高価な買い物などができなくなることがあります。そのため、その人に後見人がつくことで、財産の管理やその人を守ることが必要になります。この制度が成年後見です。その人の判断能力によって後見、保佐、補助と程度が別れています。
私が今回、成年後見をテーマに取り上げたのは、何も制度の説明をするためではありません。本来は認知症や精神障がいなどで判断力が低下した人を守るための制度ですが、この手続きをめぐって、これまで多くの「家族のありよう」が見えたことをお伝えしたいからです。
私が今回、成年後見をテーマに取り上げたのは、何も制度の説明をするためではありません。本来は認知症や精神障がいなどで判断力が低下した人を守るための制度ですが、この手続きをめぐって、これまで多くの「家族のありよう」が見えたことをお伝えしたいからです。
後見人選びの過程で…
ある家族は、父親の認知症が進行したため、息子や娘が協力してケアを行っていました。そして、話し合いによりきょうだいの中で最もふさわしいと決まった娘を後見人に選び、ほかのきょうだいはその娘を精神面、経済面で支えました。私はその過程で診断書と鑑定書を書かせていただいたのですが、きょうだいのお互いを思いやる気持ちに深く感動しました。「このような家族の関係はうらやましいなあ」と思えたほどです。
でも、別の例ではきょうだいが対立しました。いつも父親をケアしている息子が後見人になろうとして手続きを始めたところ、別の息子や娘が「待った」をかけたのです。息子から鑑定を依頼されていた私のところにも、別のきょうだいが押しかけてきました。彼らが言うには「あいつは父親の財産を独り占めしようとしている。鑑定をしてくれるな」というものでした。
個人情報の保護の観点から、このケースがその後どうなったか詳しくは書きませんが、鑑定の是非をめぐって何年もきょうだい同士が揉め、今でもとても残念な思い出となってしまいました。
でも、別の例ではきょうだいが対立しました。いつも父親をケアしている息子が後見人になろうとして手続きを始めたところ、別の息子や娘が「待った」をかけたのです。息子から鑑定を依頼されていた私のところにも、別のきょうだいが押しかけてきました。彼らが言うには「あいつは父親の財産を独り占めしようとしている。鑑定をしてくれるな」というものでした。
個人情報の保護の観点から、このケースがその後どうなったか詳しくは書きませんが、鑑定の是非をめぐって何年もきょうだい同士が揉め、今でもとても残念な思い出となってしまいました。
後見人の存在意義は
この2つのケースでの違いは何だったのでしょうか。家族の関係はさまざまな歴史や感情が織り交ぜられているため、簡単には語れません。でも、財産行為をめぐる制度であるからこそ、成年後見の手続きのプロセスには家族、きょうだいの本音が見え、それが時には争いを招くのでしょう。後見をめぐって家族の愛情が見えたとき、私はとても救われた気分になりました。家族の姿を見た私がエンパワーされた(力づけてもらった)と感じられたのです。
家族から距離を置くことで諍いを避けるために弁護士が後見人になる場合や、市民後見人などの活用があります。判断力を低下させてもなお、本来なら望むであろうことをその人に代わってくれる人の存在は大切なケアの項目です。
次回は「それでも人生にイエスという その1」です。
家族から距離を置くことで諍いを避けるために弁護士が後見人になる場合や、市民後見人などの活用があります。判断力を低下させてもなお、本来なら望むであろうことをその人に代わってくれる人の存在は大切なケアの項目です。
次回は「それでも人生にイエスという その1」です。